第一章2 《訳アリな共同生活は突然に!》
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思いのほか初日の在校中に目立ったイベントなど起こる事も無く、グレセットと言う校内の礼拝堂で淡々と始業式が行われ、それが終わり次第クラスで教科書が配布されただけで解散となった。
だが、少し訂正する事がある。
先程は何もイベントが無かったと言ったが、強いて言うなら少々困った事はあった。
俺は無神論者な上に、キリスト教系列の学校に入学した事が初めてだった為、賛美歌集や聖書を持っていなかったのだ。
そう言った俺個人ではどうする事も出来ない世界の理不尽さに内心で悪態を突きつつも、俺のミニチュアダックスフンド並みの細やかな脳ミソでは、何とか他の学生に遅れは取るまいと見かけ倒しの同化に努めるだけで精一杯だった。
それでも、始業式中に進められる行事の50%は理解出来なかったし、この上無く胡散臭いとも思った。
ただ……本当のとんでもない事件は、間もなくして俺の前に現れる事になるのだが、その原因はこの学園都市大付属高校が住み込みの全寮制であると言う点に基因する事になる。
学校の生徒は全員何処かの部活に所属する事が義務付けられており、所属した部員はその担当顧問の本、男女別々の部活寮で共同生活を送る事になるのだ。
だが小規模の部活や生徒会などの場合に限っては、担当顧問の責任で男女混合になるらしい。
カトリック系の学校ならまだしも……プロテスタント等と言う緩い宗派の影響か、それとも付属先の大学の影響か、担当顧問だけに生徒の管理を任せるなど貞操管理が行き届いて無いと言わざる負えないな。
さて、話しを戻そう。
俺が教室に帰ろうと学園の渡り廊下を歩いていた所、
「
「何ですか? 渡す物って?」
「来たら分かるわよっ♪ あ、それとね、四夜ちゃんにも同じお話しが有るから、一緒に来るように! では、先生はこれにて!」
「えぇ!? ちょっと……何ですかそれ」
いやいや、いきなり過ぎるだろ。
さっきガンを付けられたばかりなのに!
開口一番に塩分100%の塩辛い言葉を返された俺としてはゾッとしないね。
是非ともそんなdisコミュニケーションはお断りさせて頂きたかったが、担任の浅倉先生は「サラダバ~」と言葉を残して俺の前から早々に立ち去ってしまった。
「まじか……。あの四夜さんに話しかけるのか」
途方に暮れる俺はとぼとぼとクラスへ戻るしか無かった。
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「その……あれだ。さっきは悪かったな」
「何が?てか……あんた誰よ」
「
「あ~思い出したわ。 私の事ジロジロ眺めて来た男ね。私って興味ない人間の事を覚えるのが苦手なのよね」
「なん……だと……」
俺は眉間のシワがドンドン深くなっていくのを気合いで何とか抑え、作り笑いを浮かべる。
「その節は俺が悪かった事にしよう。その上で本題に入りたいんだが」
「顔が気持ち悪い。鬼の顔が腐り落ちた様な見た目になってるわよ」
↓3分後
「何であんた何かと一緒に行かなきゃいけないのよ」
四夜は俺を軽く睨む。
「知らねぇよ。文句が有るなら
四夜はかったるそうにスカートのポケットから手を出すと、その長い後ろ髪を弄りだす。
「あんた礼拝の時の
それは事実だが、俺だって座席がちょうど真横だったから知っている。
四夜は始業式の時間のほとんどを涎を滴ながら気持ち良さそうに眠っていやがったのだ。
「んだと……それを言ったら四夜、お前も始業式の最中ほとんど居眠りしてたじゃないか」
四夜は急に顔を赤くすると、まるで人を殺す様な目付きで俺を睨んで来た。
こいつは完全に殺る目付きだよ……。
「いつ……私の名前を呼び捨てで呼んで良いと言った」
四夜は血の滲む様な鋭利な目線を俺に向けるとこう言った。
「様を付けなさいよ、バカ」
「さ……様だと!お前見たいなロリっ子にわざわざ様何かつけるかよ」
「何よその『ロリ』って言う良く分かんない単語。何だか無性に腹立たしい響きだわ」
「『ロリ』って言うのは、タイニーな外見をした女性の事を指す総称だよ。てかお前…そんな事も知らないって……痛っ!? 痛い痛い痛い!? 腹にアッパー極めて来んな!」
「何よ! 初対面の人のことを、いきなりチビだとか言って来やがって! このっ! このっ! あんた何か背が高いだけが取り柄の癖にっ!」
初対面でいきなり人の事をバカ呼ばわりする四夜には言われたく無い。
が、しかし…やっぱりそうだったか。
背の高さが利点だと思っているのなら四夜のそれはコンプレックスだと言う事だな、と言ってやったら。
「だってあんた、府抜けた顔してるし、猫背だし、バカだし」
と言い返された。
おい、だからバカは何処から来た。根拠を示しやがれ。
「それよりもう職員室に着いたぞ。何時まで俺の背中にパンチしてるんだ。」
四夜 一期は小さい割りに力が強いらしく、背中でも殴られると意外に痛かったりする。
「俺のスベスベお肌に傷が着くだろ。どう責任とってくれる」
「は?何よそれ。ボーボーに背中毛の生え散らかったゴリラの間違いじゃないの?」
クっ……このロリっ子!
いちいち言う事が俺のデリケートな部分に刺さってムカつくんだよ。
「さっさと開けなさいよ、バカ。職員室に入れないでしょ」
「ノックを忘れてるぞ、ノックを。あといちいち語尾にバカをつけるな」
あーくそっ、仕方がねぇ。
諦めが濃厚な気分でノックをし、そろりそろりと教員室の引き戸を開ける。
「2年2組の
やけに静かな職員室の向こうから大手を振って飛んでくる女性が一人。
「良ぉく来た!勇者達よ!」
「先生、FFのやり過ぎで精神に異常をきたしたんですか? お勧めの精神科医を紹介しますよ」
「そんな事は良いのだよ
「……」
おい、ロリっ子。
ドン引きしてしまう気持ちも分かるが、せめてうんとかすんとか言おうな!
「君達には渡す物が有るのだよ!これを取りたまえ!」
そう言って
四夜は不思議そうにそれを眺めると呟く。
「何よ……これ。鍵?203って書いてある」
そう、鍵だ。
だが、これが一体何処の鍵なのか……俺にはさっぱり見当もつかん。
「決まっておろう! 何処かの部活に入るまで、今日から君達に暮らして貰う、部活寮の空き部屋の鍵であ~る。転入前に話していたはずだよ? この学校は部活寮に住み込みで修学する事が校則となっておるのだが、君達はまだどこの部活にも所属していな~い。 だから致し方無く所属部が決まるまでは同じ空き部屋で、一緒に暮らして貰う事にな~るのだ~よ♪ とね。」
は
……え?
「「えぇーーーーーーーー!?」」
「仲良く暮らしたまえ!若き同居者達よ」
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