第二章43 《タイムトラベルの真相は突然に!》後編

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 正直言ってかつての俺は、自分自身がオカルト好きの恥ずかしい厨二病DTであった、と言う苦々しい自覚はある。


 そもそも英語が読めないから内容はサッパリ分からないのに電車の中で『TIMES』の記事を開いて見たり、雰囲気がカッコいいからと言う安直な理由から『月刊ムーン』を欠かさず買っていたり、DTubeでタイムトラベラーやその類いの動画が投稿されていないか周回して探すのが好きだった。

 特に2ちゃんねる(俺が使っていた頃は、実際5ちゃんねると改名していたが)のオカルト板に張り付いて、パソコンの無機質な画面を通してアンチ厨とのレスバに興じる瞬間などは、なおさらだったと言えよう。


 そんな俺が初めて彼……ジェイニュー・オリヴァー・ベックの存在を知ったのは中学を卒業した日の夜の事だった。


 とある都市伝説の紹介動画で、4392年から来たと言う自称タイムトラベラーの男が語っていた。




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『Hellow, ApexTV. I reside in the year 4392』

(こんにちは、ApexTVさん。 私は4392の世界にいる者だ)


『I have in a time and a world that many of you would likely not relate to as ideal』

(私はある時代のある世界に住んでいる)


『I certainly do not……』

(私ももちろん関わりたくは無い……)


『Time journey has destroyed our will for ambition』

(時間旅行は私たちの野望を打ち消した)


『Bit by bit, future years are dwinding』

(少しずつ、未来は衰退している)


『Document this name and all of the details I provide』

(この名前を証拠に出し、全ての詳細を提供する)






『Jaynou Oliver Beck』

(ジェイニュー・オリヴァー・ベック)






『Born on September 12, 2018』

(2018年、9月12日に生まれた)


『Elected as the 56th president of the United States on November 3, 2082』

(2082年11月3日にアメリカの第56代大統領に選ばれた)


『Assassinated on July 11, 2084 at 65 years of age』

(2084年7月1日、65歳のときに暗殺された)


『He was rationally the most influential human being to ever have lived』

(彼はこれまでの人類の中で最も合理的かつ、影響力がある人だった)


『He cannot be assassinated』

(彼は暗殺されるような事はあってはいけない)


『He must never be elected the President of the United States of America』

(彼はアメリカの大統領に決して選ばれるべきではない)





『16、8、4、4、8、4、4、4、8、8、4、8』

(16、8、4、4、8、4、4、4、8、8、4、8)





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「この通り、知らない筈だと言われた所で俺はジェイニュー・オリヴァー・ベックの事を知っている。それに、この時代の俺は知っている筈がないって言うのはどういう意味なんだ。俺だって水城さんと同じ未来から来た人間だ。知らない筈がないと確定する事は出来ないんじゃないか?」



 自分の覚えている範囲で要約した内容を簡潔に伝えた。

 しかし、彼女の怪訝そうな表情が晴れる事はなかった。



「いえ、それはあなたがいた時代を考慮した上で言っているの。さっきあなたはお父さんが不幸にあった2025年は1年も前の事だと言っていたわよね」


「ああ……」


「ならあなたが元々いた時代は2026年と言う事で間違い無いはず。でも私の知っているジェイニュー・オリヴァー・ベックが現れたのはそれより未来の出来事なの」



 彼女の言葉を聞いた途端に、ハッと俺の中で新たな事実が結び付いた。



「ちょっと待ってくれ……。なら俺と水城さんは元々いた時代が違うと言う事になるよな……。その上、過去に起こっていた事象を共有出来ていないと言う事は、存在していた世界線すら異なると言う事なのか?」



 しかし彼女は、そのスラリとした体躯に実る豊穣の果実の様な大きな胸の下で腕を組んだまま考え続けていた。



「その考えは正しいとも言えるし、完全に間違ってい無いとも言えない」



 俺は彼女のまどろっこしい言い方に頭を悩ませると、後頭部をかいてこう言った。



「はっきり言ってくれ。どういう意味なんだ。早い事、お互いの現状を擦り合わせないと、四夜を助ける為の話しの本題に入れないだろ」


「そうね、様はあなたが知っている過去の事を、未来の私が知らなかったのは、単なる知識不足の可能性が考えられると言うことを言いたかったの。時代が異なるのはどうやら本当見たいだけれど、本当に私の知っているジェイニュー・オリヴァー・ベックの言う通りの他世界解釈が正しいかどうかは、確証が……そもそも私には理解出来なかったから本当の所を言うと私も分からない」



 でもね、と続けると彼女は今までの俺の根幹すら揺るがす程の、あまりにも衝撃的な一言を放った。



「私達が今こうやって助けようとしている四夜イチゴと、タイムトラベラベルした先で再開する四夜イチゴは限りなく似て非なる存在かも知れないと言う事。残念ながら、この定義で言えば世界を繰り返し、そして失敗を重ねるごとに『四夜イチゴの死』という変えられない連続する事象を量産しているだけと言う事になる可能性を、忘れないで」



 そして、



「やり直せば良い、と言う失敗ありきの考え方の作戦だけは絶対に建てたく無いの。だから前もって話しておきたかった。これが、あなたと組む上での絶対に譲れない条件……の1つ。何故なら、この考え方が間違っていないなら、さっきも言った通りタイムトラベルだと思っていた紛い物に、私達はその『そっくりな世界』へ移動しているだけ、である可能性を否定出来ないから」


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【お知らせ】


次回、44話から公開日と時刻を変更して毎週土曜日の21時から、とします。

普段からこの作品をご覧下さっている皆様は、お気をつけ下さい。


(余りにもpv数が稼げないので、変更してみる事になりました。これからも変更がある可能性も有りますが、その時は事前にお伝えします)

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