第一章7 《若気の至りは突然に!》(冤罪)
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トン トン トン トン。
「お~い四夜~朝だぞ~。起きていたしたら早々にベッドと離婚調停を交わして出て来い!」
「……」
一切返答無し。
もう朝ごはんの時間だと言うのに何をやっているのだろうか?
「目玉焼きとソーセージが冷めちゃうぞ~。俺も先生もメシ食わずに待ってるんだから早く起きて部屋から出て来いよ!」
「……」
これだけ呼んでいるのに、一切返事が無いって流石におかしくないか?
その時、誰かが俺を呼んだ!?と思ったら、それはリビングの浅倉先生だった。
「早く起こしてよぉ~。じゃないと山瀬君のソーセージ貰っちゃうゾ♪」
ソーセージ……。
いかん……一瞬でも卑猥な意味に聞こえた俺の頭脳はもう末期なのだろうか?
いや、高校2年生なんだし……割りと健全だろ。
いやいや、それより
「四夜~!頼むから早く起きてくれ!じゃないと俺の朝ごはんが2分の1になっちゃうんだ!」
「……」
これだけ言ってもまだ起きないとは……流石の俺も驚きだ。
さては、俺のソーセージが無くなるのを良い事に、部屋に閉じ籠って寝たフリを決め込んでいるんだな。
「はーん、四夜がそう来るならこっちにも手がある!良いんだな~。四夜が良いなら別に俺は良いんだぞ? だが忍びないので、チャンスに5秒やろう。それまでに出て来ないのであれば生着替えだろうと知らぬ存ぜぬで部屋に突撃するからな! 始めるぞ。5~、4~、3~、210はいオーバー!」
少々イラついていた俺は残りの2秒を早くカウントすると、鍵も掛かっていない四夜に割り当てられた部屋を思いっきり開け放った。
先ず目に付くのは……その余りに
「うっわ……汚ねぇ」
床中になにやら沢山の、書き込んである楽譜が散らばっており、更には下着や布団のシーツが散乱している。
俺は少し興味を引かれ、その内の一枚の楽譜を見てみた。
「すっげぇ複雑……。何の楽器の譜面かすらも俺には分からないが、取り敢えずとても難しそう……と言う事だけは分かるな」
そして、床の散らばった楽譜を避けながらベッドまで歩いて行くと有ることに気が付く。
散乱した楽譜の海に四夜が倒れ込んでいるでは無いか。
この瞬間は流石に血の気が引いたよ。
俺は慌てて四夜の側に駆け寄ると彼女の白く艶やかな肩を揺すって起こそうとした。
「四夜!大丈夫か!?い……生きてるよな?」
「ぅ………生きて無いわぁ」
「死んでる奴は喋らねぇよ! たく……心配させやがって。ほら、朝だから起きろっての!」
「うるさぁい……ばかぁ」
「寝ぼけながらも罵倒は忘れないのな!良いから起きろって、いや起きて下さいお願いします。頼むから……」
「うぅぅ……」
何回揺すろうが引っ張ろうが、全く起き上がってくれない。
今頃もう俺のソーセージは浅倉先生に強奪されただろう。このまま行くと目玉焼きまで狙われかねん。
そう考えていた矢先に事件は起こる。
「起きるわよぉ……」と言った四夜が俺の首のうなじ辺りに片手を掛け、思いっきり引っ張って来たのだ。
「って………うおっ!? 四イヤァっ!?」
元々両膝を付いているバランスの悪い体勢だった俺は、四夜に引っ張られるままに前へのめり込み、まるで俺が四夜を押し倒している様な体勢になってしまった。
気がつけば俺と四夜の顔は至近距離。少し息を吐けば届く程の目の前に四夜の可愛い寝顔があって、俺は思わず息を飲んだ。
その時だった。
「あんたら………遅いと思ったら朝から何をヤってるのよ!?」
場が悪いとは正にこの事だろう。
最悪の瞬間、最悪の相手に誤解を招く様な光景を目撃される。
成る程、アニメや漫画に出てくるハーレム主人公はこう言った心境で日々生きていたのか、とこの瞬間初めて理解出来た気がした。
「先生………これは誤解です。だから、そんな下衆を見る目で俺を見ないで下さい!」
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