第一章15 《怒濤の昼休みは突然に!》

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 桜並木でピンク色に縁取られた203号室までの道のりを汗水垂らして往復する事……凡そ4周。



 今朝も死ぬ気で走り抜けたこの蒼天の下をこれだけ短時間の内にまた走らされる事になるとは予想だにしていなかった。



 それも背中にただ硬い異物を感じながら……。

 これなら朝の方がよっぽど役得だったと感じるのは致し方無い事だろうさ。





 そうやって俺が1人でひーこら言いながらドラムやら、ごっついシンセサイザーやらを運んでいる間……。



 四夜の奴と言えば




「もっと早く走りなさいよ。じゃないとお昼の時間に間に合わなくなっちゃうでしょ、バカ! 私も……一緒について行ってあげるんだから」




 と言って、これっぽっちも役にも立たなかった。

 四夜が唯一運んだ物と言えば、初めから大事そうに抱えていたブルーの薄っぺらいエレキギターだけだった。


 それでも結局エレキギターのギター・アンプやギター・チューナー等本当に重いその他諸々を担いで運んだのは誰だか言わなくてもわかるだろう。



 そんなこんなで、折角の咲き乱れる染井吉野など愛でる暇もなく駆け足でレンガ造りの校舎を最上階まで登れば、もう3、4時限目の授業終了のチャイムが鳴り響く。


 それと同時に俺達の教室から2時間授業を終えて出てくる日本史の老人先生と目が合った。


 めっちゃ気まずい……。




「ど……どうもぉ……」



「君達は一体何をしていたんだ……。」




 それだけ言うと老人先生は「早く教室へ戻るように」とだけ伝えそそくさと階段を下って行った。

 去り際に少し口の端を歪めていたのは気のせいだったのだろうか?




 俺も四夜もこの時は完全に忘れていた……いや、失念していたと言った方が正しいだろう。



 このまま教室に戻ったらどうなるかと言う事を!




「あら……ラブラブですのね♪」




 四夜が教室のドアを開けると、教壇の前の席にいる藤原委員長の言葉を皮切りに蜂の巣をつついたようにクラス中が大混乱になった。







「キャー! 帰って来たわよ!」


「付き合ってたのか君達!」


「何処まで行ってるんだ!? 教えてくれよ!」


「もうキス……とかはしたの ?お二人さんとも?」


「まだだっ……! まだファーと俺の四夜さんが付き合ってるだなんて俺は認めないぞっ!?」







 クラス中の机や椅子をぐちゃぐちゃにしながら一斉に集まってきた彼らは、ギャラリーとなって俺と四夜を一気に取り囲む。



 その時だった。




「四夜……おいどうしたんだ四夜! おいっ!? 気を確かに~!」




 その愛らしい顔を蒼白にして仰向けにぶっ倒れたのだった。

 それもしっかり白眼まで剥いて。



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 後書き




『四夜が唯一運んだ物と言えば、初めから大事そうに抱えていたブルーの薄っぺらいエレキギターだけだった。』

 ↑

 この一節に出てくるブルーのエレキギターは、あのB'●のギタリストである松本孝●さんのヤマハ製初期モデルになったギターです。




 調べて見るとちょっと面白いかも知れませんよ?




 ここで気がついた君は同士だな→(核心)



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