第一章14 《結成!あべこべなシンフォニーは突然に!》

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「決まってるでしょ。バンド部を結成するの!部員は……私とあんたと……少なくとも後2人は欲しいわね」




 そう言って自信満々の表情でふんぞり反っている四夜 一期を、俺はただ呆然と眺めていた。


 バンド? いきなり何を言い出すんだ。今朝こいつの部屋に散らばっていた無数の楽譜はこの為だったのか。




「何ぼけーっとしてるのよ、バカ! 私も手伝うからさっさと運びなさいよね!」



「ちょっと待て。何か勝手に入部した事にされてるけど、俺は一言も四夜のバンド部に入る何て言ってないぞ」



「言い忘れてた! 私……部活を立ち上げる手続きとかよく分かんないし、めんどくさいから、あんたがやっといてよね。これは部長兼 、支配者としての絶対命令何だから!」



 小さな腰に手を当てて、その貧相な胸をドヤ顔で張り上げる四夜を目下に俺は人知れず頭を抱える。


 だめだこりゃ!


 全く俺の話を聞いちゃいねぇ!




「そもそも部員をどうやって集める気だ。こんなぽっと出のワケわからん部活に入りたい奴何てそうそう居ないだろうし、それに何より俺は楽器何か弾けん!」



「大丈夫よ。あんた見たいな仏頂面の奴に私の楽器は持たせないから! ボーカル位なら出来るでしょ。私も歌えばダブルボーカルだからハモって丁度良いじゃない!」




 何て事を言いやがる……。




「そもそも楽器も弾けない奴にボーカルが務まるかよ。嫌な事を思い出しちまったじゃないか……」





 何もかもを取り戻す為にここまでやって来たと言うのに俺は……。


 ふと思い出す昔の記憶の残留が、茨の刺の様に心に巣をはって痛め付けて来る。

 そんな俺の表情を見兼ねてか、それまで自信満々だった四夜の表情が困惑するように少し陰ったのが見てとれた。



 こいつの怒ったり、笑ったりする顔は何故か妙に見慣れた物の気がするのに、その顔はこれから何度見ても何やらただ事出ない既視感を覚える様になるのはまだ先の事である。




「ど……どうしたって言うのよ。いきなり変な事言い出して」



「何でも……無い」



「何でも無いならつべこべ言わずに従いなさいよ…。べっ……別に!あんたの声が……その……そんなに悪く無いから私と一緒にやらせるって訳じゃ無いんだから!勘違いしないでよね!」




 これ……もしかして励ましている積もりなのだろうか?


 途中から四夜自身も何を言っているのか分からなくなっていたようで、気がつけば耳まで真っ赤にしてそっぽを向く始末。




「わかったよ…わかったって。やれば良いんだろ、ボーカル。その代わり、新入部員が入ってきたらそいつにお前の朝の世話は全部投げつけるからな」




 すると四夜はお菓子を貰った無邪気な子供の様にパァっと表情を明るくする。




「ちゃっちゃと運び入れに行くわよ!私がギター持つから、シンセサイザーとドラム一式はあんたが全部持ってよね!」



「そんな一変に持てる訳が無いだろ!?」



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