第一章13 《このラブ🖤ソングは今更に!》
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「何のつもりだよ!いきなりあんな事言って授業から脱走して」
特別教室棟の最上階まで連れていかれた所でやっと我にかえる。
「何よ」
「何って……いきなり教室から連れ出したと思えば、今度は付き合ってる!?やっぱりお前、どうかしてるんじゃないか!?」
「そんな事言ったって! も……もしもよ! もしもクラスの中でおおっぴらに奴隷だなんて言ったら、ご…誤解を招くじゃない!」
と、四夜は自分の失敗をなかった事にした。
さて、そんな事まで当時の俺が知っていた訳が無いのが何とも惜しい話だ。
四夜の方はといえば、さも普通かの様にそう言い切ると、
「用事があるって言ったでしょ。付いて来て!」
と言って身を翻した。
この時、俺は一瞬だが躊躇した。
このまま四夜に振り回され続けて良いのだろうか?と。
朝は四夜の世話に手を焼き、昼は授業から脱走してこんな所まで来ている。
どう考えてもマトモじゃない。
それでもやはり、俺は四夜の背中を追ってしまった。
それは……俺自身に自分と言う主体性が無いから、ただ呆然と引っ張られるのか。
それとも……もっと別の何かが、俺の中に芽生え初めていたのだろうか?
「何をバカらしい事考えてるんだ……俺は。この時代に来た目的を忘れるな」
四夜には絶対に聞こえない小さな声で、俺はそう呟いた。
それから暫く歩くと二人は止まった。
「ここよ」
四夜はポケットから職員用の鍵を取り出すと、それで解錠したとある教室に入った。
「ここは……音楽室?」
「そう。これからギターとかドラムとか……後届いてたら、シンセサイザーも203号室に運び入れるから手伝って」
「はぁ? 何でそんな事をするんだよ。それに先生から許可は取ったのか? 何も言わずにとっていったら泥棒と変わんないぞ」
何言ってんのよ、とでも言いたげな表情で四夜はあからさまにため息をつく。
「この部屋の物品は全て私の楽器達よ。泥棒だなんて酷い事を言わないでよバカ!」
「この教室の楽器全てが四夜の物なのか!?」
「当たり前じゃない。何で他人の楽器をこの私が使うの?」
「けど、四夜。これだけの楽器がどうして……」
「これは全て両親の楽器なの。私が来る前に、子供の頃昔住んでた生家から持ってきて貰ったのよ」
四夜は慈しむ様に優しくエレキギターを持ち上げる。
「けど……こんなもん。何に使うんだよ」
俺は手元で埃汚れが付着した明らかに古そうなドラムを眺める。
古びた外見ながらも明らかにその造りは重厚で、決して安物や3流品のそれでない事は確かだった。
「決まってるでしょ。バンド部を結成するの! 部員は……私とあんたと……少なくとも後2人は欲しいわね」
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後書き
実質…物語がやっとスタートしました。前哨が長くなってしまい申し訳無いです。
突然と言っておきながら今更スタートする辺り悪質な題名詐欺ですよね。
ごめんなさい!!
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