第一章5 《夜ご飯の買い出しは突然に!》

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「おい四夜、ここは車の通りが多い道路沿い何だからもう少し気を付けて歩けよ」



 俺の通う事になったこの学園都市大付属高は下の町から山の様に突出した場所にあり、その立地から町のおば様方のハイキングコースとしても人気らしい。

 その割には歩道は整備されていないし、俺達の歩いている下り坂は急なカーブも多く曲がり損ねた乗用車に引かれるのではないか? と気がきで無い。



「ほらそこ。余所見しながら歩くな四夜。段空もだんだん暗くなってきたし、足元の雑草ばかり眺めて無いで、周囲を確認しないと危ないぞ」


「うっさい!バカ!」


「俺は危ないから言っているんだ。もう少し用心してだなぁ……」



 四夜からすれば、俺の心配何てこれっぽっちも有り難くない……寧ろ迷惑と言った所らしい。



「あんたは私の『奴隷』なの!だからつべこべ言わずに付いて来なさいよ。」


「何で……俺が『奴隷』。屈辱だ」



 そもそもは俺が始めたババ抜きレースの結果だが、まさか最下位になるとは思っていなかった。


 あわよくば四夜を最下位にして、この反抗的なロリっ子に「ご主人様~」とでも言わせてみたかったんだが、まさか俺がそっち側に成るとは。


 笑えねぇぜ……



「なぁ四夜、もうすぐエイトイレブンに付くけど何食べたい?」



 石蹴りをして遊んでいた四夜は、何処かへその石を蹴り捨てると振り向く。



「そうね……久し振りだし、何か日本っぽい物を食べたいわ」



「日本っぽい物って……あ、そうか。四夜ってこの前までアメリカに居たんだもんな」


「おばあちゃんとロサンゼルスに暮らしていた時は、毎日がシリアルとかチーズマカロニとかハンバーガーとかクドイ食べ物ばっかりで嫌だったの。」


「そんなにアメリカの料理って不味いのか?まさかイギリスと同じくらい?」


「それこそまさかよ。別にアメリカの食べ物が美味しくない訳じゃ無いの。でも、あれを一年間続けるのは流石に日本人の体質にはキツかったって話よ」


「流石にそうだよな。てか、一年間って……それまでは日本に居たのか?」



 そう俺が言った突然、四夜の表情が暗くなる。

 どうやら触れてはいけない事だったらしい。

 そりゃ誰にだってあるよな。人に聞かれたく無い話の一つや二つくらい。



「悪かった、変な事聞いて。謝罪の気持ちって事でペットボトルの緑茶でも一本奢ってやるよ。日本っぽい物が良いんだろ?」


「何よ!奴隷のくせに気が利く……」



 そんな事を話していたら、もうエイトイレブンの駐車場に俺達は差し掛かっていた。



「着いたわね。早く買いに行くわよ」



 俺と四夜の二人は、暗くなりかけた夕日の中で明るく輝くコンビニの店内にいそいそと足を運ぶ。


 店内に入ると「いらっしゃいやせー」と言う掛け声と共に、当時から流行っていたバンド曲がうっすらとBGMで流れて聞こえて来た。


『裸足の女神』だろうか?



「やっぱり日本のコンビニって良いわね。清潔だし涼しいし」



 そう言うと四夜はクルリと懐かしそうに店内を見渡す。



「私選ぶのめんどくさいから、あんたが先生の分と私のご飯選んでよね。気に入ら無かったら死刑なんだから!」


「はいはい、仰せのままに」



 俺は右の手のひらを掲げてはらりと揺らして応えると、極刑を免れる為に店の奥にあるお惣菜コーナーへ足を急がせたのだった。


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