第一章28 《四夜イチゴの消息は突然に!》
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「四夜! どこにいるんだ四夜!」
203号室を探しても、教室を探しても、何処にも居ない。
思い付く限りの場所を俺と東先輩と浅倉先生とで手分けして探して見るが、やはり学校中の何処にも四夜の姿が見当たらないのだ。
夕陽も差し掛かり世界が薄ぼんやりとしたオレンジ色に染まり初めていた路地を曲がり、校舎の裏の土手を歩く。
汗ばむ額を制服の袖で乱暴に拭う。
四夜が何故居なくなったのか、何処で居なくなったのかまだ何も分からない。
「どうしてだよ四夜……。部活会議するんじゃ無かったのかよ」
来なかったり遅れたら何ちゃらと言っていたのは何処の誰だと思っていやがる。
それを言い出して静止を振り切った本人が今、こうして行方不明になっているのだから明らかにただ事ではない。
「でも、四夜の奴はどうして『付いて来るな』何て事を最後に言い残したんだ」
そもそもこんな事態に陥った原因を知る為には5時間程、時を遡る必要がある。
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「ついて来ないでよね。それと……放課後には203号室のリビングで会議だから。遅刻したりすっとぼけたら死刑なんだから!良いわね!」
そういって203号室へと足を向けた四夜は昼食時間が終わり、5時間目の授業が始まっても戻ってくる事は無かった。
何か話す訳でも無く、ただ薄いガラス窓から、閉じ込められた小鳥の様な目をして空を眺めているだけだが、俺が振り向くとどうでも良い事を話しかけて来るのだ。
例えば部活の話しだとか、ご飯の話しだとか、四夜の好きなテレビ番組の話しだとか。
しかし、今振り向いても、そこには空しさが漂うだけだった。
「山瀬! 何を余所見しているのだ! さっさと問題に答えないか! 」
唐突に先生から指名されるとは、予想外だったな。
仕方がないと、リュックの中から食べ掛けの焼きそばパンや、使わない漢字手帳等を退けて英文法の問題集を慌てて取り出していると
「教材も出さずに授業中に余所見とは……。貴様は学校を嘗めているのか!」
「すみません……」
「さっさと開け山瀬。問題集の7ページ、Lesson2の4問目だ。穴埋めして問題文を読み上げた後に、和訳もしなさい」
「はい。えっと……『there is not much hope that she is still alive』」
「合っている。和訳は?」
「『彼女がまだ生きているという多くの望みが、ありません』で大丈夫ですか?」
「この場合muchは否定文にかかっているのだから、『ほとんど無い』と訳した方が自然だな。まあいい、座って良いぞ」
受難が過ぎ去ったと思うと荷物を背負っていた訳でも無いのに肩から何かを下ろした様な解放感と、何処か罪悪感を感じた。
元々英語は苦手なのだ、細かいニュアンスの違いなどいちいち指摘されても困る。
面の皮の厚そうな英文法の男性教師は、ドンッと勢い良く教卓に手を置くと「そう言えば」等と天下りした先で偉そうに振る舞っている場違いな公務員高官の様に前置くと
「誰か水城と四夜が何処にいるか知らないか? 欠席届けも出ていないのに授業に居ないぞ」
その男性教師はギロリとクラス中を見回すが、誰一人として手をあげる者は居ない。
皆、厄介そうな揉め事に巻き込まれるのも、声をあげて変にクラス中から注目されるのも後免被りたいのだろう。
そんな誰かに、任せてたまるか。
気が付くと俺は、高々と右手を掲げていた。
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後書き
もうそろそろ……感想をくれたっていいんですよ?
と言うより下さい( ノ;_ _)ノここ数週間分に投稿した所でめっきりコメントが貰えなくなってしまい悲しいのです
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