第二章48 《繋がる世界線》
現在、筆者は大学受験中につき4月になるまで小説の更新が出来ません。
唐突な上にご報告が遅れてしまった事をお詫び申し上げます。
追伸: タイトルを変更致しました。暫くの間、これで様子を見ようかと思います。
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直感的に、俺はマズイと思った。
今の声には……明らかに聞き覚えがあったからだ。
「来てはいけないっ……水城っ!」
顔は相変わらず藤原委員長にがっちりと掴まれたままで振り向く事は出来ない。
何とか声を振り絞り、危険を伝えようと試みるが、一体どれ程の効果があったのだろうか。
「これは……っ!? 山瀬さん____!」
「くそっ……」
途端、俺は地面に投げ捨てられるかの様に突き飛ばされた。
しかし、唐突に藤原委員長は俺を拘束から離すと流線型を描く様に流れる動作で何処からともかく取り出した小さなナイフを逆手に構えていた。
その手に握られているのは刃渡り凡そ数十センチ程の強い反りのある特徴的な外見。
正にそれは、軍人などが護身用に携えている事が多いと言うカランビットナイフだった。
ギラリとした黒光りを放つそれは、沈みかけたオレンジ色の陽射しを反射して何処か艶やかに輝く。
腰を落とし身体を低く屈ませ刃を構えて前屈みになるその姿勢は、体術などの事前知識が全くない俺でも、明らかに藤原委員長が只者でない事納めを悟らせるには十分過ぎる程だった。
彼女の目は冷たく、そして鋭く、獲物を決して逃さんとする捕食者の正にそれだ。
突き飛ばされた勢いで尻餅をついてしまった俺は、水城に向かって思い切り叫ぶ事しか出来なかった。
「何止まってるんだ! ……スリップだ、早くっ……タイムスリップを!」
水城も俺の言葉に慌てて懷へと手を伸ばしタイムマシンを取り出そうとする。
その時だった。
それまで周囲で微動だにも動く気配を見せなかった筈の黒ずくめの男達が、颯爽と水城に向かって走り出したのは。
「取り押さえなさい! あの売女を、今すぐ!」
「止めろ藤原委員長!」
咄嗟に俺は彼女を取り押さえようとその肩を掴み地面に引き倒そうとするが……
「ぶはっ____!?」
途端に彼女の身体が視界から消えたと思うと、溝内の辺りに鋭い痛みが走り、文字通り九の字に身体が折れる。
衝撃は痛みだけではなく、内臓を抉られた様な激痛に胃の内容物がせりあがり、その場でみっともなく吐瀉物を吐き出すに至った。
「うぐっ……おえ……」
一体何が起こったんだか、いまいち理解が出来ない。
胃液で気持ち悪い味の広がる唾を吐き捨て、顔を上げると……
「________!?」
その場で立ち尽くす水城を左右から挟み込む様に男達が迫り、今にも水城が殺されようとしている正にその時だった。
このままでは水城までも殺される。
血の気が引いていく。
まるで血管に真水を流された様な人生でも経験しようの無い様な恐怖の感覚が身体中を駆け巡る。
何とかしなければ。
何をすれば良い?
俺に何が出来るんだ?
それでも水城を助けなくちゃ。
でもどうやって?
分からない……
俺には……分からない。
「待って……水城」
咄嗟に口を伝って出た言葉何てそんな物だった。
ただ見ているだけでは成すすべがないと分かっている筈なのに、身体が震えて動かない。
今、動かなきゃ全てが手遅れだと言うのに。
「動けよ……動けよ……俺の身体!」
情けなく、悲痛な男の叫び声だけが辺りをこだまする。
しかし、訪れる筈の惨劇は想像していたのとは真逆の物だった。
「しぃッ________!」
空気を切り裂くの如き呼吸音と共に水城の姿が一瞬でその場から消えた。
そう思った直後、ナイフを振り上げ、迫り来る二人の黒ずくめの男の内左側にいた一人が顔面から盛大な血飛沫を吹き出し、仰け反る様にしてその場から離れる。
男は顔面の中央である鼻の辺りをゴツゴツとした右手で慌てて押さえるが、手の隙間から赤くどす黒い色の血が溢れる様にしてこぼれだす。
何事かと現在起きた出来事に呆気をとられていたのは俺だけでなく、高見の見物をしていた藤原委員長や周囲の男達も同じだった。
誰もが同じくして目線を向けるそこには、右膝を少し返り血に染め、ほとんど沈みかけた夕陽をバックに静かに佇む水城あずさ がいた。
「水城……おまえ」
しかし、水城はウンともスンとも言わない。
そしてゆっくりと、顔をあげる。
その目線は一点に、藤原委員長ただ一人に向けられている物だった。
彼女も、衝撃に一歩後ずさる。
「藤原まなみ……いえ、貴様の本名は山瀬まなみだな。手を上げろ、そして直ちに武装を解除してその場に臥して。」
今、何と言った。
彼女の本名も今初めて知ったが、其れよりも藤原と言う姓を否定して山瀬と言い直したのか……?
藤原……いや彼女は水城の言葉に従おうとはせず一歩ずつその場から後ずさるが、睨みだけは外さずにバチバチと音の鳴りそうな程を互いを睨み合っていた。
「生意気ね小娘。我々の崇高なる任務に楯突こうとでも言うのかしら?」
「貴様らテロリストの正体は端から見当が付いていたわ」
テロリスト……だと?
その言葉には嫌と言う程に関わりのある俺だ。
俺のいた2026時にはポル・ポトに刺激され原始時代へ戻るべきだと主張する極左の《原理共産主義革命隊》を名乗る赤軍や、科学の発展を否定しその全てを破壊しようとする《パンドラの箱》を名乗る新興宗派の過激派キリスト教徒など数え上げればいくつもあった。
俺の父さんも、あの赤軍に殺されたのだ。
それが……彼女らだとでも……言うのか?
「《抗共軍》……1945年を発端にして発生した唯一にして無二である本当のパラレルワールドとでも言うべき人工の世界線から発足した武装極右団体。それがあなた達の正体ね」
彼女は悔しそうに歯噛みすると、こらえ切れない様に叫び声をあげる。
「なら何故! そこまで分かっていると言うのに……何故我々の邪魔をしようと言うの! このまま放って置けば、この世界線に訪れるのは私達と同じ地獄の未来だと分かっている筈なのに!」
必死になって訴える彼女に対して冷たく突き放すかの様に水城は答えた。
「マスターの命令だから」
「何千人も死んで、それを見過ごせと言うの!」
「……構わない。それが私に課せられた、マスターからの命令だから」
そして水城は、黒いハンドガンをスカートの下から取り出すと、その銃口を彼女に向かって掲げた。
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君が世界を滅ぼした日 in 1994 誓 メイ @543210
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