素晴らしい作品です。
まさかネット小説で感動することがあるとは……
ジャンルとしては成り上がりですが、漫画のワン○ースとかそういう成り上がり方に近い。復讐じゃないんです。シャン○スに会うためというか、純粋な願いから物語が始まるのが良い。
また、異世界モノ、転生モノ、現代ダンジョンモノでもない、しっかりとしたハイファンタジーなのがすごい。因果の破綻も今のところ感じないのもすごい。
さらに、キャラクターが生きている、なんてよく言いますが、末端の登場人物たちですら、確かに物語の世界に生きているのだと感じさせられる文章力もあります。すごい。
間違いなく王道ストーリーですが、ライトノベルというより文学。荻原規子氏や上橋菜穂子氏の作品に近いと感じます。単行本化はめでたいのですが、ライトノベルか……? コレが……?
とにかく、是非読んでください。
このレベルの作品はなかなか無いですから。
是非。
~こんな人におすすめ
・主人公が完璧・無敵ではない成長ものが好きな人。弱さ・葛藤を見たい人。
・王道ファンタジーだけど「能力に頼らずに少しずつ強くなる」話を求めてる人。
・重圧・陰謀・社会階層・権力ゲームなど、バックグラウンドがある作品が好きな人。単純な冒険モノより人間ドラマ重視派。
~他作品との違いや独自性
・主人公カナタのスタート地点が「戦場で漁る」「底辺」「孤児」という、生きるための日常が圧倒的に厳しい状態。こういう“落ちたところから自力で這い上がる”系ファンタジーはあるが、本作は“魔術の残滓(ラビッシュ)”という「無価値と思われるものを拾い集めて美と意味を見出す」細かい設定が目立つ。
・チート能力ではなく、少しずつの経験・成長・選択を重ねて進むストーリー構成。主人公も万能ではなく、弱さや限界を持っている。読者が共感しやすいタイプの描写が多い。
・世界観・用語(魔術滓、失伝刻印者など)の設定が丁寧。魔術の副産物や過去・背景の曖昧さを残しつつ、それが主人公の価値観や行動の動機になる仕組みが強い。
~キャラクターの魅力
・主人公は孤児、戦場で漁る生活を送る普通の少年だが、“好きなもの(魔術滓)を信じる”“裏切りに巻き込まれても生き延びようとする覚悟”など、芯がある。弱さと強さが共存している。読者が応援したくなる。
・登場人物それぞれに背景・価値観があり、敵役・裏切り者にも一貫性がある。感情や動機が単なる“悪”では済まされない描かれ方をする。
~世界観や設定の面白さ
・魔術システム:魔術を使った際に出る「魔術滓」が、美的対象かつ物語の鍵になる。普通なら拾われない“余り”が主人公にとっての宝になるという逆転の価値観。
・社会構造:傭兵団、貴族、養子制度、派閥・後継者争い、陰謀など、権力構造や裏取引が絡む。
・語りのスケール感が徐々に広がる:最初は戦場での生きる術を描く中で、やがて貴族社会、後継争い、陰謀などが絡んでくる。設定の厚みと展開の拡大がある。
~読後感
・主人公の成長・決断・覚悟の場面で強い感情を揺さぶられる
・裏切り・失われたもの・選択の重みがある。無駄だと思われてきた努力や拾ってきたものが報われ始める瞬間など、感慨深い。
・ストーリー展開が比較的速く、読者を惹きつける導入が良い。