第25話 謎の魔法
一方、村長のヤスナガの屋敷では数人が集まっていた。
囲炉裏の火がちろちろと力なく燃えている。
その周りには領主のヤスナガをはじめ、クオン達が居た。
奥の上座にヤスナガがおり、その左にイッペイが座っている。
ヤスナガの右にはクオンが居て、その隣にセツナが座っている。
全員がセツナと遊んでいる小動物を眺めている。
「プップちゃんお上手ですよ♪ 」
「プップ~~~~~~~~~♪♪♪ 」
得体のしれない小動物が何故か頭を下にしてくるくるとまわっている。
「なんでブレイクダンスが出来るんだ? 」
不思議そうに半透明の体にマダラ色の服を着た大男……亡霊のマダラが呟く。
「ブレイクダンス……ですか? 」
「そうだ……俺が子供のころに流行っていたダンスだが……」
「変わったこと知っておりますのぅ……」
不思議そうなヤスナガ。
「なんでコイツがそんな技を持ってるんですかね? 」
「それは俺に聞かれても分からん……」
ヤスナガの問いに困るマダラ。
「しかし、不思議ですな。それだけ色々知っておきながら復讐する相手だけがわからないとは……」
「俺も変だと思う……普通、自分の名前さえ覚えていない記憶喪失は一般常識すら無くなるみたいなんだがなぁ……」
困り果てるマダラ。
マダラの記憶喪失はかなり特殊だった。
何故か記憶の一部分だけがすっぽ抜けているのだ。
これはクオンが夜中に色んな質問をしてわかったことだ。
クオンも不思議そうに答える。
「彼は金剣町という集落の出身で軍人として戦っていたということまではわかったんですが……」
どういう訳か戦闘については覚えていても一緒に戦った仲間のことはわからないのだ。
ちなみに彼が『人間の亡霊』であることはクオンも伝えてあるが隠すように言い含めている。
この魔界において人間の亡霊というのは彼らにとって体裁が悪い話なのだ。
マダラが不思議そうに呟く。
「こういう踊りは難しいはずなんだがなぁ……」
不思議そうなマダラの問いにイッペイが答えてくれる。
「体が小さいからこういった踊りは得意なんだろう。俺らの大きさでは難しいがな」
「そういうものなのか? 」
イッペイの言葉に首を傾げるクオンに対してイッペイがおもむろに火箸を握る。
「身体が大きな生き物ほど細かい動きやバランスとりが下手になる。俺達はこうやって物を握るのは楽だが、熊は握るのが下手だろ? それに対して鼠や猿は物を握れるだろ? 特に熊は二本足で立つのがやっとだけど鼠は楽にできる。そう言う事だ」
「なるほどな」
「そういうことか」
単純に身長が倍になると体重は八倍になるのだ。
そうなるとただ立つだけでも難しくなる。
ヤスナガがぱんと手を叩く。
「それよりもクオンの魔法との折り合いの方が重要じゃな。今は使えないのじゃな? 」
「ええ。あの鎧を取ったらあの能力は消えました」
あれから、戦いが終わると同時にプップは今の身体に戻った。
それから二人は何度か同じことを試してみたが土を固める事すらできなかった。
「つまり、あの能力はプップが持っていると言う事か? 」
「……どうでしょうね? マダラが使ったような感じがしましたが……」
あの巨大な土の拳は明らかにマダラが作ったものだ。
マダラもうんうんうなづいている。
「それに鎧になる魔物なんて聞いたことも無い。どんな仕組みなんだ?」
「けったいな話じゃのう」
イッペイの言葉にヤスナガが首を捻る。
そんな時に障子がすっと開いて女中のメイカが現れた。
「奇妙な女が来ております」
居間に緊張が走る。
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