第44話 炎の魔法
イフリートがウートガルザに声を掛ける。
「そっちは任せたぜ。こっちの方が相性が悪かろう」
「わかったわよ」
そう言ってウートガルザの方も巨大化する。
こちらも大きさは同じぐらいだが、現れると同時にいくつもの同じ巨人が現れる。
「何! 」
「幻影を操るからいくつもの自分の幻像を作り出しているんだよ」
クオンの叫びにイッキューが解説してくれる。
一方、クオン達の目の前のイフリートはと言えば……
「そんなんで俺に勝てると思ってるのかねぇ。如何に王種と言っても神官と雑種のガキでどうにかなると思ってるのか? 」
ボワ!
言葉と同時に巨大な火球を生み出し、クオン達に向かって飛ばしてくる!
だが、クオンは平然と手をかざした!
「ふん! 」
ボゴン!
クオンの掛け声とともに、土がめくり上がって壁が出来る。
それが火球に当たってお互いを相殺し、どちらも崩れて無くなる。
同時にイッキューがカードを一枚掲げる。
「吹き散らせ!」
ブオン!
先程の
支配魔法とは無生物に「命令」することで具現化する魔法である。
雷、炎、土、水、風の5元素の全てを操る魔法種の中でも最高峰の魔法の一つでもある。
だが、その最高峰の魔法を見てもイフリートはつまらなそうに鼻で笑う。
「ふん」
パキィン!
乾いた音を立てて風の魔法が消える。
「そこの小僧は雑種と聞いていたが? まあいい。両方潰せば終わりだ」
そう言っていくつもの火球を生み出すイフリート。
一つ一つが先ほど火球と同程度の大きさがある。
それを見てイッキューが叫ぶ!
「クオン君! 」
「はい! 」
ドシャア!
ドゴゴゴゴゴゴ!
クオンが土砂を使った防壁を作ると、同時に土砂に火球が当たる音が聞こえる。
「いけそうかい? 」
「何とか! 」
クオンは軽く答えたものの、常に土砂を間欠泉のように上げ続けなければ、すぐに破られてしまうだろう。
クオンがそう思っているとふいに土砂を叩きつける火球の音が聞こえなくなる。
「耐えきったみたいですね」
「クオン君気を付けて。多分、二の矢が待ってるよ」
「はい! 」
そう言ってゆっくりと土砂の壁を取り除き、あたりを見渡すクオン達。
だが、イフリートの姿はどこにも見えなかった。
「とこに? 」
クオンの言葉に答える者は居なかった。
見失ったイフリートを探すクオンとイッキュー。
「どこへ行ったんだ? 」
「マリス。何かわかるか? 」
イッキューがカードに語りかける。
『う~ん。そもそもハッグとは戦い方が違うからね~。熱魔法を使ってどこかに隠れているのかも? 』
「どこだと思う?」
『見た所、どこにも隠れられそうにないわねぇ。幻影は作れないし、どこに隠れたのかしら? 』
カードの中のマリスでもわからないらしい。
「ふむ。ではこうしよう。ネイム」
『ふぁぁぁぁ……私の出番ですか? 』
そう言って別のカードを取り出すイッキュー。
次のカードには品のよさそうな角の生えた女性が椅子に座って寝ていたが、カードが開かれたことに気が付いて起き上がる。
「探してくれ」
『わかりました』
そう言ってカードを掲げるイッキュー。
掲げたカードからはネイムと呼ばれた女性が身を乗り出してあたりを見渡す。
『はぁ! 』
ビュクビュクビュクン!
ネイムが気合いを入れた声が上がると目が大きく開き、耳と鼻が巨大化する。
ついでに言えば舌と角までが長くなり髪は大きく逆立っている。
そんな姿でゆっくりとあたりを見渡す。
正直に言えばかなり怖い顔になっている。
「ネイムの魔法は探知。五感が研ぎ澄まされて全てを感知する」
「それにしたってあの顔は無いだろう? 」
イッキューの声に渋い顔のマダラ。
ネイムはゆっくりとあたりを見渡して――――突然愕然とした。
『イッキュー! 下よ! 』
「……え? 」
クオンがいきなりのことに対応できずに止まってしまった。
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