第45話 ピンチ
「クオン君 !」
咄嗟にイッキューがクオンを突き飛ばす!
ゴワッ!
下から吹き上げた大量の土砂がイッキューを巻き込んで上へと上がる!
「イッキューさん! 」
イッキューはそのまま1丈(3m)ほど大きく空を飛び、そのまま地面にたたきつけられる!
「熱魔法にはこういう使い方もあるんだぜ」
吹きあげた穴の中からゆっくりと上がってくるイフリート。
「どうやって……」
「簡単さ。爆発で開けた穴に入って隠れただけ。その上をお前らが通っただけさ」
「……くっ! 」
悔しそうに呻くクオン。
単純だが効果は絶大である。
「さあて。後はお前だけか……」
「くそ! 」
ゴボッ!ゴボッ!
クオンは必死になってイフリートの前に岩の握りこぶしを作り出す!
だが、イフリートはそれを見てにやりと笑う。
「無駄無駄! 」
ゴガッ!ゴガッ!
大岩で出来た拳がイフリートの火球に当たって砕け散る!
「やめておけ。所詮はかなわないんだよ。血筋が全てだ。生まれた時からお前は俺に勝てないって運命で決まっているんだよ」
「ぐぅぅぅぅ……」
自分が打てる最大級の攻撃すら効かない。
その事実にクオンは打ちのめされた。
(どうすればいい? )
必死で考えるクオン。
だが、そんなクオンに冷静な声が聞こえた。
(こうする)
(……え? )
マダラの声にきょとんとするクオン。
するとイフリートの動きに異変が起きた。
「うん? 」
イフリートの動きが止まり、同時に口を押え始めた。
「く……か……」
顔を真っ赤にして苦しみだすイフリート。
するとマダラが声を上げた。
「今だ! 」
「はい! 」
ゴガッ!
クオンの放った大岩の拳に抗うことすら出来ずに叩きつけられるイフリート。
完全に無防備だったのかそのまま地面の上を転がる。
さらにマダラが叫ぶ!
「今だ! たたみかけろ! 」
「はい! 」
ゴガガガガ!
地面に倒れたイフリートにそのまま大岩の拳を大量に叩きつける。
辺りがもうもうとした土煙で覆われる。
思わずクオンが呟いてしまう。
「やったか? 」
「それは生存フラグだから言うな」
警戒しながら様子を探るマダラだが、叩き潰されて肉塊になったイフリートを見てほっとする。
「こう言っちゃなんだが、それ言って本当に死んでるのは珍しいな」
「……さっきから何なんですかその生存フラグって言うのは? 」
へなへなとその場にへたり込みながらマダラに苦情に言うクオン。
マダラはにやりと笑って「こっちの話だ」と誤魔化すので違うこと聞くクオン。
「……途中でイフリートが苦しんだのは一体……」
「ああ、あれか? 空気中の二酸化炭素をあいつの口の周りに集めたんだ」
「二酸化炭素? 吐く息ってことですか? 」
クオン自身は二酸化炭素という言葉は知らないが、大体の意味は心が繋がっているので通じている。
何となく意味合いが通じるのだ。
「細かい説明は省くがこれが増えると人間は呼吸できずに苦しむことになる……けどそんな話をしていていいのか? 」
「何がです? 」
「あれだ」
「あれって……うわ! やばい! 」
イッキューが苦しそうに呻いていたので慌てて近寄るクオン。
「大丈夫ですか! 」
クオンが抱きかかえると苦しそうに声を上げるイッキュー。
「クオン君……か」
「しっかりして下さい! 」
「……奴……は? 」
「うまく隙をついて倒しました! 」
「そうか……」
ほっとしたように息をつくイッキュー。
「すま……ない……胸……ポケ……ト」
「胸ポケットですか? 」
クオンは言われたようにイッキューの胸ポケットに手を突っ込んでみる。
中には何枚かのカードが入っていた。
「ルシ……ダ」
『おう! 』
「わ! 」
持っていたカードの一つがいきなり飛びあがる。
『あたしの出番だね! 』
そう言ってルシーダと呼ばれた快活そうな女性がカードから身を乗り出してイッキューの胸に手を当てる。
すると手が光輝き始めて、イッキューの傷がどんどん治っていく。
「……ふう」
相当優れた癒し魔法の使い手だったのか、すぐにイッキューの息が落ち着く。
「クオン君。ありがとう。おかげで助かったよ」
「こちらこそありがとうございます」
そう言ってお礼を言うクオン。
だが、イッキューは未だに倒れたままだ。
「すまないがまだ身体が動きそうに無いんだ。タルタを助けてくれないか? 」
「それはいいんですけど……」
そう言ってちらりとそちらを見るクオン。
あっちはこちらと違い、ずっと静かな状態だ。
と言っても何もしていないわけではない。
ヒュン!ヒュン!
タルタが無数の触手で手当たり次第に巨人に攻撃しているのだが、全てが幻影のため、当たっていないのだ。
ただ、あまりに激しくそこらじゅうに攻撃をするので向こうも攻撃しかねているようだ。
「ネイムを連れて行ってタルタを援護してくれ」
「わかりました」
そう言ってネイムのカードをもらうクオン。
「後はどうやって近づくかだな」
なにしろ凄まじい攻撃を全方位に行っている。近づくことすら難しい。
困り顔でいるクオンにマダラが声を上げる。
「先にネイムに本体を探してもらってからお前が攻撃すればいい。そうするとタルタも気付くだろう」
「なるほど。それで行きましょう。ネイムさん! 」
『あいよ』
そう言ってネイムは先ほどのような凄い顔で辺りを探索し始める。
すると程なくして相手の場所がわかった。
『あいつはあの岩の裏に隠れているよ』
そう言ってネイムが指さしたのは丁度タルタの背後の岩だった。
上手い事幻影で裏をかく直前だったようだ。
「了解! 」
ゴバァ!
そう言ってクオンは大岩の拳をネイムの指さした先へと叩きつける!
「うげぇ! 」
うめき声を上げるウートガルザ。
攻撃が予想外だったのか、うっかり自分の姿をタルタに晒してしまう。
それを見逃すほどタルタは甘くはなかった。
タルタはすぐに後ろに振り向いて、目に見えるウートガルザに拳を叩きこむ!
ドガガガガガガガ!
姿を現したウートガルザに触手の連打を叩きつけるタルタ!
ベチャ
大量の連打を叩きつけられたウートガルザは叫び声をあげてそのまま倒れこむ。
そしてするするとその体が小さくなっていき、元の大柄な白人女の姿に戻る。
「トドメです」
ズン!
タルタがトドメの一撃を与えると完全に潰れたウートガルザの姿があった。
こうして、ニセのネギ神官事件は幕を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます