第13話 おぶさり幽霊
どさっ
道を歩いていたクオンの背中に突然、重い物がのしかかる。
「なっっっ!」
あまりのことに声も出なくなるクオン。
突然現れた何者かに頭の中でいくつもの対応がひらめく。
①何としても振りほどいて逃げる。
②諦めてとり憑かれる。
③振りほどいて正体を確かめる。
(どうする? 結構強い力でしがみついている。①や③は難しそうだ。諦めるか? )
クオンが冷や汗を流しながら体を凍り付かせていたその時だった。
「クオン君助けて~~」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
後ろから聞こえたセツナの声ですぐに顔が『無』になるクオン。
「ぷくくくく……」
笑いをこらえているマダラ。
マダラには何が起きているかが丸わかりだからだ。
クオンは何も言わずにそのまま背中に乗っているセツナの頭を掴み……
ゴッ!
背中にしがみついていたセツナをそのまま投げ飛ばす。
投げる際に思いっきり頭を岩に当てたが岩が割れるほどの衝撃だった。
「お前……容赦ないなぁ……その子大丈夫か? 相当凄い音したけど? 」
「白蛇の貴種がこの程度で死にはしません」
怒りを押し殺して答えるクオンと少しだけ不思議そうな顔をするマダラ。
「痛い~~!! 」
頭を押さえてのたうち回るセツナ。
「紛らわしい真似してんじゃねぇ! 大体、お前は九九の暗唱とエルミング経典の写経をしてたんじゃなかったのかよ!」
「頭が大噴火しそうになったので逃走を……」
「子供でも出来る事だぞ!」
「刹那のお馬鹿な頭には『裂傷』を超えるより難しいのです……」
「僕の方が頭痛くなってきた……」
滝のような涙を流しながら答えるセツナと頭を抱えるクオン。
「なんとまぁ……おバカすぎると言おうか……」
流石にあきれるマダラ。
泣きながらセツナがクオンに訴える。
「ですからクオン君に代わりにやってほしいのです」
「意味あるか?」
冷たい目で睨むクオン。
だが、滂沱の涙を流しながらセツナはしがみついてきた。
「えぐっえぐっ……助けてクオン君……」
「しょうがねぇなぁ……」
こうなってはどうしようもない。
クオンはこうなったセツナがどんなに頑張っても勉強しないことを知っていた。
「ほら、立てよ。一緒に家に帰るぞ」
「えぐっ……ありがとう……」
「別に助けるとは言ってないんだが……いいから行くぞ」
そう言って踵を返し、家の方へと足を向けるクオン。
どさっ
再びクオンの背中に重い物がのしかかる。
ジト目になるクオン。
「セツナ……一緒に帰ると言ったがおんぶするとは言ってないぞ? 」
「……私はここだよ? 」
「……へ? 」
クオンが声のした方を振り向くとクオンと腕を組もうとするセツナがいた。
「おい、なんか背中に乗ってるぞ? 」
マダラも困ったように声を上げる。
すると背中に乗った何かが声を上げた。
「ぷっぷ~♪ 」
「ぷっぷ? 」
変な鳴き声に訝し気なクオン。
「久遠君……背中に何かいるよ? 」
「どんなの? 」
「う~~~~~ん……変なのが」
「冷静に答えるなよ」
困り顔のクオン。
「本当になんだこれ? 見たことないな……」
同じく不思議そうなマダラ。
らちが明かないのでクオンがセツナにお願いする。
「取ってくれ」
「ほい」
そう言ってこともなげに捕まえるセツナ。
(重さから考えてそんなに危険なものではなさそうだが……)
クオンはそう考えてセツナの手にあるナマモノを見てみる。
「……なんだこれ? 」
それは不思議な生き物だった。
顔は猿のような熊のような妙な顔をしている。
体には毛は生えておらず、手には長い爪がある。
手の指が長いので物を掴んだりできそうだ。
背中には昆虫の羽が生えており、パタパタさせている。
セツナに首根っこを掴まれて大人しくしているが、くんくんと鼻を鳴らしている。
「ぷっぷ~~~♪」
何故か嬉しそうに鳴いた。
クオンに抱きつこうとしているのか手をぶんぶん振っている。
「放してあげて」
「ほい」
「プップ~♪ 」
セツナが手を離すとクオンにしがみついてくる。
べろべろ
あまつさえもクオンの顔を舐めはじめる。
「えらく人懐っこいな」
「クオン君が好きなんだよ」
にこにこと笑いながらこちらを見ているセツナ。
べろべろ
「ええい、やめい!」
あまりにもしつこく舐めてくるので、思わず引き放すクオン。
それを見てぽんっと手を打つセツナ。
「じゃあ、次は私ね」
そう言ってキスしようとしたセツナの頭をクオンは思いっきりしばいた。
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