第36話 ネギ夫妻


「見えましたよ。ネギさーん! 」


 丁度鳥居の前で掃除していた禿頭のおじさんに声をかけるクオン。


「おお。久しぶりだね」


 にこにこと挨拶する禿頭のネギ神官。


「久しぶりねー」


 もにこにこ挨拶を返す。

 だが、クオンは頭を押さえながら力なく笑う。


(うーん……なんだか頭が痛いな……)

(俺もだ……何故だ……)


 マダラも何故か頭を押さえている。

 神官夫婦はクオンの後ろの二人を見て眉をしかめる。


「その人達は? 」


 訝しげに問うネギ。


「こちらは鎮魂神官のイッキューさんです。もう一人はお供のタルタさんです」

「神官? 」


 怪訝そうに尋ねるネギ神官。


「始めまして。ラダロア王国、従二位神官イッキュー=ウィーウィル=ゲーデです」

「従者のタルタです」

「はぁ……ネギです」


 そう言ってぺこりと頭を下げるネギ。

 イッキューが神官の証を見せる。


「このたびはお忙しい所申し訳ない。実は……」


 そう言ってイッキューが昨日と同じ話をする。

 すると怪訝そうに首を傾げるネギ神官。


「淀み……ですか? 」

「ええ、あのあたりです」


 そう言って山の中を指さすイッキュー。

 それを見て、ますます渋い顔になる神官夫婦。


「あそこは神域ですので入られると困るのですが……」

「儀式を行ってから入ればいいでしょう。それよりも村の近くに淀みがある方が困ります。あんなに大きな淀みではいつか害を及ぼすでしょう」


 そう言って説得にかかるイッキュー。

 だが、ネギは渋い顔のままだ。

 すると奥さんが声を上げる。


「あんた。折角王種の神官が言って下さるんだ。一緒に行こうよ」

「……お前がそう言うなら仕方ないな」


 そう言って諦めるネギ神官。


「すみませんが私達もこれから準備しますので、少し待っててもらえますか? あんたはこの方たちをちょっと広間に案内してやっておくれ」


 奥さんはそうネギに言うと、ネギはイッキューとタルタを広間へ案内する。

 そして奥さんはクオンに向かってはこう言った。


「お前さんはちょっと準備を手伝っておくれ」

「はい」


 そう言って奥さんはクオンを連れて神社の奥へと向かった。

 すると……


「ププゥ……」


 後ろのプップが唸るように鳴く。


(急にどうしたんだ? )

(さぁ? )


 プップの様子に訝し気なクオンとマダラ。


「こっちだよ」


 そう言って奥さんが母屋の方に入っていき、クオンも言われるがままに中に入る。


ガコン


 クオンが入ると同時に奥さんが戸に用心棒を入れて戸を閉める。

 用心棒というのはいわゆる戸に立て掛けて開けられないようにする棒である。


(なんだ? )

(うん? )


 訝し気なクオンとマダラ。

 すると奥さんが険しい顔になった。


「あの人たちは一体誰なんだい? 」

「なんでも修行中の鎮魂神官だそうですよ。それも王種でかなり高位の神官らしいです」

「ばか」


 呆れるように奥さんがクオンを小突く。


「これを見て御覧」


 そう言って奥さんは紙を差し出す。

 そこに書いてあったのは……


「手配書? 」

「そうだ。良く見てみろ」

「ええと……」


 そこにはこう書かれていた。


『この者、村々を荒らし回る悪党也。男は黒人カラフルな服を着ており、女は白人金髪で巨人に変身するので露出度が高い服を着ている。見かけたら気を付けるべし』


「・・・・・・・・・・」

「どう見てもあいつらだろ? 」


 手配書に書かれてある特徴を見ても二人と酷似している。


「どうしよう……」


 それを見たクオンは途方にくれてしまった。

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