第35話 意外に近い関連


 村の中をクオン、イッキュー、タルタの三人が歩いて行く。

 道の両側には木が林立してるので静寂に包まれている。


 イッキューが現地の神官に挨拶だけしておきたいとのことで神社に向かっている。


「いい村だねぇ。こうやって木々の間を歩くと心が洗われるようだ」

「そうですね」

「あの草むらで青姦したら最高に気持ちいいだろうねぇ」

「……そうかもしれませんねぇ」


 思わず苦笑してしまうクオン。

 どうしてもそっちの方向に話が行ってしまうらしい。


 とりあえず話を変えようとクオンは別の話をする。


「それにしても不思議な国もあるものですね。セ〇クスが挨拶代わりとは……」

「いくらなんでも無茶苦茶過ぎるわなぁ……」


 クオンの言葉に相槌を打つマダラ。

 だが、イッキューは嬉しそうに答える。


「そうかい? でも意外と神官とセ〇クスとは切っても切れない縁があるんだよ? 」

「そうなんですか? 」

「一番縁遠い気がするが? 」


 不思議そうなクオンとマダラ。


「いいかい? そもそも僕達神官が操る魔法は魂だよ? 有史以来、魂を作り出す方法にセ〇クス以外あったかね? 」

「聞いた事もありませんね」

「確かにねぇな」


 木の股から生まれたと言う比喩は聞くが、実際にそこから生まれた人の話は聞かないだろう。


「それに人が非業の死を遂げる時、最後にもっとも思う事は何だと思う?」

「さぁ?」

「セ〇クスだ。だから悪霊はセ〇クスには強く引かれるのだよ!」

「……そうなんですか? 」

「そうとも。だから女郎屋は鎮魂神官のお得意様でもあるんだよ!」

「そうだったんだ……」


 イッキューの言葉に驚くクオン。


「そういやそういった話をよく聞くな……」


 マダラも不思議そうに納得する。

 実際に風俗と心霊は切っても切れない関係があり、そっち方面の店では亡霊がよく出るというのは知られている。


 男湯よりも女湯に亡霊がよく出るのもその辺に起因する。


「つまり、鎮魂神官とセ〇クスは元々切っても切れない密接な関係があるのは確かだ。セ〇クスだけにね」


 ニカっと白い歯を見せて笑うイッキュー。

 親指まで立てたドヤ顔を見せるのだが、逆にいらっとするクオン。


(別の話をしましょう……)

(何言っても結局そっちに行きそうな気がするんだが……)


 困り顔のクオンとマダラ。

 見かねたティアが声を上げる。


「神社はどこですか? 」

「もうちょっと行ったところです。ところでどうして神社に寄るんですか? 」

「まあ、淀みの浄化とはいえ土地の神官に挨拶しておかないと。まあ、紳士としての礼儀だね……ただ……神社はもうちょっと行ったところなのかい? 」

「そうですけど? 」

「……ふむ」


 訝し気な顔でなにやら考え込み始めるイッキュー。

 常に陽気な顔をした彼にしては珍しい。

 怪訝そうに尋ねるクオン。


「どうしました? 」

「……淀みが神社に近いんだよ」

「……神社に近い? 」

「……妙だな……」

 

 怪訝そうなマダラ。

 神聖な神社によどみが近いというのはおかしい。


「結構強い淀みだから雑種の神官でも多少は気付きそうなものなのだけどねぇ」

「確かに奇妙な話ですね」


 不思議そうなイッキューの言葉に顔を曇らせるクオン。

 この村のネギ神官は雑種だが、神官系の血が強い。

 当然ながら貴種ほどでは無いにせよ能力は使える。


 だからこそマダラが憑りついたときに真っ先にネギの元へ行ったのだ。


「私はこの村に入る前から気づいたよ。それも村にほど近い場所だったから。山のど真ん中だから神社が近くにあるなんて気付かなかったけど……」


 イッキューは曇った顔で山の奥を睨む。


「大丈夫ですかね? 」

「……多分ね」

「……なんだか僕の頭が痛くなってきましたよ……」

「俺もだ……」


 クオンとマダラは額を押さえ始めた。

 するとイッキューがちょっとだけ不審そうにする。


「よどみが近くなったから体に影響が出始めているのかもしれん。家に戻るかね? 」

「……大丈夫です……あと少しですから……」

「そうかい? 辛くなったらすぐに言うんだよ? 」


 優しく言ってくれるイッキュー。

 そうこうするうちにネギ神官の家に到着した。

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