第19話 鎧の意味


「俺が聞きたいのはお前のそれだよ」


 一兵がクオン指さして不思議そうに。

 クオンはきょとんと尋ねる。


「なんだって?」

「お前の着てる鎧だよ」

「鎧?」


 慌てて、自分の体を触るクオン。

 服の上に何やら固い物が覆っていることにクオンは気付いた。


「この感覚……ひょっとして……」


 マダラが何やらブツブツ呟いている。

 そしてクオンもようやく何が起きているのかがわかった。


「……なんだこれ?」


 クオンは

 なんだか生き物っぽい鎧である。


『ぷっぷ~♪』


 耳元でプップの声が聞こえたので、クオンは慌てて頭に手をやると兜まで身に着けていた。


「全然着ている感じがしなかった……重さすら感じなかった……」


 クオンは試しに身体を動かすが全く引っかかる事もない。

 むしろ服の方が引きつるぐらいだ。


『ぷっぷ~♪』


 再びプップの声が聞こえる。


「ひょっとしてプップか?」

『ぷぷ~♪』 


「どうもプップが鎧になったみたいだな」

「……なんで? 」

「知らん」

『クオン! どうしたんだその姿は!』


 ヤスナガが不思議そうに叫ぶ。


「どうもプップが鎧になったみたいです」

『……なぜだ?』 

「それが……良くわかりません……」


 クオンはそう答えるしかなかった。

 ヤスナガは蛇の姿で首を傾げる。

 どちらかと言えば鎌首を持たれているように見える。


『イッペイ。魔物は急に鎧になる事があるのか?』

「ありません。少なくとも僕が知る限りでは……」


 困り顔のイッペイ。

 するとヤマシタが申し訳なさそうに声を上げる。


「あ~、ヤスナガ様。それはそれとしてですが~」

『なんじゃ? 』

「あいつが復活したみたいです」


 そう言ってヤマシタが指さした先では魔獣は目が慣れたのか落ち着きを取り戻した。

 さっきよりは穏やかになっている。


「落ち着いたみたいだな……」


 イッペイがぼやく。


『問題はここからじゃな』


 魔獣は落ち着いたとはいえ、危ない事には変わりない。

 これから捕獲しなければいけないのだが……


『何か方法は無いか? 一兵?』

「せめて寝てくれればやりようがあるんですけど……」

『寝かしつけなければ無理か……』


 そう言ってヤスナガが魔獣と対峙する。

 落ち着いているので威嚇はほどほどにしているが、いつまた暴れだすかわからない。

 ヤスナガが魔獣に警戒しながらクオンに尋ねる。


「クオン。その鎧は何か使えないか?」

「……どう使えと? 」

「……そうじゃな……」


 ため息を吐くヤスナガ。


『ぷっぷ~♪』


「ぷ~じゃねぇよ。何のために鎧になったんだよ……」


 呆れかえるクオン。


「これは……ひょっとして……ひょっとして……」


 なにやらマダラが呟いている。

 クオンもようやくマダラの様子がおかしいことに気付く。


「さっきからどうしたんですか? 」

「……鎧を身に着けてから何かおかしい……この感覚……覚えがある……」

「何かできるんですか?」

「それが思い出せん……」


 がっくりするクオン。

 仕方が無いのでクオンは魔獣に近づいていてみた。

 ヤスナガが不安そうに尋ねる。


「大丈夫か?」

「鎧があるからもう少し近寄って見ます」


 そう言って魔獣にさらに近寄るクオン。

 魔獣は近くで見ると結構愛嬌のある顔立ちをしていた。

 そしてあることに気付いた。


「あれ?」

「どうした?」

「こいつ口が小さい」

「……ほんとだ」


 大きさはでかいのに口はクオンの握りこぶしぐらいしか無い。

 イッペイに不思議そうに尋ねるクオン。


「こいつって肉食だよな?」

「肉も食うにしても口が小さいな」


 とても人を食う生き物には見えない。


「なんなんだろうな?」

「わからん」


 全員が不思議そうにしていると遠くから声が聞こえた。


「おーい! クオンく~~~~ん!」


 セツナがこっちに向かってきていた。

 それを見て呆れるクオン。


「どうやら痺れを切らしたらしいな」


 一兵も呆れていた。

 見るとセツナは魔獣の向こう側からこっちに向かってくる。


「待ってたけど来ないから来ちゃった~~~てへ♪」


 そう言ってこっちに向かって……


ずるべったん!


 盛大にこけた。

 


「いった~い! 何これ! 」


 そう言って尻尾を蹴飛ばすセツナ。

 全員の顔が青くなる。


ぶぉぉぉぉ!


 魔獣が怒りの雄たけびを上げた!

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