第18話 プップの能力
「無事か!お前達!」
巨大な白蛇が人間の言葉を叫ぶ。
それを聞いて嬉しそうに声を上げるクオン。
「ヤスナガ様! 」
「何とか押さえつけるぞ! 」
ヤスナガとセツナは白蛇族で白蛇に変身できる。
変身すると身体が大きくなり力が強まるのだ。
すぐさまヤスナガも謎の魔獣の威嚇に加わる。
だが……
「だめだ! 強いぞこいつ!」
ヤスナガも攻めあぐねいている。
魔獣はやたら鋭い爪を持っているのだ。
いかな大蛇といえども、あの爪でえぐられては命の危険に関わる。
ただ一人だけ違うことを考えている人物も居る。
「大蛇に変身……風の魔法……」
何やらブツブツと呟いているマダラ。
彼は彼で何か思うことがあるようだ。
だが、そんなことに構っていられない全員はただ、魔獣に集中する。
ブォン
ヤマシタが再び突風を巻き起こす。
だが、この攻撃に慣れてしまったのか、魔獣は足を踏ん張って踏みとどまる。
クオンは必死で解決策を考える。
考えていることが自然と口から洩れる。
「どうする? とりあえずはこの場に踏みとどまってくれているが……」
「ぷっぷ?」
「セツナを呼び戻すか? だが、ヤスナガ様でさえ戦いづらい相手だ。同じ白蛇では一緒だろう」
「ぷぷ~?」
「カワダさんを呼ぶか? だが、カワダさんも河童だから水が無いと戦いづらい。まだ、山のど真ん中で川からは遠い」
「ぷぷっぷっぷ~?」
「どうする?何か手は無いか……」
「ぷ~~~~~♪」
「うるさいぞプップ!!」
後ろで緊張感無く鳴いているプップに苛立たし気に叫ぶクオン。
不思議そうに後ろを振り向くプップ。
「ぷぷ? 」
「お前だ。後ろ見てんじゃない」
自分を呼び指して不思議そうに首を傾げるプップ。
「ぷぷ? 」
「お前も何か出来んのか? 」
「ぷっぷ~♪ 」
妙にうれしそうに鳴くプップ。
いらっとするクオンだが無いよりはましやらせてみることにする。
「……まあいい。出来るんならやれ」
「ぷぷ~?」
「なんでもいい。やってみろ」
「ぷっぷ~♪」
「よし!やってこい!」
「ぷ~♪」
プップは嬉しそうにクオンの前に来た。
「ぷっぷ~♪」
プップはくるりとトンボを切って……
ビカッ!
いきなり光った。
「ぐお!」
いきなり現れた大きな光に村人全員が目を眩ませてしまう。
「馬鹿野郎! 何てことしやがる!」
目をこすりながらクオンが叫ぶ。
「目がぁぁ!」
案の定、ヤスナガも目をやられたようだ。
鎌首をくねらせている。
クオンが声を上げる。
「みんな一旦後ろに下がって!」
「やる前に言え!」
そう言って村人たちが口々に非難する。
「ぶぉぉぉぉぉ!!!」
ズン! ゴロン! ズン!
魔獣が唸り声をあげて何やら動き回っている。
「逃げろ! 何か暴れてる!」
「やべぇ近づいてくるぞ!」
「とにかく木の裏に逃げろ!」
そう言って村人たちが逃げ惑う。
クオンもかろうじて見えていた木の後ろに慌てて避難する。
「くそ! 目がやられていなけりゃ!」
さっきの光が原因で目をちかちかさせるクオン。
クオンがかろうじて見えるのは魔獣が暴れている事だけだ。
「クオン?」
いつの間にか隣に来ていたイッペイがクオンに声を掛ける。
「大丈夫か!」
「ああ、たまたま後ろ見てたんだ」
「どうなってる!?」
「俺が聞きたいんだが?」
「目が見えんだろ! 魔獣はどうなってる!」
「魔獣は目を押さえて暴れている。その場でうろたえているだけだ」
「わかってるんじゃねぇか!」
「俺が聞きたいのはお前だよ。何だそれは?」
一兵がクオン指さす。
クオンはきょとんと尋ねる。
「なんだって?」
「お前の着てる鎧だよ」
「……鎧?」
慌てて、自分の体を触るクオン。
触って初めて服の上に何やら固い物が覆っていることにクオンは気付いた。
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