第21話 マダラ覚醒
マダラが咆哮を上げる!
「メガッサリューセーケーン! 」
ドゴゴゴゴゴゴゴ!!
現れた握り拳が倒れ込んだ魔獣を上から何度も殴りつける。
それによって完全に動かなくなる魔獣。
「セツナ! 」
慌ててセツナを探し始めるクオン。
そして程なくしてセツナを見つけた。
「せつ……な? 」
見た瞬間呆れかえるクオン。
刹那は自分の体の形そのままに土にめり込んでいた。
大の字になって刹那の型が出来上がっている。
ぴくぴくと動いているし、重傷のようにも見えない。
横に来たイッペイが呆れ声を上げる。
「土が軟らかかったからめりこんで助かったんだな」
村人も集って来てその様子を見て呆れかえる。
「しかしセツナらしいと言おうか……」「運が良かったのぅ」「ほら、セツナ起きろ。旦那が助けてくれたぞ」
「……人騒がせな……」
我を失って怒り狂っておきながらそんなことを言うクオン。
「無事で何よりだ!」
スッキリした顔のマダラ。
なんだか暴れられてストレスが解消されたらしい。
「クオン……」
後ろからヤスナガが現れた。
「マダラがやったのだな」
「そうみたいですね」
そう言って大岩を指さす。
見れば魔獣はすでに大岩に埋もれていた。
完全に死んでいる。
「ぷっぷ~♪」
目の前にプップが現れる。
いつの間にか鎧の変身を解いていたようだ。
するとマダラが訝し気に声を上げる。
「なんだ? どういうことだ?」
不思議そうにあたふたしている。
怪訝な表情で手をばたつかせている。
「どうしたんですか? 」
「さっきの力が使えなくなった」
「……えっ? 」
見るとマダラが必死で何かを使おうとしているが何も起きない。
やがて溜息を一つだけついて呟いた。
「どうもそいつを鎧として身につけないとできないみたいだな……」
「……何でですか?」
「わからん」
首を捻るクオンとマダラ。
「まあ、とりあえず、一息付けたな。みなの者。これにて終了じゃ!」
安堵の息をつく村人たち。
全員が思い思いに寛ぎ始める。
そんな中、イッペイだけが不思議そうに魔獣の側でウロチョロしている。
クオンもそんなイッペイに声を掛ける。
「どうした? 」
「変わった生き物だなぁっと思って……舌は異常に長いし、一体何の魔獣だったんだろうな? 」
「食えるのか? 」
「一応。毒は無いだろうな」
二人でペタペタ触っているとマダラが声を上げた。
「こいつはアリクイだ」
「え、アリクイ?」
「蟻を食うからアリクイと言う。長い舌で蟻を絡め取るんだ」
「蟻を食うんだこの生き物。それでアリクイって言うんだ。へぇ~」
感心するクオン。
そこでクオンは尋ねてみた。
「ひょっとして記憶を取り戻したんじゃ……」
「残念。まだ思い出していない」
「もうちょっと困ってください」
困り顔のクオン。
「そうなると変だな。この魔獣に何人か食われてなかったか? 旅人が襲われた形跡とかがあったんだろ?」
「そういやそうだな? なんでだろ?」
不思議そうにしているとマダラがぽつんと呟く。
「単にうっかり攻撃して返り討ちに遭っただけじゃないか? アリクイに殺されたって話は一応あるぞ?」
「まあ、こんだけ大きければねぇ……」
クオンも苦笑する。
これだけ大きな生き物ならうっかり攻撃して返り討ちに遭ってもおかしくない。
イッペイがパンパンと膝を払う。
「そんなところだろうな。そろそろ行こうぜ」
「そうだな」
「ちゃんとセツナ連れて行けよ」
「わかってるよ」
そう言って二人はセツナの所に行った。
その日はヤスナガの屋敷で酒盛りをして大いに食べて解散したクオン達だった。
そんな小さな村の幸せな日常の一コマだった。
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