第29話 常識と礼儀
戸口が開かれ、外に居た二人の男女が入ってきた。
カラフルなスーツを着た黒人がいい笑顔でお礼を言う。
「いやあ助かりました」
「お手数掛けます」
そう言って二人の男女が入ってきたが……
「むぅ~~~」
セツナが口を尖らせる。
男の方は背の高い黒人で爽やかな印象だ。
原色系のカラフルなスーツが良く似合っている。
だが問題は女の方だ。
「困った時はお互い様です」
イッペイが鼻の下伸ばしまくりで答える。
一本のリボンを身体に巻きつけており、かろうじて危険なところが隠れている程度である。
ピンク色の乳輪が見えているし、下は剃っているのか筋まで良くわかる。
何よりも白人金髪美人で、仕草も色っぽい。
パシ
何も言わずにクオンの目をふさぐセツナ。
「セツナ。何も見えないよ」
「クオン君の目の毒です。見てはいけません」
この期に及んで邪魔をするセツナと必死で振りほどこうとするクオン。
「お客人。何があったか知らんがご婦人は着物を着て頂けますか? 」
ヤスナガがそう言ってメイカに着物を用意するように話す。
すると不満そうにカラフル黒人が言う。
「何を言われますか。それじゃ彼女の一番いい所が見えないじゃありませんか? 」
「と言いますと? 」
「ピンクの乳輪です! 」
ゴン
何も言わずに頭を叩く白人美女。
不服そうに声を上げるカラフル黒人。
「痛いじゃないかタルタ!」
「イッキューはこの島の常識をいい加減に覚えてください! 」
なんだか変なやりとりを始める二人。
「こちらをどうぞ」
適当な着物を持ってきたメイカが着物を渡す。
「ありがとうございます」
タルタと呼ばれた白人美女はそのまま渡された着物を着た。
着物を着ると同時にようやくセツナがクオンを離す。
「もういいですよ」
「………………」
タルタが着物を着た後だったので不満そうに口を尖らせるクオン。
「………………チッ」
悔しそうに舌打ちをするクオン。
するとセツナは困った顔になった。
「クオン君………………そんなに私と離れるのが嫌だったのですか? 」
「いいところが見れなかったのが嫌なんだよ! 」
そう怒鳴るクオンを尻目にカラフル黒人がメイカにお礼を言った。
「ありがとうご婦人! 」
カラフル黒人が爽やかに笑いながらメイカと握手する。
「………………いえ」
黒人はかなりのイケメン黒人なので、まんざらでもないメイカ。
だが、次の言葉を聞いて凍り付いた。
「お礼にセ○クスさせてください!」
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
時が止まったかのようにその場が凍り付いた。
横に居た白人美女が何も言わずに拳を振り上げる。
ゴン
「す、すいません!」
慌てたように白人美女のタルタが男を殴って謝る。
「痛いじゃないかタルタ!」
「だからこの島の常識を早く覚えろと言ってるでしょうが! 」
語気を強めて怒り始める白人美女。
一方でカラフル黒人の方も逆に口を尖らせる。
「いいかいタルタ。誰かが何かをしてくれるというのはその人の善意なんだよ。今の世の中、人に優しくしてくれるなんて簡単な事じゃないんだ。それをしてくれる人に対してお礼のセックスをしないなんてそんな失礼な話はないんだよ?」
なんだかとっても不思議な物言いをするカラフル黒人にクオンは首を傾げる。
「言ってる事は正しい気はするが、間違ってる気もするのは何故だろう? 」
「多分、確実に何かが間違っているな」
クオンとマダラが不思議そうに首を捻っている。
「だから常識を覚えろと言ってるんです! 」
「善意にお礼をするのが失礼と言うのかね! 」
怒るタルタに何故か筋の違うことを言って怒りだすカラフル黒人。
「だから……どう言えばわかってくれるんですか………………」
洪水のような涙を流すタルタ。
クールな白人美女のイメージが一瞬にして壊れる。
どうやら似たようなやり取りをして相当苦労しているようだ。
「……そのお姉さんがセックスやってくれるんなら話は別だけどな♪」
イッペイが余計な茶々を入れる。
それを聞いてカラフル黒人が嬉しそうに両手を広げて声を上げた。
「それは素晴らしい! 是非三人でやりましょう!」
ゴン!
「だから常識をわきまえろと言ってるでしょうが! 」
これまでで一番大きな音を立てて白人美女の拳が男の頭に落ちた。
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