第27話 痴女か夜盗か?
「眼福♪ 眼福♪ 」
「白人金髪美人はいいねぇ」
イッペイがスケベ面で窓から表の様子を見ている。
だが、彼の手にはしっかりと槍が握られており、周囲への警戒を怠っていない。
「眼福ではあるがねぇ……」
イッペイの横で外を見ているヤスナガも渋い顔だ。
「もっと良く見せろ」
「クオン君はダメです」
クオンのみがセツナから羽交い絞めを食らっているので見れなかった。
悔しいので質問するクオン。
「どんな服ですか? 」
「一本のリボンで作った服だよ。あの紐取ったらすぐに裸になれそうだねぇ……」
要するに変身する魔人にとっては理想的な服である。
「とってもいやらしい服です。痴女に間違いありません」
そう言ってセツナはクオンを羽交い締めにする。
渋い顔でセツナを睨むクオン。
「今の話は聞いてなかったのか? 」
「あれは私をあげるという意味に間違いありません」
「……まあ、美女を贈呈するときにああいった服を着せる事もあるからな。あれほどの美女であんな服着てたらそんな風にも見える」
イッペイが苦笑して答える。
当たり前だが美女を権力者に贈呈するのはこの世界でも一緒だ。
困り果てるヤスナガ。
「どっちなんだ? 」
「判断つきかねるな。どっちとも取れる…………最近は旅人の死体がしょっちゅう見つかるからな。つい先日もゴサクとキュウベェという旅人が死体で上がっていたからな……この前、魔獣を殺したからこれで無くなるとは思うが……」
ヤスナガは最近頻発している謎の旅人殺害事件についてぼやく。
旅人の死体は何が原因かわからないが、そこかしこで見つかっているのだ。
実は今回集まったのもその対策を考えることも含まれていた。
クオンが首を傾げる。
「あれもおかしな話ですよね。村のそこかしこで見つかってるんですから」
「旅人が何しにあんなところに行ってたのかもわからんよな」
「何か関わっているのかもしれない……」
そう言って二人とも警戒心を高める。
にゅっ
壁を通り抜けてマダラが出てきた。
「辺りを見渡したが、特に彼女以外は居ないな……山賊の類ではないようだ……」
ちょっとだけ不思議そうなマダラ。
困り顔のクオン。
「迷うなぁ……」
「ちなみにこんな感じだ」
そう言ってマダラがクオンに触れる。
感覚の一部を共有しているので触れると見てきたことがわかるのだ。
その映像を見てちょっとだけスケベ顔になるクオン。
(これはまた……)
白人金髪美女でかなりの爆乳だ。
肌には染み一つ無く、すらりと伸びた手足が綺麗で美女の見本と言えるほどだ。
その一方で服は赤いリボンを体に巻き付けており、すぐにでもヤルといった感じにも見える。
(確かにこれは悩む……)
見ただけではただの痴女だが変身型魔人にとって服はかえって邪魔なのだ。
変身型魔人はしょっちゅう衣服を破るので変身後にこういった一枚の布で体を覆うというのはよくある。
言い換えると一仕事終えてから立ち寄った可能性もあるのだ。
「ちょっと聞いてみるか。あなたは誰ですか? 」
マダラがドア越しに尋ねる。
「旅をしています! 道に迷ったので一夜の宿をお願いします! 」
普通に返事が返ってきた。
姿に似合った綺麗な声だ。
「強盗のよく使ういいわけだな」
イッペイが苦笑する。
人の親切に付け込むやり方だが、良くやる手口でもある。
それと同時に良くあることでもある。
「どこに向かっていますか? 」
「鎮魂の修行の旅です !今は北に向かっておりました! 」
「……鎮魂神官か? 」
美女の言葉にヤスナガが首を傾げる。
鎮魂神官は別名死霊魔術師とも言われており、文字通り霊魂を操る魔法を使う。
ネギ神官みたいなタイプの魔人で主に死者の霊を呼び出し、魂を慰めたり、悪霊と化した霊魂を鎮めたりする仕事だ。
中には霊を呼び出して遺言を伝える事もある。
苦笑するヤスナガ。
「どう見ても神官には見えんな」
「ですね」
疑いが濃厚になっていく一方だ。
尚もマダラが尋ねる。
「神官の証拠は? 」
「すいません! 私は従者ですので持っていないんです! もうすぐご主人様が来ると……来ました! 」
美女の声が困り声から嬉しそうな声に変わる。
だが、窓から見ていた全員が近寄ってくる神官の姿を見て渋い顔をした。
「また、エライのが来たな……」
ヤスナガのあきれ声にクオンは訝しむ。
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