第41話 三次転職クエスト

「ツバサちゃん! 三次職になろう!」


 学校が終わってFOにログインすると、クリスの居る深淵の街へ移動する前に、シュタインさんをはじめとするギルドのオジサンたちに囲まれてしまった。


「三次職……ですか? あ、そっか。僕、もうレベル80を超えていたんだ!」

「そうだよ。三次職になれば、ダンサーのスキルがデバフだけでなくて、攻撃効果も付くからね。絶対になった方が良いよ」


 シュタインさんによると、今の僕のクラスである二次職のダンサーは、踊りによって敵の能力を下げるデバフ効果がある。

 これはこれで凄く有効なんだけど、踊っている僕自身は攻撃が出来ないから、ダメージを与える事は出来ない。

 ところが、三次職であるソードダンサーというのになれば、踊りつつ攻撃も出来るのだとか。

 ソロや少人数パーティに向かないダンサーの欠点を克服出来るし、能力も高くなるし、絶対になるべきだと。


「うーん。三次職になれるのなら、僕もなりたいけど、転職クエストって時間が掛かっちゃうよね?」

「いや、大丈夫だよ。三次職は主にアイテム集めだからね。対象のアイテムさえ持っていれば、モンスターと殆ど戦う事もないよ。……という訳で、これはオジサンたちからだよ」

「え? あの、これは?」

「ソードダンサーの転職クエに必要なアイテムを、皆で集めておいたんだよ。後は、雪の街へ行って転職クエストを受けるだけさっ! さぁ、行こう! 雪の街へっ!」

「えぇっ!? 良いんですかっ!? 物凄く沢山ありますけど」

「いいの、いいの。ツバサちゃんは俺たちの太陽であり、天使であり、リーダーだからね。ここに居る皆からのプレゼントさっ!」


 シュタインさんにグイグイ来られ、冒険者ギルドから雪の街へと移動する。

 そのまま、あっちへ歩き、こっちへ歩き、三次転職クエスト専用のNPCと話して、


『ソードダンサーにクラスチェンジしました。

 武舞スキルが解放されました。

 二刀流スキルが解放されました。

 クラス補正により、筋力、生命力、敏捷性、幸運値が上昇しました』


 あっと言う間にソードダンサーになってしまった。

 なんだろう。一次職や二次職と違って、少し歩いただけで、本当に何もしていないんだけど。

 良いのだろうか。

 二次職のミンストレルになる時は、ユニークモンスターを倒さなければならなかった。

 今回は三次職の転職クエストだから、本来ならば少なくともユニークモンスターを倒すのと同等に大変な内容だったと思うんだけど。


「ツバサちゃん、おめでとーっ!」

「イイッ! ソードダンサーのツバサちゃんは、本当に良いよっ!」

「あぁ……昨日頑張ってアイテムを集めた甲斐があった。報われたよ」


 オジサンたちが嬉しそうに僕を見つめてくるけれど、流石にもらってばっかりだからお礼をしないといけないよね。


「ありがとうございます。あの、何かお礼を……」

「いやいや、そんなの良いって。俺たちは、ツバサちゃんが喜んでくれているだけで、十分なんだからっ!」

「だけど……」

「本当だよ? 俺たちは、ツバサちゃんの喜ぶ顔を見たいだけなんだからさ」


 うーん。前々から良い人たちばかりだとは思っていたけれど、良いのかな?


「あ、そうだ。だったら、せっかくソードダンサーになった訳だし、舞を披露してよ」

「舞……ですか?」

「うん。ダンサーは踊りだったけど、ソードダンサーは武舞っていうスキルになっているはずなんだ」

「そういえば、さっき武舞スキルが解放されたってメッセージがあったから……ちょっと待って」


 ステータス画面からスキル欄へ遷移すると、スキルポイントを消費して、武舞スキルに分類されている初期スキル『剣舞』を取得する。

 どういうスキルか知らないけれど、踊りでお礼になるのならと、早速使用する事にした。


『剣舞』


 すると、どこからともなく有名な凄く速い音楽が流れ、それに合わせて僕の身体が勝手に動き出す。

 しまった。これも踊りスキルと同じで、勝手に身体が動いちゃうスキルなのか。

 しかも、音楽と同じで物凄く身体の動きが激しい。というか、これは剣舞というより、どっちかっていうと、剣の……


「これっ! これだっ! やっぱりソードダンサーの踊りはイイッ!」

「何より、このデフォルト衣装が良いよねっ! チラリズムがたまらん!」

「そんなに激しく動いちゃうと見え……見えるっ! 見えるぞっ!」


 何が見えたのかは分からないけれど、音楽が終わる頃には、物凄く激しい踊りでヘトヘトになってしまった。

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