第26話 ギルドレベル
「野郎どもっ! 行くぜっ! 第一回ギルド設立記念狩りっ! 目標はギルドのレベルアップだっ!」
「おーっ! とりあえず、早くギルドのレベルを上げて、俺たちもギルドに加入させてくれっ!」
「任せろ! ツバサちゃんの為なら、何時間だって狩り続けられるぜっ!」
集まった人たちが変なテンションで盛り上がっている。
ギルドレベルを上げないと、今のままではGvGで勝てないのが目に見えているので、むしろ僕もこの流れに入っていかなきゃ。
「皆、狩りはどこへ行くの? きっと、レベルもバラバラだと思うんだけど」
「時計台の街はどうだろう。あそこなら、ギルドを出てすぐにダンジョンがあるから迷子になる事もないだろうし、地下へ降れば降りる程モンスターが強くなるから、自分のレベルに合った階で狩れば良いと思うんだ」
「お、良いじゃないか。そこなら、この街から転送で行けるしな」
そう言って、各自で時計台の街へと移動していく。
何でも、ギルドメンバーに限定すると、全員でパーティを組む事が出来るらしいので、十二人という物凄く大人数の大パーティで時計台のダンジョンへ。
「よし。三次職の奴は俺と一緒に地下三階へ行こう。ついて来てくれ」
「じゃあ、二次職の人は俺と行こうか。地下二階で良いよな」
「ツバサちゃん。私たちは地下一階にいましょう」
気付けばアオイと僕だけが一階に残り、皆奥の方へと進んで行ってしまった。
ステータス画面でギルドメンバーの一覧が見られるので見てみると、十二人のうち六人も三次職の人が居た。
どうやらアオイ以外、全員二次職以上……って、あれ?
「アオイがアコライトで回復役で、僕がミンストレルで支援役なんだけど、他の人たちは全員前衛職みたいなんだけど」
はっきり言って、もの凄くバランスが悪い気がする。後方から広範囲に攻撃が出来るメイジ系だとか、弓矢で素早く敵を仕留めるシューター系に、相手を撹乱させるシーフ系が一人も居ないんだけど。
「うーん。はっきり言って、今のメンバーって、私とツバサちゃんを除いたら、全員オジサンだからねー。剣で斬ったり、拳で殴ったりするのが好きな人が多いみたいね」
参加してくれているだけで有り難いんだけど、脳筋ギルドみたいになっちゃっているから、魔法を使える人をスカウトした方が良さそうかな。
二人して地下一階のダンジョン入口付近で喋っていると、
「あ、レベルアップした。レベル31だよ」
「アオイ、おめでとう! というか、まだ何もしていないのに、すぐ上がったね」
「三次職の人が六人も居るからねー。奥の方で強い敵を狩りまくっているはずだから、すぐにレベルが上がりそう……って、また上がった!」
すぐさまアオイのレベルが上がった。
その直後、
『おめでとうございます。レベルアップしました。レベル61です。尚、年齢制限モードのため、ステータスは自動割振されました。スキルの取得は手動となります』
『おめでとうございます。ギルドがレベルアップしました。ギルドレベル2です』
僕のレベルとほぼ同時に、早速ギルドのレベルが上がったという、始めてみるメッセージが表示される。
「あ、アオイ。ギルドのレベルが上がったんだけど、どうすれば良いと思う?」
「本当だねー。でも、ツバサちゃんは何もしなくても良いんじゃないかな? 私と同じ様に、お兄ちゃんやシュタインさんをサブギルドマスターに設定しているから……ほら、ギルドメンバーの人数が十六人に増えてる。きっと二人が対応してくれているんだよ」
「そっか……じゃあ、僕は何もする事がないのかな? ……というか、特に必要ないの?」
「違うよ。ツバサちゃんが何かする必要はないけれど、ツバサちゃんがギルドマスターである事が大事なの。ツバサちゃんが居てくれるから、皆も私も集まって来ているんだから」
「そ、そうなの?」
「そうよ。だって、私もお兄ちゃんも、今までギルドなんて入った事がなかったもの。あ、強いて言うなら、ツバサちゃんが笑顔で居てくれる事が、このギルドにとって、一番大切な事かな」
そう言って、アオイが僕を抱きしめてきた。
地下一階のモンスターは弱いと言っても、一応ダンジョンの中なんだけど……まぁいっか。
暫くアオイと待って居ると、小一時間程して皆が戻ってきた。
「ツバサちゃん。そろそろ六時だから一旦戻ってきたんだけど……」
「あっ! 本当だっ! ごめんなさい。僕、そろそろログアウトしないといけないや」
「だよね。けど、明日は土曜日だからね。俺たちで出来る限りギルドレベルを上げておいて、明日ツバサちゃんがログインしたら驚かせてみせるよ」
「ありがとうございます。凄く助かります」
「いいよ、いいよ。ツバサちゃんの為だしね。それにGvGは明後日だし、少しでも勝てる可能性を上げておかないとね」
ん? 今、凄く重要で、僕が失念していた事を言われた気がする。
「あ、あの……GvGって、明後日なんですか?」
「そうだよ。GvGは毎週日曜日に行われるからね」
「ひゃぁぁぁ……全然準備する時間が無いや」
「大丈夫だよ。俺たちは夜通し狩れるしね。それより、ツバサちゃん。早く戻らないと、お母さんに怒られないかな?」
「あ! ご、ごめんなさい。じゃあ、僕……ろ、ログアウトしますね」
「うん。しっかり休んで、また一緒に狩りへ行こうね」
GvG開始までの残された期間が、あと一日しかない事を今頃知ったけど、僕はログアウトする事になってしまった。
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