第28話 JSに着てもらう衣装検討会

「お疲れ様でしたー! 皆さん、ありがとうございました」

「マジカルツバサちゃん……イイッ!」

「俺は、伝説のスク水も見たい……」


 ミユさんと一緒に、魔法少女のコスプレのまま狩りに行き、皆を歌で支援してきた。

 ミユさんは魔法少女らしく魔法で攻撃しまくっているのに、僕は格好だけで一切魔法が使えないから残念……いや、残念って何!? 僕は魔法少女じゃないからっ!

 危ない、危ない。何かある度に、ミユさんが魔法少女プリズムさくらのノリで話しかけて来るし、周りのオジサンたちもマジカルツバサなんて呼んでくるから、混乱しちゃったよ。

 明日のGvG本番はちゃんとした装備で挑もう……って、あれ? 僕のちゃんとした装備って何だ!?

 唯一の武器らしい武器は、一番最初の初期装備「旅人の短剣+30」と、バードに転職した際に貰った「風のリュート+30」っていう楽器。

 この楽器は、装備していると歌スキルのに補正が掛かるので、皆の支援をするならこれだろう。

 で、防具はというと、これも最初に貰った「旅人の服+30」と、転職時に貰った「詩人の服+30」に、育代さんがくれた「学校指定水着+8」。そして、今着ている「手製のワンピース」しかない。

 初期装備にワンピース。スクール水着と魔法少女のコスチューム……って、防具が酷過ぎるよっ!

 靴は靴で、「旅人の靴+30」「学びの靴+8」「レインブーツ(ピンク)+30」の三つしか持っていなくて、今も学びの靴……というか、上履きを履いている状態だしさ。


「うーん……」

「あら、マジカルこむぎちゃん。どうかしたの? おトイレ?」

「え? ちょっと……って、僕はマジカルこむぎじゃないからっ! あと、トイレでもないよっ!」


 何故だろう。

 僕がトイレって言った瞬間、周囲のオジサンたちがピクッて反応して、一斉にこっちを見てきた。

 もしかして、皆我慢しているの?

 少しログアウトして、行ってくれば良いのに。


「あの、ミユさん。明日のGvGにどういう装備があれば良いのかなって思って」

「そんなの決まって居るじゃない。ツバサちゃんは、そのマジカルこむぎの衣装一択よ!」

「……まぁ確かに、皆の士気が何故か上がるから、アリなのかもしれないけど、あんまり防御力とか高くないよね?」

「それを言われると辛いわねー。特にGvGはギルドマスターが倒れた時点で、即負けだからねー」

「え!? そうなの!? だったら、尚更防御を固めないとダメだよね?」


 改めて話を聞くと、GvGにおけるギルドマスターの役割は非常に重要みたいだ。

 しかも、物理攻撃だけでなく、遠方から魔法で攻撃される事もあるだろうから、魔法防御にも気を配らないといけないとか。

 そういった話をミユさんから聞いて居ると、シュタインさんが大声で皆に呼びかける。


「よし。今から、明日のGvGでツバサちゃんに最も相応しいと思う装備を考えるぞ! 一に見た目の可愛らしさ、二に魔法防御、三に物理防御の優先順位だっ!」

「え? シュタインさん! 今の、何かおかしくないっ!?」

「大丈夫っ! 俺たち前衛が絶対にツバサちゃんへ敵を近づけさせないから、物理防御よりも魔法防御を優先した方が良いんだよ」

「そっちの話じゃないから! もっと、明らかにおかしいのがあるからっ!」


 僕に見た目の可愛らしさなんて要らないからっ!

 ……まさか、皆が装備している剣とか鎧って、性能よりも格好良さ重視だったりするのっ!?


「フッ……そういう事なら、俺に任せろ! こんな事もあろうかと、既に用意してある。皆、これでどうだっ!」

「おぉっ! 桃色レオタードっ! 見た目も良く、魔法防御も高い防具じゃないかっ!」

「しかも、+5まで精錬済みで、物理攻撃を軽減する加護付きだ!」


 え? ピンク色のレオタードって、皆正気なの?

 僕に変質者になれと?

 ……いや、似たような装備でスクール水着を着た僕が言うのも何だけどさ。


「待った! ならば、オレが用意したこれも見てもらおうか。紺色セーラー服だっ! しかもスカーフの色が白というレアバージョン!」

「むぅ……紺色セーラー服なら、スカーフは赤の方が良くないか?」

「俺としては、セーラー服は断固として夏服の白だな。そして、スカーフは青色! これは絶対に譲れんっ!」


 あの、セーラー服の色でそんなに揉めなくても良いんじゃないかな?

 何だか、今にも殴り合いを始めそうな雰囲気だし。

 というか、そもそも僕がセーラー服を着るのっておかしいでしょ?


「仕方が無いな。ここは、この俺がとっておきを出してやろう。……刮目せよ! これが、伝説の体操服と紺ブルマだっ!」

「優勝!」

「はい、決定! ツバサちゃんのGvGで着る服は、体操服と紺ブルマに決まりましたっ!」


 何だか良く分からないけれど、最後にシュタインさんが取り出した服で、皆が納得したらしい。

 まぁ体操服なら体育でよく着ているし、別に良いのではないだろうか。

 ただ、紺ブルマっていうのが何か分からないけど。

 体操服といえば男女問わず短パンだと思うんだけど、まぁいっか。

 一先ず、僕の装備も決まったので、明日に備えて今日はログアウトする事にした。

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