第29話 体操服と紺色ブルマ
ついに日曜日――GvGが行われる日だ。
ログイン前にネットでGvGのルールを確認してみると、こんな感じに纏められていた。
・戦闘時間は二十分。その間に、相手のギルドマスターを戦闘不能にするか、降参させると勝利。
・二十分経過後、両ギルドのマスターが健在の場合は、相手のギルドメンバーを倒した数が多い方の勝ち。
・二十分の戦いを終える毎に、十分の休息及び補充時間が与えられるトーナメント戦。
・各回の戦場はランダムで決まり、戦闘開始の直前に発表される。
なるほど。とにかく僕がやられると、即負けって事だね。
責任重大だから、頑張らなきゃ。
気合を入れてFOにログインすると、定番の場所となりつつある、旅人の街の冒険者ギルドに皆が集まっていた。
「ツバサちゃん! 今日は、頑張ろーねっ!」
「アオイ! 部活や勉強が忙しそうなのに、大丈夫なの?」
「うん。私は、どっかの大学生と違って、普段からやるべき事はしっかりやっているから、一日くらい大丈夫よっ!」
そう言って、アオイが抱きついてくる。
「……あの間に入りたい」
「マジカルツバサちゃんの太もも……すべすべしてそう」
「スク水は!? スク水はもう着てくれないのかっ!?」
周囲から変な声が聞こえてくるけれど……って、あれ? 随分と人数が多くない?
ステータス画面を表示してギルドの状態を確認してみると、
「えっ!? ギルドレベル10!?」
昨日の時点でレベル6だったギルドのレベルが10になっていて、メンバーが六十人くらいまで増えていた。
「はっはっは。ツバサちゃん……俺たちはやったぜ! 昨日死ぬ気で頑張ったら、いつの間にかレベル10になっていたんだ」
「す、凄いですね! ありがとうございます!」
「ツバサちゃんの為ならこれくらい……大した事ないよ。それに昨日も言ったけど、何故か異様に早くレベルが上がったんだ」
シュタインさんが不思議そうに首を傾げているけど……もしかしたら僕がギルドマスターだから、低年齢補正でギルドのレベルが早く上がるのかもしれない。
それなら、この急速なレベルアップも分かる気がする。
とはいえ、シュタインさんを始めとした、ギルドの皆が頑張ってくれたおかげなのには変わり無いけどね。
「GvGの申し込みは俺が済ませておいたから、あと三十分もすればアナウンスがあるはずだ。というわけで、俺はちょっとだけ寝るよ」
「シュタインさん、本当に大丈夫ですか?」
「もちろん。少し休めば平気だよ。けど、もしも俺の願いが叶うなら、ツバサちゃんの膝というか、太ももを枕に……」
そう言いながら、シュタインさんが僕の――未だに魔法少女の格好のままだった事を忘れて露出している脚に目を向けてきた。
それって膝枕をして欲しいって事?
けど、僕の膝枕は違う気がする。
僕ならアオイやミユさんに膝枕をしてもらいたい……あ、ギルドマスターである僕からアオイやミユさんにお願いしてって意味か。
けど、シュタインさんが頑張ってくれたのは分かっているけど、女性二人に膝枕を求めるのは難しいよ。
そんな事を考えながら、すぐ傍にいるアオイを見た所で、
「てめぇ、調子に乗るなよ!?」
「ここに居るほぼ全員が一徹や二徹だっての!」
「というか、俺だってしてもらいたいけど、そういう事を言って、引かれたらどうしてくれるんだよっ!」
別のオジサンたちが僕とアオイを守るように壁を作り、凄い罵倒の嵐が飛び交いだしてしまった。
これは、アオイ争奪戦が勃発しちゃったの!?
アオイが可愛いから、こういう事になるのも分かるけど、せめてGvGが終わってからにして欲しい。
「あの、皆さん。せっかく同じギルドなので、仲良く……しよ?」
「はい! ツバサちゃんっ!」
「俺はツバサちゃんとも仲良……ごふぅっ!」
若干、変な声も混じっていたけれど、全員が全員一斉にピタッと動きを止めて、僕を見つめてくる。
なので、一先ず全員休憩って事にしてもらい、暫くまったりしてもらっていると、
『只今より、GvGを開始致します。参加ギルドのメンバーは今から一分後に待機室へワープいたします』
突然システムメッセージが表示された。
「いよいよだな」
「腕が鳴るぜっ!」
「ツバサちゃん。俺が手を繋いであげ……痛っ!」
後ろの方で、誰かが蹴られていたような気もするけれど、一先ず静かに待って居ると、突然視界が真っ暗になり、一瞬で景色が大きく変わる。
「ここがGvGの待機室なんだ。あ、お店もあるんだ」
「ふわぁ……よっし、俺回復っ! ……ツバサちゃんの言う通り、回復薬なんかも買えるから、各自購入しておくんだぞー」
「おーっ!」
起きたシュタインさんの言葉に従い、皆がお店に群がる。
僕も回復薬とかを持って居た方が良さそうかなと思ったのだけど、
「ツバサちゃんは、私が居るから大丈夫だよっ!」
アオイに止められてしまった。
アオイが回復してくれるにしても、回復薬くらいは持って居た方が良さそうな気もするんだけどな。
「ところで、ツバサちゃん。GvGはその服で挑むの?」
「あ、忘れてた! シュタインさん。昨日言っていた服を貸してもらえますか?」
「もちろん。あと、これは俺からのプレゼントだから、気兼ねなく使ってね」
『体操着セット(紺)+5をを受け取った』
シュタインさんがくれた体操着を早速アイテム欄から装備すると、
「ぉぉぉ……ツバサちゃんが、ツバサちゃんがブルマだぁぁぁっ!」
「うぉぉぉっ! マジだっ! 伝説のブルマだぁぁぁっ!」
「こんなの回復薬とか買ってる場合じゃねぇっ!」
お店に居たオジサンたちが一斉に戻ってきた。
いやいや、回復薬は要るでしょ……って、オジサンたちの視線がやけに太ももに集中するんだけど、どうしてなんだろう。
そう思って、自分の脚に目をやり、
「えぇぇぇっ!? 何この服っ! 殆どパンツと変わらないよーっ!」
謎のブルマという装備の形状に、思わず叫んでしまった。
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