第27話 魔法少女マジカルこむぎ
土曜日。早速FOにログインして、ステータス画面でギルドの状態を見てみると、ギルドのレベルが6になって居た。
昨日、十人くらいで狩りをして、ようやく一つギルドレベルが上がる程度だったので、これは僕以外の人たちが物凄く頑張ってくれたという事なのだろう。
ギルドメンバーの上限人数も四十二人とかなり増えていて……って、ギルドメンバーが四十二人全員埋まってる!?
ギルドのレベル上げだけでなく、勧誘活動までしてもらちゃったのかと、流石に申し訳なく思っていると、
「あ、ツバサちゃーんっ! 久しぶりーっ! もー、暫く会えなかったから、お姉さん寂しかったわよー!」
聞いた事のある声と共に、魔法少女のプリズムさくら――もといミユさんが僕を抱きしめてきた。
「ミユさん。お久しぶりです」
「ツバサちゃんは、相変わらず可愛いわねー。けど、ツバサちゃんがギルドマスターっていうのは本当みたいだけど、大丈夫? オジサン共に、無理矢理ギルドマスターにさせられたりした訳じゃないわよね?」
「えっと、僕の個人的な都合でギルドを作って、皆に協力してもらっているので、ギルドマスターにさせられた訳ではないんですけど……どうしてミユさんがギルドの事を知って居るんですか?」
「そりゃあ知っているわよー。今、ツバサちゃんがギルドマスターのギルドが出来たって、めちゃくちゃ話題になっているもの。あ、もちろん私もギルドに入ったのよ。明日のGvGに参加するのよね? お姉さんも、頑張っちゃうからね」
話題になっているんだ……。
ギルドメンバーの誰かが、宣伝をしてくれているのかな?
そんな事を思いながらギルドメンバーの一覧を見てみると、半分以上の人が三次職で、一人レベル93っていう飛んでも無い人まで居た。
多分、FO全体でもトップレベルに強い人ではないだろうか。
それからミユさんと狩りに行く話をしていた所で、ぞろぞろと見知った顔の人たちが現れた。
「お、ツバサちゃんがログイン状態になったから来てみたけど、予想通りここだったね」
「あ、コージィさんにシュタインさん。凄いですね。ギルドのレベルが物凄く上がって、人も増えてます! ありがとうございます」
「いやいや、気にしないで。ツバサちゃんの為なら、一徹や二徹くらい大した事がないからさ」
一徹? 二徹? それが何の事かは分からないけれど、かなり頑張ってくれたんだと思う。
僕も今からギルドレベルを上げる為に、頑張らなきゃ。
「しかし、たった一晩でギルドレベルが6って上がり過ぎな気がするんだよな」
「そうなんですか?」
「うん。ギルドの情報はプレイヤーの情報と違って、公開されているんだけど、今一番レベルが高いギルド――つまりGvG優勝候補と言えるギルド『聖母の癒し』が、ギルドレベル9だからね。奴らだって日々狩りをしているだろうし、人数も多いはずなんだけどな」
「でも、その優勝候補に迫る程、皆さんが頑張ってくださって事ですよね。本当にありがとうございますっ!」
「いやいや、そんなの良いから、気にしないで! 俺たちはツバサちゃんの喜ぶ顔が見たいだけなんだから」
「けど、僕は何もしていないのに、レベルを上げて貰ったし……」
何かお礼をと考えていると、
「じゃあ、ツバサちゃん。これを装備してみて。きっと、このオジサンたちのご褒美になるから」
突然ミユさんに何かを手渡された。
『手製のワンピースを受け取った』
「あの、これは?」
「着てみればわかるわよ。ほらほら、ステータス画面から装備してみて」
何か紫色の服を渡されたのは分かったんだけど、すぐにアイテムが消えてしまったから、どんな服だったのかは分からない。
だけど、ミユさんが変な服を僕に着せるとは思えないので、アイテム欄から装備してみると、
「おぉぉぉっ! ツバサちゃんが、ツバサちゃんがミニスカ魔法少女だとっ!?」
「み、ミユさんっ!? これ、何ですかっ!? 下半身が物凄くスースーするんですけどっ!」
「似合うっ! 似合うわっ! 流石ツバサちゃん。今日から貴方は、魔法少女マジカルこむぎよっ!」
周囲のオジサンたちが騒ぎ出し、ミユさんが三百六十度、ありとあらゆる角度から僕を眺めてくる。
「って、スカートの中まで覗かないでくださいよっ!」
「いいわぁー。これで私の仲間が増えた……さぁ、こむぎちゃん! 悪いモンスターを退治しに行くわよっ!」
「僕はこむぎじゃなくて、ツバサですっ!」
思い出した。マジカルこむぎって、魔法少女プリズムさくらの仲間で、黒髪を二つ括りにした小柄な小学生の女の子だっ!
いやいやいや。僕は男だし、中学生だし、小柄って所くらいしか似ている所が無いのに、
「マジカルツバサちゃーんっ! 狩りに、狩りに行こうっ!」
「パンツを――げふんげふん。その華麗な技を見せてくれっ!」
「さぁ、行きましょう! その格好でツバサちゃんが進めば、オジサンたちが凄い勢いでモンスターを狩ってくれるわよ! GvGの為にも、さぁっ!」
周りのオジサンたちのボルテージが上がり、ミユさんが僕の手を取る。
マジカルツバサって誰なんだよぉー。
うぅ。でも、GvGのため……クリスを助けるため。
「じゃ、じゃあ、ギルドの皆ー! レベルアップの為に、狩りに行こー!」
「おぉーっ!」
短いスカートの魔法少女姿で、やけくそ気味に狩りへ行く事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます