第19話 お下がりのスクール水着
「とぉーっ!」
「ツバサちゃん。頑張ってー!」
育代さんがプリーストの支援スキルを沢山使って、僕のステータスをアップさせながら、応援してくれている。
やはりステータスや武器が強化されているからか、サクサクモンスターを倒す事が出来て、
『おめでとうございます。レベルアップしました。レベル54です。尚、年齢制限モードのため、ステータスは自動割振されました。スキルの取得は手動となります』
僕の攻撃で目の前の蛙型のモンスターが動かなくなると、すぐさま見慣れたメッセージが表示された。
育代さんのスキルのおかげか、トゲタニシだけでなく、魚モンスターや虫みたいなモンスターも倒して、どんどんレベルが上がって行く。
その上、ドロップアイテムである、トゲタニシのトゲや魚の骨、虫の殻みたいなアイテムも、それぞれ二桁ずつあったりして、過去最高のドロップ品収集だ。
……まぁ今までが皆に甘え過ぎだったというのはあるかもしれないけど。
「ツバサちゃーん! おめでとー!」
「あ、ありがとうございます」
「凄いねー。ツバサちゃん、頑張ったねー」
育代さんが、僕のレベルが上がる度に優しく抱きしめ、頭を撫でてくる。
アオイもレベルが上がる毎に抱きついてきたけれど、育代さんのハグにはそれとは違う心地良さがある気がるのだが、一体なんだろうか。
ちなみに、胸はアオイの方がムニムニと弾力があったのに対し、ミユさんはムチムチした感じで、育代さんはフニフニと柔らかい。
あと高校生のアオイに対して、育代さんは大学生か社会人かな? おっとりとしているんだけど、ミユさんよりも少し大人っぽく見えるし、大人の余裕という物があるのだろうか。
そんな事を考えながら、洞窟の奥を目指してザブザブと川の中を進んでいると、
「ひゃあっ!」
踏み出した先に川底が無く、ズルズルと胸くらいまで水に浸かってしまった。
「ツバサちゃん、大丈夫?」
「あ、はい。すみません」
「これ以上、奥に進むのは無理かしら」
「うーん。確かに、この水深だと戦えない……くしゅんっ」
「あらあら、大変! 着替えないと」
「いえ、大丈夫ですから」
タイミング悪くクシャミが出てしまっただけなのに、育代さんが僕を抱きしめて離してくれない。
そして、
「あったわ! ツバサちゃん。服が濡れちゃったし、一先ずこれにお着替えして」
ステータスウインドウで何かを探していたらしき育代さんが、嬉しそうに声を上げた。
その直後に、紺色の何かが手渡され、
『学校指定水着+8を受け取った』
再びいつものメッセージが表示された。
「……あの、育代さん? これって?」
「それはね。私が一次職のアコライトになりたての頃、もらった装備なの。それなりに性能も高いし、水耐性もあるし、このダンジョンにピッタリだと思うの。だから、ツバサちゃん。お着替えして」
「えーっと、育代さん。これって、水着……ですよね?」
「えぇ。濡れている服を着続けるより、良いでしょ?」
この人は、本気で言っているのだろうか。濡れた服よりも水着……というか、スクール水着を着ろと。
念のため、ステータスウインドウで形状を確認してみると、予想通り女性用のスクール水着だ。
これに身を包むと変態の称号から逃れられない気がするんだけど。
「育代さん。お気持ちはありがたいんですが、これはちょっと」
「でも、私が今着ている服は、プリースト専用装備でツバサちゃんは装備出来ないし、他に服みたいな物なんてあるかしら?」
僕は最初に貰った旅人の服があるけれど、これまで濡れちゃったら、街へ戻った時に着る物がなくなってしまう。
流石に裸は避けたいけれど、
「分かったわ。ツバサちゃんはお着替えが苦手なのね。じゃあ、私がお着替えを手伝ってあげる。はい、手を真っ直ぐ上に上げてー」
僕が口を開く前に、育代さんがワンピースに手を掛け、そのまま真っ直ぐ上に持ち上げようとしてきた。
女の子の服を着ているだけでも恥ずかしいのに、育代さんに服の着替えを手伝われるなんて……
「ま、待ってください。着替えます。着替えますからっ!」
急いでステータスウインドウからスク水――もとい、学校指定水着を装備する。
あぁぁぁ……ゲームの中とは言え、女性用のスクール水着を着るなんてっ!
「うぅ……恥ずかしいです」
「でも、ここには私しか居ないし大丈夫よ。それに、私も今の装備を貰うまで、それをずっと着てたんだけど、見た目とは裏腹に耐久性もあるし、何より魔法防御力が高いのよ?」
「え? 育代さんが着ていた水着なんですか?」
「そうなの。お古でごめんね」
僕は今、育代さんが着ていた水着に全身を包まれて……って、格好だけじゃなく中身まで変態になっちゃうよっ!
「うー、育代さん。もう、モンスターを狩って狩って、狩りまくりましょう!」
ネットの情報によると、川のダンジョンのユニークモンスターは、一定数以上のモンスターを倒すと現れるらしい。
一先ず、これ以上先に進むのは諦め、この辺りで現れるモンスターを倒しまくる事にした。
僕は育代さんが着ていた水着で喜ぶ変態じゃないんだっ! と、自らに言い聞かせるように戦いまくっていると、
――フシュルルル……
洞窟の天井にまで到達しそうな――二メートルくらいの大きな蛙が、奥からこっちへ向かってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます