第3章 はじめてのお友達?
第13話 ワープサービス
二十二時以降はログイン不可。
低年齢プレイヤーモードのため、クエストの難易度が下がる代わりに、夜中にはプレイ出来ないという制約があると分かったので、ネットでバードの狩り場を調べてみた。
攻略サイトによると、時計台の街という場所があって、そこが一次職になりたての頃に丁度良い狩り場らしい。
というのも、街の中にダンジョンがあるから、死んじゃってもすぐに再挑戦出来るし、一次職からは冒険者ギルドでお金を払えば、別の街へワープするサービスが受けられるからだとか。
という訳で、今日も学校から帰って来て、早速ログインする。
ちなみに、聞こえてきた話では、クラスの皆は二次職になったり、なる寸前だったりらしい。
早く皆に追いついて、学校でもFOの話が出来るといいな。
……
いつもの様にログインすると、見慣れた冒険者ギルドに立って居た。
まだ午後三時くらいだからか、アオイもミユさんも……というか、僕が知っている人は居ないみたい。
ギルドのテーブルでは、僕と同じ年くらいに見える少年たちが雑談しているけれど、話に夢中で僕には気付いていなさそうだ。
FOで一緒にプレイ出来る同い年くらいの友達が居れば良いなと思うけど、でも今は僕もやりたい事があるので、そのまま受付のお姉さんに話し掛けてみる。
「すみません。空間移動サービスって使えますか?」
「はい、ご利用可能ですよ。別の街の冒険者ギルドへ一瞬で移動可能ですが、どちらの街をご希望ですか?」
「えっと、時計台の街へお願いします」
「かしこまりました。それでは、転移させますね」
「ちょ、ちょっと待ってください。まだ料金をお支払いしていないんですけど、おいくらですか?」
ネットでワープするサービスが受けられると知ったものの、料金は行き先によって異なると書かれていた。
そのため、僕の全財産――初期の所持金である銀貨百枚以内でないと使えないんだけど、
「いえ、ツバサ様は低年齢プレイヤー補正により、利用料金が掛かりません。無料でご利用いただけます」
嬉しい誤算となる言葉が返ってきた。
「え? 無料!? 本当に!?」
「はい、本当です。利用回数制限などもございません。では、転移させてよろしいですか?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいね。あの、行き先一覧とかってありますか?」
「ありますよ。通常は、各街から行ける先は固定で決まって居るのですが、低年齢プレイヤーモードですと、全ての街へワープ可能です」
うわぁ! 凄い。
全ての街に行けるとなると話がまた変わって来て、時計台の街よりも、アオイに連れて行ってもらった芋虫が居る山の方が、更にレベルが上がり易いって書いてあった。
けど、あの山はどこから行くんだっけ?
前は、アオイの魔法で直接山の中腹へワープしたから、最寄りの街の名前が分からない。
ネットでチラッと見た時は、確か「深」っていう字が付いている街だったと思うんだけど。
「んー……あっ、ここ! この『深淵の街』っていう所へお願いします」
「深淵の街でよろしいですか?」
「は、はい。よろしいです」
「かしこまりました。それでは転移させますね。よい旅を」
ギルドのお姉さんがそう言った直後、視界が真っ暗になって、一呼吸の間に視界が元に戻った。
「ツバサ様。空間移動サービスのご利用、ありがとうございました」
いつもの街とは違い、赤い髪の、随分とワイルドな感じのお姉さんがカウンター越しに話しかけてきた。
冒険者ギルドの雰囲気も少し違って、大きな窓があるからか、凄く明るい……というか、窓っていうか大きな穴だね。
ちゃんと深淵の街へ移動したみたいだけど、何ていうか、冒険者ギルドの建物がボロボロだし、椅子やテーブルも壊れているんだけど。
「あの、すみません。この街から一番近い山って、どっちですか?」
「……北。建物を出て、右へ向かって真っ直ぐ」
「あ、ありがとうございます」
お姉さんに教えてもらった通り、建物――扉すら無かったけど――を出て右へ……
「って、な、何なの? この街は」
見える範囲の建物が殆どボロボロで、辛うじて倒壊していないってレベルだ。
武器や防具を売っている看板だけは出ているけど、中に人も居ないし、それどころか大通りにプレイヤーが誰も居ない。
いくら時間が早いとは言っても、僕と同じ学生が居ても良さそうなのに。
「いや、アオイが余り人が来ない場所って言っていたし、こういうものなのかも。とりあえず、北へ行ってみよっと」
言われた通りに真っ直ぐ歩き、門と言えるかどうか怪しいアーチをくぐって、街の外へ。
街から出て、すぐに森の中を歩く事になったんだけど、木々の色が緑色の葉とか、茶色い葉とかじゃなくて、紫色ってどういう事だろう。
とりあえず、ただただ真っ直ぐ道なりに歩いていると、周囲の木の葉と同じ色の、紫色のキノコが跳びはねてきた。
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