第4章 幼女護衛ギルド設立

第21話 数日振りの再会

 念願の二次職であるミンストレルに転職したんだけど、学校の皆はレイドバトル? とかっていう良く分からない話ばかりしていて、話題に入る事が出来なかった。

 何となくFOの話をしているように思えるんだけど、聞いた事の無い単語が沢山出て来て、良く分からない。

 ゲームの中で、誰か知っている人が居たら聞いてみようかなと思って言えると、視界が川の街へ変わった。

 昨日ログアウトしたのが冒険者ギルドの受付の目の前だったので、そのままお姉さんに話しかけて、空間移動サービスで深淵の街へ。


「……クリスは居ないのか。残念」


 壊れた建物を出たけれど、相変わらずこの街には誰も居ない。

 もしかしたら、前に訪れたクリスの家? に行けば居るかもしれないけれど、正直どうやって行ったか覚えてないんだよね。

 仕方が無いので、最初の街――旅人の街へ移動してみると、


「えー。それより、こっちの方が良いよー。ドロップアイテムだって美味しいし」

「いやいや。今は、とにかく数をこなさなきゃいけないから、弱くても湧きが良い、ここだって」


 移動直後から男女の話し声が聞こえてきた。

 どうやら、どこへ狩りに行くのかを決めているみたいだけど、どちらもどこかで聞いた事がある声だ。


「じゃあさ、百歩譲って……」

「ん? どうしたんだ、アオイ。突然黙り込んで……」

「ツバサちゃーんっ! 久しぶりーっ! 会いたかったよー!」


 バタンと椅子を蹴倒して、大きな胸の女の子が――アオイが僕に飛びつくようにして抱き締めてきた。

 ムニムニと大きな胸が顔に押し付けられる。

 弾力、弾力が凄い! けど、ちょっと苦しいよっ!


「おいおい、アオイ。ツバサちゃんが苦しんでるぞ」

「あ、ごめんね。大丈夫だった?」

「まったく。ツバサちゃん、ごめんね。無駄に胸だけ大きく育って、考えの足りない妹が……ふげぇっ!」

「ツバサちゃん、ごめんね。あと、このバカ兄ぃの事は無視して良いからね?」


 アオイが優しく声を掛けてくれるけれど……今、お兄さんをメイスで吹き飛ばしてなかった?


「えっと、確か街の中では攻撃出来ないんじゃなかったっけ?」

「ツバサちゃん、良く知ってるわねー。でも、大丈夫。パーティを組んでいるメンバー同士だと、攻撃も出来るし、ペナルティも受けないから」

「俺が大丈夫じゃねぇよっ! そもそもテニス部で鍛えられたスイングを、メイスに活用させて兄を殴るなよっ!」


 あ、なるほど。アオイはアコライトなのに凄い攻撃だったなーって思ったのは、リアルの身体能力のおかげなのか。

 一瞬、大きな胸を揺らしながら、スコートをチラチラさせつつテニスコートを走るアオイを想像してしまった。いいなぁ、テニス女子。


「あぁーっ! ちょっと待って! ツバサちゃんの名前に音符アイコンが付いてるっ! それってバード……じゃない、もしかしてミンストレルのアイコン!? それに服も少し違うし……ツバサちゃん、もう二次職になっちゃったの!?」


 あ! そう言えば、アオイが一次職の転職を手伝ってくれるって言っていたっけ。


「ごめんね。せっかく手伝ってくれるって言ってくれていたのに。皆が協力してくれて、どんどんレベルが上がっていっちゃって」

「ううん。私があんまりログイン出来なかったのが悪い訳だし、気にしないで」

「はっはっは。残念だったなアオイ。ツバサちゃんは俺の提案でバードに転職したんだ。そして、もちろんこの俺もツバサちゃんの転職に一役買って……って、痛いからっ! メイスでグリグリするのはやめろって!」


 どうやらアオイのお兄さんは、僕の一次職への転職を手伝ってくれた人らしい。

 背が高いお兄さんの顔を見上げると、確かに見覚えがある顔だ。

 なので、更に背伸びをして名前を見て……あ、あの大学生くらいの人か!


「コージィさん! あの時はありがとうございました」

「いやいや。ツバサちゃんの為なら俺はいつでもどこでも何にでも協力……ちょ、アオイ! 地味に足を踏むのはやめてくれって!」


 コージィさんの顔が若干歪んでいるけど、兄妹で仲が良い……よね? 一緒にゲームしているくらいだし。


「ねぇねぇ、ツバサちゃん。今日は、お姉ちゃん時間があるから、一緒に狩りへ行こうよ。とは言っても、お姉ちゃんの方がレベルが低くなっちゃったんだけど」

「もちろん構わないですよ」

「あ、それなら俺も俺も。ツバサちゃんと同じパーティになったら、俺が抱きついてもペナルティは……ごふぅっ!」


 アオイが重そうなメイスを片手で振り回し、何かある度にコージィさんを殴っているんだけど……だ、大丈夫だよね?


「ツバサちゃんはミンストレルだからー、どこが良いかなー」

「アオイ。メイスのフルスイングはやめような。それはもう、ツッコミってレベルを越えて殺意を感じるから……あ、いや、何でもないです。とりあえず、俺も仲間に入れてください」


『アオイ レベル27からパーティへの参加要請が来ています。参加しますか?』


 メッセージに応えてパーティに参加すると、二人の体力が表示されるようになったのだけど、


「あ、アオイ! お兄さんの体力が一桁だよっ! 回復してあげてっ!」


 アオイのツッコミ? で、コージィさんが瀕死状態になっていた。


「じゃあ、うちのバカ兄ぃが前衛で、私とツバサちゃんが後衛だよねー」

「おーい、アオイー。お前の兄ちゃんが死にかけてるぞー。回復しろー」

「作戦は、バカ兄ぃを一人でダンジョンの奥に突っ込ませて、私とツバサちゃんが入口でお喋りして待っているの。私はツバサちゃんにくっつけるし、ツバサちゃんは経験値が入る。Win-Winの関係よね」

「いや、それは俺が即死するから」

「じゃあ行き先はー、モンスターが多い事で有名な、深い森のダンジョンにしよー」

「だから、回復ぅぅぅーっ!」


 アオイと数日ぶりに再会した僕は、空間移動サービスを使って、森の中の村という場所へ移動した。

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