第22話 鬼畜マゾVRMMO
「凄ーい! ツバサちゃん、もうレベル58なの!?」
「えっと、お兄さんを含めて、いろんな人が助けてくれたから」
「アオイ、回復っ! そろそろマジでヤバいって!」
森の中の村から北へ少し進んだ所に、背の高い木々が密集し過ぎて陽の射さない場所がある。
深い森のダンジョンと呼ばれるそこは、植物型や昆虫型、それから動物型と、バラエティに富んだモンスターがこれでもかと言う程に湧く。
今も十数体のモンスターに囲まれながら、その全てをコージィさんが殴り倒していた。
「もー、またー? さっき回復してあげたよね? 自己回復とか出来ないの?」
「いや、この状況を見ろよ! 俺、結構頑張ってると思うんだけど。てか、ゴッドハンドはスピード重視の前衛職で、回復スキルなんてねぇよっ!」
「まったく。分かっていると思うけど、絶対にこっちへモンスターを通さないでよね。ツバサちゃんに怪我なんてさせたら、許さないんだからっ!」
そんな事を言いながら、アオイがコージィさんに回復魔法をかけ、再び僕の横に腰掛ける。
ちなみに、僕とアオイは深い森のダンジョンに薄ピンク色のシートを敷き、お菓子でも食べそうな雰囲気で寛いでいた。
「あの、アオイ。本当に良いのかな? お兄さん一人に戦って貰っちゃっているけど」
「大丈夫、大丈夫。バカ兄ぃは変態だから。痛めつけられても喜んでいるわよ」
「喜んでねーよっ! それに何度も言っているが、俺は変態じゃなくて紳士なんだよっ!」
コージィさんがこっちに顔を向けながら、物凄く速い連続技で熊みたいなモンスターを吹き飛ばす。
今、完全にこっちを見ていて、モンスターを見ないで倒したよね?
「まぁ冗談はさておき、今バカ兄ぃはゴッドハンドっていう三次職だから、本当に任せておいて大丈夫よ」
「三次職!? 凄いね……って、レベル81なんだ」
「うーん。一応、大学には通っているんだけど、ずーっとゲームしてるからねー」
ずーっとゲーム……って、大学生って暇なのかな?
イメージでは、勉強とか研究とかで忙しいって思っていたんだけど。
「おいおい、ツバサちゃんに変な事吹きこむなよ? 俺はゲームもしてるけど、単位はしっかり取っているんだからさ」
「はいはい。でも、どっちにしても、レベル81ってやり過ぎじゃない?」
「いやいや、俺なんてまだまだだぞ。凄い奴はもっと凄くて、レベル93って奴がいるはずだからな」
「どうしてそんな事を知っているのよ」
「ネット上の掲示板で絡んだりするからな。ちなみに、レベル99って奴は未だ居ないはずだけど、噂ではレベル99まで行ったら、レベル1に戻るんじゃないかって話だ」
え? レベル99まで上げたのに、またレベル1に戻っちゃうの!?
どうして!? 酷くない!?
僕と同じ事を思ったらしく、それをアオイが聞くと、再びコージィさんが戦いながら口を開く。
「レベル1でも、少し強くなったレベル1からやり直せるんじゃないかって事だ。そうすると、またレベル99まで上げた時に、普通のレベル99よりもステータスやスキルレベルが高くなるだろ?」
「えぇー。そうかもしれないけど、ステータスとかを増やす為だけに、またやり直すかなー?」
「いや、やり直すだろうな。俺だって、他のプレイヤーよりも強くなれるっていうなら、レベル1からでもやり直すね。他のプレイヤーも同じだと思うけどな」
「そんなのお兄ちゃんだけじゃない?」
「いやいや。そういうプレイヤーは多いはずだぜ。そもそも、FO自体が鬼畜マゾVRMMOなんて呼ばれている訳だしさ」
「ちょっと、私そんなの聞いてないわよ!? というか、ツバサちゃんの前でそんな言葉を使わないでっ!」
そう言って、アオイが僕の耳を……というか頭全体を包み込むようにして抱きしめてきた。
僕の顔がアオイの胸に埋められて、かなり嬉しいんだけど、アオイの言う「そんな言葉」って、どれの事だろう?
もしかして、鬼畜マゾって言葉かな?
別にそれくらいの言葉で悪影響があるような年齢でもないんだけどな。
そんな事を考えていると、
『おめでとうございます。レベルアップしました。レベル59です。尚、年齢制限モードのため、ステータスは自動割振されました。スキルの取得は手動となります』
いつものメッセージが表示された。
どうやらコージィさんが倒したモンスターの経験値がパーティメンバーに分配されて、僕のレベルが上がったらしい。
「ツバサちゃん。おめでとー! ほらバカ兄ぃも、ツバサちゃんのレベルアップをお祝してあげようよー」
「お、おう。ツバサちゃん、おめでと……って、いいなぁ! 俺もツバサちゃんを抱き締めたい……って、モンスターが多いっ!」
コージィさんが叫びながらも、ひたすらモンスターを殴り続けていて、僕は座っているだけだ。
なので、改めてお礼をしようと思ったんだけど、アオイに抱きしめられたままで、身動きが取れない。
「んっ……ツバサちゃん。どうしたの? そんなトコ、触っちゃ、ダメ……なんだからね?」
あ、あれ? アオイの腕から抜けだそうとして、一体僕はどこを触ってしまったのだろうか。
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