第23話 魔王の子
「え? ちょ、やっぱり俺もそっちに混ざりたいんだが」
「ダメよっ! ツバサちゃんは私のなんだからっ!」
「ぼ、僕は誰のものでも無いからね?」
アオイがコージィさんの視線から僕を隠すように抱き締めてくる。
これは……このままだと、心地良過ぎて僕はアオイの傍から離れられなくなっちゃうよ。
そんな事を考えていると、
「あ、レベルが上がって28になった。お兄ちゃん、あとレベル2つ分くらいよろしくー!」
「うおぃ! 無茶言うなってっ!」
どうやらアオイのレベルも上がったみたいだ。
「アオイ、おめで……」
「ツバサちゃんっ! ありがとーっ!」
おめでとうって言い終える前に、また抱き締められてしまった。
そうこうしているうちに、アオイのレベルが30になり、ついでに僕のレベルも60になった所で、今日は一旦終了となっていつもの冒険者ギルドへ。
どうやらアオイとお兄さんは、狩りが終わった後は、いつもギルドで喋っているそうだ。
やっぱり兄妹で仲が良いみたいだ。
……僕も、もっと渚と遊んであげないといけないかな?
そんな事を思っていると、
「お、コージィじゃねーか……って、ツバサちゃん!? 貴様っ! 可愛いJKの妹が居るくせに、ツバサちゃんと一緒にお喋りしていただとっ! 死にさらせぇぇぇっ!」
「お、やるか!? 最近新しいスキル修得したから、丁度試したかったんだよな」
「ちょっと、バカ兄ぃ! ツバサちゃんの前で暴れないでっ! 深緑山へテレポートして置き去りにするわよっ!」
どこかで見た事あるような気がするオジサンが現れ、コージィさんと話だす。
……アオイが割とちょっと怒っているけど、深緑山ってどこだろう。
というか、テレポートで置き去りって結構怖いよね。
僕なんて移動系のスキルや魔法を持って居ないから、テレポートでどこかへ連れて行かれて、そこから置いてきぼりにされたら、お手上げなんだけど。
「いやー、妹ちゃん。深緑山は勘弁してよー。一次職ならともかく、俺もお兄さんと一緒で三次職だから、もうあの芋虫は美味しくないし」
「じゃあ、ツバサちゃんの前で怖がらせるような事しないでくださいね?」
「お、おぅ。もちろん。我らが天使、ツバサちゃんを怖がらせる訳がないじゃないか」
そう言って、オジサンがコージィさんの横の椅子に腰かける。
「アオイ。さっきオジサンが言っていた深緑山の芋虫って?」
「お、オジ……うぅ、ツバサちゃん。俺はまだ二十六歳……あ、いや。ツバサちゃんから見れば十分オジサンか」
「深緑山はねー、ツバサちゃんと一緒に芋虫を倒しに行った山を覚えてる? あそこは、深緑の街っていう場所の近くの山だから、深緑山って呼ばれているのよ」
あー、アオイが最初に連れて行ってくれた場所の事か。
「って、深緑の街? 深淵の街じゃなくて?」
「深淵の街? お兄ちゃん、そんな名前の街があるの?」
「んー、俺は行った事がないけど、あるらしいぞ。つい最近、レイドバトルの話があっただろ? あれ絡みで攻略wikiを見てたら、深淵の街っていうのがあるって載ってたな」
あれ? 僕は、その芋虫を倒そうと思って深淵の街に行って……名前が似ているだけの、全然違う街へ行ってしまっていたのか!
自分のミスに軽くショックを受けていると、オジサン――シュタインさんが口を開く。
「しかし、レイドバトルが解放されたけど、参加出来るのがGvGで優勝したギルドだけっていうのが微妙だよな」
「確かに。ギルドなんて入ってないし、GvGもやってないっての。まぁこれを機にどこかのギルドへ入って、GvGに参加しろって事なんだろうけどな」
「確かレイドボスって、魔王の子だっけ? いやもう、勝てる気がしねーよ」
シュタインさんとコージィさんが何やら話しているけれど、GvGがギルド同士で戦う事で、レイドバトルは皆で協力して強力なボスと戦う事だったはず。
しかし、それよりも「魔王の子」って、つい最近聞いた事があるような気がするんだけど……何だっけ?
「あの、魔王の子って?」
「俺たちも詳しくは知らないんだけど、攻略サイトによると、GvGで優勝したギルドが、その魔王の子……クリス・フォンなんとかって名前のキャラと戦えるらしいよ」
「え……クリス!? それって、もしかして金髪の男の子!?」
「そこまでは知らないけど、詳しい事は攻略サイトを見た方が良いんじゃないかな?」
「……分かりました。今日は、もうログアウトしますね」
「あ、ツバサちゃ……」
まだシュタインさんが何か言いかけていたけれど、急いでログアウトした僕は、ベッドから飛び起きて、スマホを手に取った。
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