第33話 GvG決勝戦

「ダンサー!? ツバサちゃんがダンサーになるって!?」

「ツバサちゃんが踊るの!? マジで!? うぉぉぉっ! カメラを! カメラを持てぇいっ!」

「ちょっと今から課金して、FO内の動画保存アイテム買ってくる!」


 僕はダンサーになるなんて言っていないのに、ギルドメンバーが何故かお祭り状態になっている。

 ミンストレルの転職クエストを受ける時にダンサーのカードも出されたから見たけど、フンドシみたいな服で、スクール水着よりも露出が多かったよね!?

 しかも、皆の前で踊るんでしょ!? 流石にそれは無茶振りが過ぎるよっ!

 GvGの決勝戦を目前に控え、僕が戸惑っていると、


「ツバサちゃん。ほんと偶然なんだけど、たまたまクラスリセットを持っていたから、ツバサちゃんにあげるよ」

「ツバサちゃん。つい先日、ダンサー専用装備をゲットした所だから、使ってよ。いや、ホント偶然ゲットしたんだ」

「ツバサちゃん。アイテム倉庫を整理していたら、ダンサー向けの装備が出て来たんだ。いやー、やっぱり整理整頓は大事だよね」


『クラスリセットを受け取った』

『ベリーダンスの服(ピンク)+6を受け取った』

『ベール(ピンク)+5を受け取った』

『金の腕輪+5を受け取った』

『鉄の扇+7を受け取った』


 まだダンサーになるなんて言っていないのに、沢山アイテムが集まってきた。

 クラスリセットは、以前にも貰った物が残っているので二つ目だよ。

 しかし、貰ったアイテムの中に一つ嬉しいアイテムがあった。


「あ……この服、二次職の転職クエストで見た服よりも、露出が少ないや」


 あのフンドシみたいなのとブラジャーだけっていう格好をイメージしていたけれど、さっき貰った服はアイテム欄で見てみると、長いロングスカートの形をしている。

 これならお腹は出ちゃうけど、一番見苦しいと思われていた格好では無くなるので、まだマシな気がしてきた。


「それ、良いでしょー。ダンサーの踊りも幾つか種類があるんだけど、それならデフォルト装備よりも露出が少ないんだ……ごふっ」

「……てめぇ、何てもの渡してくれてんだよ! 全てのクラスのデフォルト服の中で、最も露出が激しいのがダンサーの服なんだぞっ!」

「フッ……俺は、衣装に身を包む姿こそ至高と考えているからな。本当は、ツバサちゃんには猫耳フードを被って欲しいと思っている。ケモミミこそが、俺の求める真の……ぐへぇ」


 何故か服をくれた人が奥の方へ連れて行かれてしまったけれど、一体何があったのだろうか。

 だけど、服に関しては少しハードルが下がったものの、やっぱり人前で踊るのは抵抗があるんだけど……


『只今より、GvG決勝の相手とバトルフィールドを発表いたします。尚、発表直後にワープしますので、御注意願います』

『天使護衛団の決勝の相手は、ギルド「聖母の癒し」。バトルフィールドは、草原フィールドⅡです』


 と、結論を出す前に辺り一面が草むらで、何の障害物も無い戦場へと移動させられてしまった。


「ツバサちゃん! ほら、やっぱり相手は専守防衛の聖母の癒しだよ。デバフがないと、かなり厳しいよ!」

「うぅ……そ、そうですね。じゃ、じゃあ、僕がダンサーになるから、皆勝ってくださいね?」

「おぉっ! 絶対に勝って、ツバサちゃんに優勝をプレゼントするぜっ!」


 優勝してクリスを守る為だ……と、アイテム欄にあるクラスリセットを使用すると、一次職に就く前のクラス――アドベンチャラーになった。

 すると、好きな一次職を選択可能というシステムメッセージが表示される。

 けど、その中からバードを選び、次の二次職を選択する時に……ダンサーを選択すると、


『ダンサーに転職しました。

 踊りスキルが解放されました。

 片手剣が装備可能となりました。

 扇が装備可能となりました。

 クラス補正により、生命力、敏捷性、幸運値が上昇しました』


 服装が勝手に踊り子のデフォルト衣装――フンドシみたいな服に変わってしまった。


「おぉっ! イイッ!」

「素晴らしい。素晴らしいよ、ツバサちゃん!」

「ツバサちゃーん! 少し踊ってみてーっ!」


 一先ず周囲の声には耳を傾けず、大急ぎで貰った服とベールに、金の腕輪を装備する。

 上半身の格好はあまり変化がないけれど、一先ずフンドシがロングスカートに変わって良かった……って、このスカートめちゃくちゃスリット入ってるね!


『ベリーダンスセットが装備されました。敏捷性と幸運が大幅に上昇します』


 って、あれ? セット装備による追加効果が現れたけど、今回は年齢適合っていうのが出なかった。

 今身に着けた装備は、大人向けだったという事だろうか。

 だけど次の戦いでは、踊りで相手ギルドのメンバーにデバフを掛けるのだから、僕は前線に向かう事になる。

 だとしたら、年齢適合で生命力が大幅に上がる体操服の方が良いのではないだろうか。

 ……正直、脚はブルマの方が出ちゃうけどさ。


『戦闘開始、五秒前』


 一応、シュタインさんあたりに相談してみようかと思ったけど、もう時間が無い。

 ……うん! やっぱり年齢適合効果を取ろう!

 そこから大急ぎでアイテム欄から体操服や赤白帽などのセットを装備する。


『運動着セットが装備されました。生命力と敏捷性が大幅に上昇します。尚、年齢制限モードのため、年齢適合により上昇率が五倍になります』


「え!? ツバサちゃん……」


 誰かが何かを言いかけた所で、


『時間になりました。只今より戦闘開始です!』


 GvGの決勝戦が始まった。

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