第15話 友達

 最初に見た時はかなり衝撃的だった、崩壊しかけの街並へと視界が変わる。

 周囲を見渡せば、ボロボロの冒険者ギルドの建物もあるし、ちゃんと戻って来られたようだ。

 一先ず、無事に戻る事が出来て良かったと胸を撫で下ろし、今度はクリスに向き合う。


「街へ連れて来てくれて、ありがとう。じゃあ、今度はクリスの望み通り、一緒に遊ぼっか!」

「え? 遊ぶ!? ……じゃ、じゃあ、かくれんぼでもする?」

「えーっと。うん、いいよ。どっちが先に鬼をする?」


 僕が言った遊ぶっていうのは、最初にクリスが言ってきたPvPの事だったんだけど、ゲームの中でかくれんぼっていうのも面白そうなので、やってみる事にした。


「じゃあ、先ずは我が探す方だな。三分待つから、隠れてくれ」

「わかった。じゃあ、目を瞑っていてね」


 十秒だと大して遠くへ行けないし、三分もくれるって事は、街中どこでも隠れて良いって事だよね?

 ゲームの中だという事を最大限に利用して、リアルの僕だと絶対に行かないような場所――壊れた宿屋の屋根の上に隠れてみた。

 ベランダから上に登ってみたんだけど……しまった。かなりリアルだから、マンションの三階くらいの高さがあって、しかも下を見ると結構怖い。

 降りる時は、どうしようと悩んでいたら、


「……みつけた!」


 何かの装備品なのか、黒い翼を生やしたクリスが空から降りてきた。

 まさか空を飛べるとは思わなかったなー。


「じゃあ、次はツバサが我を探す番……」

「待って! こんな所に隠れておいて何だけど、僕降りれそうにないから、助けて」

「……捕まって」


 クリスが差し出してくれた手を取り、そのまま身体にしがみ付く。

 やっぱり僕より年下だからかな。しがみ付いたその身体は、女の子みたいに細くて柔らかい。

 あまり僕が言えた立場じゃないけど、ちゃんとご飯をしっかり食べて、運動しないとダメだよ?

 クリスに抱きつくようにして地面に降ろしてもらい、攻守交代。三分待って、クリスが隠れそうな所を探してみる。


「あ、クリスみーっけ!」

「なっ!? 何故だ……。我は完璧に裏を突いたハズなのに。流石は、あの試練を越えて来た者という事か」


 試練? 何の事か分からないけれど、クリスのキャラからして、隠れるなら教会っぽいって気がしただけなんだけど。

 何ていうか、神様とか好きそうだし。

 二人で壊れた教会を出て、今度は単純な鬼ごっこをしてみる。

 二人っきりだと、ただ走って逃げるだけなんだけど、他のプレイヤーが居ないから街中走り回っても迷惑じゃないし、NPCも殆ど居ない街だから、家の中へ飛び込んだりして、意外と楽しかった。

 ただ、クリスに空を飛ばれると、流石にどうしようもなくなってしまったので、それはナシにしてもらったけど。

 それから色んな遊びをしたんだけど、沢山遊び過ぎて、知っている遊びが無くなってしまったのか、


「じゃあ、ままごとでもする?」


 とクリスから言われて、流石に困ってしまった。

 しかもクリスがお姉ちゃんで、僕が妹……って、どういう配役だよっ! せめて、僕が兄でクリスが弟ではないだろうか。

 いや、そうじゃなくて、普通のおままごとは父と母……って、そもそも男二人でやる遊びじゃない気がする。

 それに、二人で出来る遊びをやり尽くす程、一緒に遊んだから……あー、やっぱりか。


「ごめん、クリス。六時を過ぎちゃっていたから、僕もう帰らないと」

「そうか。それは残念だな」


 そう言って、クリスが少し視線を落とす。

 まぁ何だかんだ言って、僕も楽しかったし、帰らないといけないのは少し寂しい。

 ゲームの中とはいえ、同世代の男の子同士でこういう遊びをしたのなんて、物凄く久しぶりだったしね。


「あのさ、クリス。また僕と一緒に遊んでくれる?」

「――!? も、もちろん!」

「じゃあさ、その……僕と友達になってくれるかな?」

「友達……我と友達になってくれるの?」

「うん! あ、そうだ。僕、ちゃんと名乗ってなかったよね。僕はツバサっていうんだ。じゃあ、また遊ぼうねっ! バイバイ!」

「ば……バイバイ!」


 クリスと向き合いながら、互いに手を振り……なくなくログアウトする。

 せっかく出来た友達だから、もう少し遊んでいたかったけど、クリスも僕と同じくらいの年齢だろうし、そろそろログアウトしないと怒られるだろうしね。

 また明日、クリスが居たら一緒に遊ぼうと思い、FOで出来そうな遊びを考えてみる事にした。

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