第25話 ギルド設立

「な、なんだって!? ツバサちゃんのギルドだとっ!? 入る! 俺も入るぅぅぅっ!」

「おぉぉぉっ! ツバサちゃんと同じギルドに! つまり、ツバサちゃんに俺の事を知ってもらえる! お近づきになるチャンスッ!」

「ギルマスがツバサちゃん……ツバサちゃんを護り、ツバサちゃんに命令され、ツバサちゃんと共に成長する。素晴らしいっ!」


 新たに現れた人たちにシュタインさんが何の話をしていたかを伝えると、周りの人たちが熱の籠った声で賛同していく。


「ツバサ! ツバサ! ツバサ!」


 今度は、僕の名前を一斉にコールし始めたっ!?

 僕は普通の中学生なのに、こんなにも応援してくれるなんて……やっぱり良い人が集まるゲームなんだっ!


「やはり……我らがディーバ。ツバサちゃんだな。社会の荒波に揉まれ、日々精神をすり減らしている者たちが、癒しを求めてツバサちゃんの元へと集まってくる」

「お兄ちゃんは早く社会の荒波に入れるように、ちゃんと大学へ行った方が良いと思うんだけど」

「待った。アオイ、お兄ちゃんはちゃんと大学には行っているからな? ……一応」


 段々コージィさんの声が小さくなっていくけれど、本当に大丈夫なのだろうか。

 しかし、どうして僕が癒しなのだろうか。

 僕は何もしていないし、ここに居る半分くらいの人とは、言葉すら交わして居ないんだよ?

 だけど、コージィさんの言葉に反応して、オジサン達が互いの顔を見合わせ、


「俺、ツバサちゃんを近くで見られただけで、明日も頑張ろうって思えるんだ」

「俺も俺も。ツバサちゃんを見るために、仕事を頑張ってる感はあるよね」

「ツバサちゃんの姿が見られなくなったら、月曜なんて絶望しかないよな」


 笑顔で変な事を言い合う。

 それ、僕じゃ無くてアオイの事じゃないかな?

 男子中学生を見ても癒されないと思うんだけど。


「とりあえず、さっきの話に戻すけど、早くツバサちゃんギルドの名前を決めようぜ」

「お、そうだな。コージィの言う通りだ。皆、ギルドの名前さえ決まれば、後は申請するだけなんだ。それぞれアイディアを頼む」


 シュタインさんが新たに来た人たちに意見を求めると、


「赤いランドセルのツバサ」

「紳士の嗜み」

「まったく、ツバサちゃんは最高だぜ!!」


 良く分からない名前が出てくる。

 僕とランドセルなんて、全く関係が無いよね? しかも赤って。

 だけど、そんな僕を余所に、いつの間にか十人くらいまで人が増えていて、皆でギルド名について真剣に討論していた。

 ……よく分かんないけど、会社の会議とかって、こんな感じなのかな? まぁ議題がちょっと変かもしれないけど。

 そうこうしていると、


「では、名前は『天使護衛団』に決まりという事で」

「異議なし!」

「くっ……ツバサちゃんを愛でる会はダメだったか」


 由来がよく分からない名前に決定した。

 どうして天使なんだろう? とはいえ、じゃあ自分で決めろと言われても良い名前が出て来ないので、僕にも何も言えないんだどさ。

 一先ず決まった事なので、冒険者ギルドのお姉さんに『天使護衛団』の名前でギルドの設立を申請する。

 ちなみに、申請する時にお姉さんから渡された用紙に、サブギルドマスターという項目があり、三人まで登録出来るようなので、アオイ、コージィさん、シュタインさんの三人の名前を記入しておいた。


「おめでとうございます。これをもって、ギルド『天使護衛団』が正式に設立されました」


 冒険者ギルドのお姉さんがそう言った直後、


『天使護衛団のギルドマスターになりました』


 いつものようにメッセージが表示された。


「ツバサちゃんギルドの誕生だぁぁぁっ!」

「祭だ、祭りだ!」

「これで、俺たちもツバサちゃんの仲間だーっ!」


 シュタインさんの話によると、サブギルドマスターにもギルドメンバーの登録が可能らしく、あっという間にギルドのメンバーが僕を含めて十二人まで増えた。

 だけど、ここに居る全員がギルドに入れて居ないらしい。

 というのも、ギルドにもレベルがあって、そのギルドレベルで加入出来るメンバーの上限人数が決まるそうだ。

 なので、GvG――ギルド同士で戦う際は、ギルドに所属している人数が多い方が当然有利なので、とにかくギルドのレベルを上げなければ話にならない。


「あの、ギルドのレベルってどうやって上げるんですか?」

「ギルドのメンバーがひたすらモンスターを狩れば良いんだよ。ギルドメンバーが倒したモンスターの経験値の一部が、自動的にギルドの経験値として加算されるんだ」

「つまり、ギルドも僕たちプレイヤーと同じ様に、経験値でレベルが上がるって事ですか?」

「その通り。とはいえ、プレイヤーがレベルを上げるのに必要な経験値よりも、遥かに沢山必要だけど。じゃあ、そういう訳で、早速今からギルド設立記念の狩りに出発だ! ツバサちゃん、ギルドマスターとして号令を!」


 ギルドの仕組みについて教えてくれたシュタインさんから、突然ギルドマスターの号令を……と言われ、


「じゃ、じゃあ、皆で出発ー!」

「いえぇぇぇーいっ!」

「ツバサちゃんと狩りが出来るぅぅぅっ!」


 まだギルドに加入していない人も含めた十数人で、狩りに出かける事になってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る