第43話 探し物は何ですか?

「クリス。北の森で何をするの?」

「ふふっ。お楽しみは、後で。まだ秘密ですの」


 うーん。クリスは何から喋り方の影響を受けているんだろう。

 女の子らしい喋り方にするにしても、何かお手本みたいな物があると思うんだけど……まぁいいか。

 クリスとパーティを組むと、一緒に並んで歩き、深淵の街を抜けて森の中へ足を踏み入れる。


「サモン――オルトロスッ!」


 すると、森に入った途端に、突然クリスが双頭犬を召喚した。


「クリス? 何かを倒すの?」

「うん。まぁツバサはゆっくり待っていてよ。絶対に……おっと、ナイショだよー」


 森の中で迷子になるとダメだからと、クリスに手を引かれ、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。

 正直、どこを目指しているのかは分からないけど、クリスの事だから、僕と違って迷子になっている訳ではない……と思う。

 そして、森の中を二人で歩いている間も、初めて僕が来た時と同じ様に、紫色のキノコが周辺から大量に湧きだしている。

 それらを、クリスが召喚した犬が倒しまくっているから、


『おめでとうございます。レベルアップしました。レベル91です。尚、年齢制限モードのため、ステータスは自動割振されました。スキルの取得は手動となります』


 ほら、レベルが物凄い事になっているんだけど。


「うーん。無いなぁ……」

「えっ!? 無いって、何が? もしかして、迷子?」

「あはは。迷子な訳ないよ。ここは我の……私の庭みたいなものだもの。そうじゃなくて、ちょっと探しているものがあるんだけど……よし。サモン――ケルベロスッ!」

「え? 二体目!?」

「まだまだっ! サモン――キマイラッ! スフィンクス! テュポーン! ……頑張って、探してきてっ!」


 ちょ、ちょっと待って。

 何だか、いろんなゲームに出てくる、名だたるモンスターが勢ぞろいって感じだったよ!?

 最初に呼んだオルトロスは僕たちの傍に居て、現れたモンスターを倒してくれる一方で、新たに呼んだ四体はそれぞれ別々の方角へ散って行った。

 ……テュポーンとか、かなり怖い容姿だったんだけど、あんなのを森に放って大丈夫?


『おめでとうございます。レベルアップしました。レベル92です。尚、年齢制限モードのため、ステータスは自動割振されました。スキルの取得は手動となります』


 って、すぐさまレベルが上がったよ!?

 もしかして森の生態系を壊す勢いで、狩り続けてない!?

 それから暫くレベルが上がり、


「あっ! やっと見つけたっ! ツバサは、ちょっとここで待っててね」


 クリスが目当ての物を見つけたらしく、駆け寄って行く。


「……って、クリス? 探していたのって、ソレなの?」

「うん、そーだよ。すぐに片付けるからねー」

「あー、うん。片付けるんだ……。ただ、僕にはそれが、ドラゴンに見えるんだけど」

「そうだよー。グリーンドラゴンって言ってね、森に住んでいるドラゴンなんだー」


 クリスが走りだした先に居るのは、その名の通り、緑色の大きなドラゴン。

 僕の数倍くらいの体長だし、クリスは空が飛べるんだから、木々の上から見ればすぐ見つけられそうじゃない?


「空を飛べばすぐ見つかりそうなんだけど、ここが迷いの森だからか、何故か上からは見つけられないんだよねー」

「へー、そうなんだー……って、クリスッ!」


 まるで僕の思考を読んだかのように、クリスが説明してくれたけど、すぐ傍にドラゴンの大きな鉤爪が迫っている。

 もーっ! どうしてそんなに余裕があるのかは分からないけれど、ちゃんと前を見ようよっ!

 今から走っても間に合わないので、近くに落ちていた石を拾って、ドラゴンに向かって思いっきり投げつける!

 ドラゴンの意識がクリスから逸れて欲しい一心で投げた石が、ドラゴンの爪に当たり……あれ? 爪が砕けた!?


「……ツバサ! 何それ、凄い! 今のは、何のスキルなの?」

「え? と、投石?」

「……ストーン・バレットの魔法かな? かなりの高威力だね」


 あ、うん。もう、それで良いから、僕よりドラゴンを見てっ!


『剣舞』


 いつの間にか戻って来ていた、クリスの呼んだ召喚獣たちの攻撃と、僕の剣を持った舞からの攻撃を何度か繰り返し、何とかグリーンドラゴンを倒す事が出来た。


『おめでとうございます。レベルアップしました。レベル98です。尚、年齢制限モードのため、ステータスは自動割振されました。スキルの取得は手動となります』


 ドラゴンなんて凄い魔物を倒したから、一気にレベルが上がってしまった僕を横目に、クリスが倒したグリーンドラゴンから何かを拾う。


「よし! 準備おっけー! ツバサ、私の家に行こう!」


 そう言ってクリスが僕の手を握り、いつものように一瞬で視界が変わった。

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