サバイバル訓練五日目
輝く太陽!
煌めく海!
澄み渡る空!
なんて、なんて気持ちがいいんだ!
僕は今、空を飛んでいる。
真昼間だ。
今まで夜中にしか飛んだことなかったけど、昼も良いもんだね。
ちなみに黒騎士君も一緒だ。
そういえば、僕に殴り掛かってきたマリア王女は軽く首トンで気絶させて洞窟の中に寝かせている。
食料も水も全部置いてきたし、たぶん何とかなるだろう。
それとついでに、指輪もそっと返しておいた。
たぶん高価なものだろうし。
まあ少なくとも命は大丈夫なはずだ。
それと、僕が今飛んでいる理由だけど、魔物を殺すためだ。
よくよく考えてみれば、別にあの南の森の中で魔物を倒す必要はないのだ。
どこか適当な場所に飛んで行って、そこら辺をうろついている魔物をぶっ飛ばせばいいだけなのだ。
そんなわけで、今僕は空を飛んでいるのだ。
「ん・・・?」
目の前にバカでかい積乱雲が見える。
たぶん、あの中には、未だ人類の到達していない古代技術で作られた、空に浮かぶ島があるんだろうなあ・・・。
「行くよ!黒騎士君!」
僕と黒騎士君は雲へと最高速度で飛び込む。
雲の中は、今まで見たこともないような光景だった。
先の見えない霧に囲まれたような景色なのに、なぜか奥の方で迸る雷が見える。
そして、なぜがその雷は、僕達を導くかのように道を作ってくれている。
あの雷、人に当たれば間違いなくひとたまりもないだろう。
僕たちが今無事でいるのは、運がいいからだ。
僕は雲の中を飛んでいく。
雷の道は、次第に小さくなり、道があるのかどうか分からないような、未知の空間に出る。
それでもなお、僕たちは突き進む。
何時間経っただろうか。気が付くと、雲を突き抜けていた。
そして、辺りは真っ暗。
いつの間にか、夜になっていたようだ。
そして、目の前には、巨大な大陸。
月の光に照らされて、幻想的な雰囲気を醸し出している。
「あった!やっぱりあったんだ!ラピュ!」
僕は目の前の壁へとぶつかり、そのまま空に浮かぶ大地へと落ちる。
「っく!罠か・・・?」
僕はこれから起こるドキドキワクワクのイベントに気持ちを捕らわれる。
すぐに立ち上がり、体についた土ぼこりを払う。
ふと、黒騎士君が無事かどうか確認する。
黒騎士君は無事の様だ。
ふわりと、優雅に大地に足をつける。
いちいちかっこいいのが腹が立つ。
「ここには、財宝が眠っているに違いない・・・」
「マオウサマ、カオ、ダイジョウブ?」
「大丈夫だ!さあ!探すぞ!財宝!」
僕は気持ちを切り替えて走り出す。
まだ見ぬ未知の世界へと。
気が付けば夜だ。
もう日はまたいでしまっていることだろう。
僕は大いなる野望を胸に走り出す。
明るい未来を夢見て。
*
「うぅ・・・どうじで・・・ざぎに・・・リダああぁぁ!!」
朝。
サバイバル訓練を終えた学生たちは、今日は臨時休校となっていたのだが、校舎に顔を出した生徒が二人いた。
勇者のヒロと、魔剣士のコザだ。
そして、彼らが見つめる先には、南の森から帰って来なかった唯一の生徒の席。司書のリダの席だ。
リダの席には、美しい一凛の花が添えられている。
「僕は・・・、僕は信じてるからね・・・。リダがまだ、きっと生きてるって・・・」
ヒロは静かに涙を流す。
リダを、もっと強く引き留めておけばよかった。もっと、思い出を作っておけばよかった・・・、もっと・・・。
二人はいろいろな感情と後悔が頭の中を駆け巡り、ただただ、涙を流す事しかできなかった。
「リダは!?リダは無事なの!?」
教室に、荒々しく息巻いて入って来る女性が一人。
リダの姉、キーシェだ。
二人は顔を合わせ、俯く。
その二人を見て察したのかキーシェは、
「そう・・・、そうなのね。でも・・・ありがとうね。リダと友達でいてくれて」
無理やり作った笑顔。
しかし、その眼には涙が溢れている。
二人はその顔を見て、さらに泣いた。
学園に静かに響き渡る声。
そして、その光景を廊下で見ていたマリア王女は、手の中に握りこんだ指輪を見て、静かに涙を流すのだった。
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