次なる試練
武闘大会から一週間くらい経った。
僕はいつものメンバーで、いつもの昼ご飯を食べている。
いつもの僕達しか頼まない貧乏定食だ。
そういえばアインからの報告によると、今回の大会の襲撃はまたしてもダークリベリオンの仕業ということになっているらしい。
それもゼロが人体実験を行い、大会の会場に化け物たちを解き放ったそうだ。
ゼロすげー!
そんなわけで、ゼロの懸賞金が倍になった。
早く誰かをゼロに仕立て上げて騎士団に突き出さねば!
けど真実は、ディスパーダの上層部の人達が魔王の力を人間に宿らせるための実験の段階で生まれた、化け物なんだそうだ。
古代の魔王の肉体から抽出した遺伝子を組み込んだ人間。
僕は次々と出てくる壮大な話にわくわくが止まらない状態だ。
会場は混乱していたが、先生方の迅速な誘導によって生徒たちは全員早いとこ避難したらしく、怪我人は勇者のヒロと、剣王のマリアだけだった。
あれから二人は仲良くなっている。
「勇者!勝負よ!」
ほら、こんなふうに。
「王女様も飽きないね、じゃあ放課後いつものところでね」
ヒロは爽やかな笑顔で返す。
「俺も勝負だ!」
コザも勝負したいようだ。
最近はこの三人で放課後の鍛錬を行っているらしい。
「あなただと張り合いがなくてつまらないわ。だって弱いもの」
「なんだと!」
王女様はこの二人の前だと本音が出るみたいだ。
普段は高嶺の花っぽく振る舞っている。
ちなみに僕は完全に置いてけぼりだ。
「あの・・・リダ・・・くんも、一緒に・・・どうかな?」
王女様がもじもじしながら上目遣いで聞いてくる。
若干頬が赤く染まっている。
キャラがブレブレすぎて気持ち悪い。
「いや、僕はいいよ。図書館で本でも読んでるよ」
嘘だ。
夜はスタイリッシュパトロールをして悪党どもを蹴散らさなければならないのだ!
「リダは司書だもんな!やめといたがいいぜ!」
コザはなぜか僕とは戦おうとしない。
よほど模擬演習の時のことを引きずっているのだろう。
「じゃあ今度一緒に図書館で本読みましょ!」
王女が満面の笑顔で誘ってくる。
「そうだな!たまにはみんなで、勉強も悪くないかもな!」
コザが僕に肩を回して言う。
「いや、あなたはいらないわ」
王女様はコザのことが嫌いなようだ。
「えっ・・・」
コザの目に涙が浮かび始める。
彼はこんな性格だけど、本当は人一倍打たれ弱いんだ。
「今日のところはいつもの三人で鍛錬しなよ。僕のことは気にしなくていいからさ」
勇者に王女様である剣王、それに魔剣士。
どうみても漫画の主人公御一行様だ。
僕としては、彼らとは一定の距離をとっておきたいところ。
「そう・・・そうね。でも今度一緒に図書館に行きましょ!約束ね!」
半ば強引に約束を取り付ける王女様。
断り辛い。
「うん。じゃあ今度ね」
僕はとりあえず笑顔を返した。
今度。この言葉は実に便利だ。別に明日明後日でなくてもいい。来年でもいいのだ。
このまま王女様とは一定の距離を取り続けよう。
「そういえば、サバイバル訓練の班決めどうする?」
若干空気になっていたヒロが話す。
サバイバル訓練。
そんなイベントあるのか。
知らなかった。
「いつあるの?」
「来月だよ!来月!」
僕の問いに、コザが興奮して答える。
どうやら、南の森で三人一組の班になって、一週間サバイバル生活をするらしい。
安全のために一定のダメージを受けると強制的に森の入り口まで飛ばされる魔道具が全員に支給されるらしい。なんて生温いんだ。
「ちょうど、三人いるし、このメンバーでいいよね?」
ヒロが聞く。
三人とは、勇者と剣王、そして魔剣士のことだろう。
「えっ、それじゃあ、リダ君は?」
三人が僕に目を向ける。
「僕は適当に余った人と組むからいいよ!」
というか組めるだろうか。
まあいい。
僕は集団行動とか、周りの人と足並みそろえて行動するのが大嫌いなのだ。
「そう・・・」
王女様が悲しそうな顔をする。
「この三人なら優勝間違いなしだな!」
サバイバル訓練が行われる南の森では、魔物が現れる。
倒した魔物の数に応じて、ポイントが付き、優勝したりすればいろいろと報酬が貰えるらしい。
まあ、報酬といっても、トイレットペーパー一年分とか、そんなどうでもいいものだろう。
「優勝したら、500万ゴールドだってさ!」
僕の目が見開く。
500万ゴールド。
貧乏貴族定食が一万回も食べられる。
というか貧乏貴族定食を食べなくてもよくなる。
これは・・・。
これは・・・!!!
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