アヌークはどうなるの?


 ティアたちのバケーションが始まり、レイキャネースのナーキッドタウンで、一家は過ごすことになりました。

 ティアはバケーションが終わっても、パリに帰ることはありませんでした。

 そのまま姉のディアヌはこの町に居を構え、ティアはナーキッドタウンの学校へ転校したのです。


 この夏を、ティアは楽しく過ごしたのは確かです。


 ブルーラグーンで泳ぎ、姉が休みのときは、家族でカヌーなども乗ったりして、そして夕食は母の指導の下、ティアが作ったり、勿論ひどい出来ではありましたが、笑いの絶えない日々だったようです。


 ティアが何事も無く、平穏な日々を過ごしている間に、世界はいろいろきな臭くなっていったのです。


 アフリカで中露の紛争が起こり、ロシアでのクーデーター、そのまま中露核戦争が勃発したのです。


 アフリカのオレンジ共和国や中国に、大量の武器を売っていたデュフォー財閥は、一時大もうけをしていました。


 しかし、オレンジ共和国が崩壊、武器の代金の不払いが発生、さらに中国が崩壊寸前となり、こちらも武器の代金の不払いが発生、業績がひどく傾いたのです。


 起死回生とばかりに、イスラエルへ武器を安く売ったのですが、ここもサービア教徒の大攻勢でエルサレムが陥落、イスラエルが崩壊したのです。


 ナーキッド構成国でもあるフランスは、核戦争の放射能被害が、ナーキッドの空気清浄機のお陰で予想外に少なく、また農業国でもある関係で、食料の自給も可能です。


 そのためか、マルス移住を良しとしない人々が結構おり、残った人々が現地で政府をつくり、ナーキッドと敵対し始めたのです。


 自国防衛のために、武器商人でもあるデュフォー財閥は、フランスのテラの現地政府に接収されてしまいました。

 

 そしてとうとう、テラの代表として国連が、ナーキッドにテラからの撤退を通告したのです。


 レイキャネースのナーキッドタウンでは、オーナーの決断により、国家移転を決めたアイスランド国民を、全て運ぶ計画でてんてこ舞いとなり、騒然とした雰囲気になっています。


 そんな中、アルベール・デュフォーと妻が、自殺したニュースが飛び込んできました。


「アヌークはどうなるの?」

 姉のディアヌに聞くティアです。


「アヌークは修道院に入るそうよ」

「いま、アヌークはパリのデュフォーのおうちにいるの?」

「執事が面倒を見ているらしいわ」


「ねぇ、なんとかアヌークを引き取れない?」

「もう無理よ、パリとは交通手段がないのよ」

 泣きそうな顔のティアを見て、可哀想と思ったのでしょうね、ディアヌが何処かに電話をかけています。


「はい、個人的な事で申し訳ありません、オーナーには私から直々にお詫びを申し上げますので、なにか方法をお教え願えませんか?」


「エール様にお願いして、電話をつなげていただける……アヌークの意思を確認すればいいのですか?」


「ロワールのシュノンソー城の地下はまだ稼動している、えっ、三日後にはシャトルが停止?」

「それまでにシュノンソー城へつれてくればいいのですね」


「オーナーの許可を取ってくださる?それではお待ちしています」

 どうやらネイサンさんに、電話していたようですが、すぐに電話がかかってきました。

 オーナーからのようです。


「このたびは申し訳ありません、アヌークが承知したらティアに迎えにいかせるのですか?」

「条件をはっきりと伝えさせる、ティアと同じ条件?」


「リュシエンヌさんが一緒に行ってくださるのですか、そうですね、十三歳となりましたが、オーナーにお願いするわけですから、それぐらいはしてもらわなければ……」


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