ヘディの溺愛 其の一


「あなた……」

 ヘディは思わず主人を見た。


「ヘディ、こうなることはわかっていた、枢機卿がおっしゃったのだ、ミコ様に出会えば誰もが魅入られる」

「神か悪魔はわからぬが、世界を救える、または破壊できる唯一の存在、このような存在に、静かにしていただくには生贄が必要なのだ」


「しかしディアヌの事を見ると、無慈悲ではない、むしろ慈愛がある」

「世界は週末を迎えつつある、黙示録は扉をあけたが幸いなるかな、救っていただける方が現れた」

「生贄もささげるが手荒な扱いはされない、ただ言葉は辛らつだそうだ」

 

「ではエッダは生贄なの!」

「違う、神の花嫁だ!」


 ……


「そうね、私も納得して送り出したのだから……」 

「お母様、私は幸せよ、心配しないで」


「ミコ様って、どんな方か教えてくれる?」

「本当はいってはいけないし、しゃべれないはずなのだけど、しゃべってもかまわないようよ、口が開くわ」

「ミコ様って、何でもご存知なのよ、意外に気さくにお話してくださるのよ、でも難しいお話の相手は、ディアヌさんやアリシアさんでも無理なの」


 その後、エッダは喋りに喋ったようです。

「それ、チョーカーっていうの、不思議なものね、つけているのに、エッダの首に触れるわ……」


 やはりエッダは幼い、両親に今までの出来事を嬉しそうに喋っています。


 ヘディはようやく、娘が選ばれた娘と理解できたようです。


「ミコ様って、ちょっとエッチなのよ」

 こうエッダが語り始めたとき、

「あなた、ちょっとエッダと女の話がありますので、エッダの部屋に行っています、お酒でも飲んでいてください」


「そうか、そうだな、プラムのブランデーでも傾けるか」

 ちょっとさびしそうにした父親でした。


 エッダの部屋で、母娘はいよいよ赤裸々な話を始めます。

「ポニーガール?」


「そうなの、ミコ様、ちょっとアブノーマルなの」

「でもディアヌさんやアリシアさんはもっと激しいわ、そうそう、皆でとった写真があるわ、あげられないけど見せてあげるわ」


 そういうと、何枚かの写真を、大事そうにヘディに見せてくれました。


「これがミコ様よ、お綺麗でしょう♪」

 二人の女が写っていますが、娘の隣の人物は、誰が見ても、女神と納得する女性です。


「これが集合写真、ディアヌさんがこの写真を眺めながら、しみじみといっていたわ、私惨めだわって」

「それには私も同意見ね、もう一枚、ミコ様の男装されて、皆で撮ったのがあるのだけど、私はこの間帰っていたときなので、ないのよ」


 ヘディが見たその写真は、先ほどのミコさんを中央に女たちが写っています、エッダなどかなり端ですね。

 それよりもそこに写っている女たちは、衝撃的な美人ばかり、あの美貌でもって、ヨーロッパ社交界の華とまでたたえられた、ディアヌ・ロッシチルドも霞んでいます。


 ミコ様は仕方ないとしても……

「この日本人の方は?ミコ様とこの方は、女神様の領域ね、言葉もないわ」

「吉川茜様、皆様から姉上様と呼ばれているわ、こちらはサリー・フォークナー様、この方には誰も逆らえないようよ、ミコ様も頭が上がらないみたい」


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