美女しかいない女学校


 デモレーの八年制高女はテンプル女学校と命名され、ベルベル城――マヨルカ島のパルマ・デ・マヨルカにあるマヨルカ王の夏の離宮だった城――におかれることになりました。

 小高い丘にあるこの城は、上から見るとドーナッツのようです。


 もともとテンプル騎士団の姉妹女子修道会、テンプル女子修道会が運営している女学校だったのですが、デモレーに八年制医療魔法専門高女設立の話が出た時、ギヨーム総長の発案により、その女学校が提供され、創設されることになっていたのです。


 ささやかな付属病院が隣接し、教官を兼務する医療魔法士が惑星エラムより配属されてきました。

 そのため学校内は全てアイスランド語、生徒は病院の患者の介護もすることになります。


 入学資格は魔法が使える素質があり、しかも処女が絶対条件、容姿端麗の条件がない代わりに、頭脳明晰が必須で、美子の女奴隷として、絶対の服従を求められます。


 一応、女官補というのはメイド見習い、『メイド・オブ・ビトゥイーン』という感覚ですが、はっきりと、ナーキッド・オーナーに『隷属』すると、入学案内に明記されています。


 このテンプル女学校、なぜかメイド任官課程の八年生高等女学校の中でも、飛びぬけて、美女しかいない女学校となってしまっています。


 美子さんの意見で、容姿端麗の条件はつけられていないのですが、『ヴィーナス様に魔法を使ってお仕えする以上、美しい女でなければならない』、ハウスキーパー事務局の意見がついています。


 したがって、女官補としての二年間は食事、運動など、スタイルなどを良くするために、かなり厳しい日常生活を強いることになっています。


 勿論ですが全寮制、外出もままなりません。

 それゆえ、他のメイド任官課程八年生高等女学校とは生徒の扱いも違い女官補、そして末女の扱いとなり、それなりの給料も支給されます。


 ここを卒業すると采女待遇清女として任官という、破格の待遇を受けることになり、医療魔法専門のメイド組織『博愛の魔女団』に入団する事になります。


 また他の八年制高女とは違い、リングも材質も色も同じですが、形がクラダリングなのです。

 必ず左手の薬指に正立につける事になっています。


 しかもテンプル女学校生徒に支給されるクラダリングはかなりの魔力があり、お肌などの美容効果に対しては、チョーカー並みにあります、


 テンプル女学校の評判は上々、医療魔法専門メイド任官課程だけのこの高女は、絶大な人気校となったのは当然の事です。

 なにせ必ず美しくなれる上に、卒業すれば采女待遇清女、後少しで寵妃候補ですからね。


「バレアレスから寵妃献上は確実とおもわれる、テンプル女学校附属病院はマルス随一の医療魔法病院、つまりマルス世界で魔法を使える唯一の地域となる」


「御蔭で小さいながら、バレアレスの発言力は尊重されるだろう、貴女の尽力ゆえだ、こころより感謝する」

 ギヨーム・ド・ヴィシエが、嬉しそうにベネデッタに声をかけていますが……


 ベネデッタとしては、何故『百合の会議』にテンプル女学校の件が通ったのか、ナオミの案がすんなりまとまったのか、不思議でならないのです。


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