待っていた女


「ティア、貴女が迎えにいくことになったわ」

「リュシエンヌさん、知っているわね、あの方が一緒に行ってくれるって」


「それからね、アヌークの家に、電話がつながるようになるわ」

「ナーキッドが肩入れする以上、貴女のリングの条件と同じとなるわ」


「それをはっきりと、貴女がアヌークに説明するのよ、アヌークが承知すれば、ここにつれてこられるわ」


「ここの地下には、シャトルが走っているのはもう知っているでしょう?」

「まだフランスのシュノンソー城へはつながっているの、上のお城はないけど、地下のステーションはまだ稼動しているの」


「ただ三日後には停止されるから、それまでにシュノンソー城へ戻ってくるのよ、いいわね」


 電話がつながり、ティアは久しぶりにアヌークの声を聞きました。


「ティア!ティアなのね!私、一人ぼっちになったわ」

「今朝に執事さんもやめて行ったわ、この広い家に私一人なの……」

「明日になれば修道院の方が迎えに来るわ、持参金が少しばかり残っているから……」

 

 ティアはリングの事、そしてその条件、承諾すればナーキッドとして引き受ける事、そして迎えに行く事などいろいろ話しました。


「分かったわ、お願いするわ、貴女と一緒なら……ティア……お願い……早く来てね」

 アヌークが了承したという事で、ディアヌさんが電話をかわりました。


「アヌーク、ディアヌよ、いまからすぐにティアを行かせるわ、すぐに動けるように荷物をまとめておいてね」

「手荷物だけよ、服なんかこちらで買ってあげる、大事な物だけまとめておきなさい、その家、二度と戻れないかもしれないわ」

 

 三十分後には、リュシエンヌからナーキッドの専用回線を使って連絡が入りました。

 切符の手配が出来たとの事です。


 車でも五時間あればパリへたどり着けますが、鉄道となると、シュノンソー城から最寄りのシュノンソー駅へ行き、在来線に乗りトゥール駅へ、そこでTGVに乗り継いでパリへとなります。


 余裕を見て二時間、いまはフランス時間の二時です。

 シュノンソーという無人駅へは、三時に着かなければなりません。

 ティアはすぐにナーキッドタウン地下にある、シャトル乗り場に走り、そしてシュノンソー城行きに飛び乗ったのです。


 シュノンソー城地下のステーションには、リュシエンヌさんと、思わぬ人が待っていました。

 ナーキッド・オーナーである美子さんでした。


「ティアさん、すぐに行きますよ」

 三人は急ぎ足でシュノンソー駅へ、途中誰にも会いませんでした。

「かなりの人がマルスへ移住していますが、テラのナーキーッド直轄領移住希望者の為に、シュノンソーの地下ステーションはまだ稼働しているのです」

「それもあらかた終わりました、この付近の方々は全て移住しました」


「その結果、かなりの無法者がうろついているのです」

「ただ私たちはリング持ちですから、危険はありませんが、ナーキーッド関係者と分かると何をされるかわからない」

 リュシエンヌさんが、ティアに説明しています。


 そんな話をしながらでしたが、駅までは何事もなく、やってきた列車は、かなり間引き運転ではありましたが、それなりに稼働していました。


 フランス国鉄の職員も、かなりマルスに移住をし、人手不足に陥っているようです。


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