第五章 ハイデマリーの物語 荒くれの町
チタニアステーション管理官府
アマゾネスの一員、ハイデマリーは、チタニアステーションの管理官に赴任した。
何の変哲もないステーションではあるのだが、チタニアの銀鉱山の落盤事故の後始末など、忙しい毎日を過ごすことになる。
山師と娼婦ばかりのチタニアステーション……
これではいかんと、地域振興のために、定住人口を増やそうともくろんだ
シルバーマネーにものをいわせ、うまく根回しも進み、計画実現がそこまで……
しかしあることに気がついた、誰がこの話を……
* * * * *
ソル星系第七惑星天王星ウラヌスの衛星チタニア、極寒のこの地に近頃、銀の鉱脈が発見されました。
チタニアステーションは、ソル星系外惑星鉄道の小型ステーション、直径五キロの何の変哲もないステーションではあるのですが、この衛星チタニアの極低温銀鉱山のおかげで、なかなか人の乗り降りが激しいステーションになっています。
ただ一攫千金の山師たちばかりですけどね。
この極低温銀鉱山の採掘権は小口に分けられ、鉱区はテラ時間での五年限定、五年経てば再入札です。
採掘機械はレンタルで、採掘した銀鉱石は、このチタニアステーションで銀に精錬することができます。
有料ではあるのですが……
もちろん、銀を買い入れる業者なども、チタニアステーションに購買所を設けており、銀鉱石のままでも買い取ってくれます。
マルス天王星間には、ナーキッドの無人貨物宇宙船が就航しており、銀のインゴットを、連日マルスに運んでいます。
概ねマルス木星航路が約二日半、木星土星航路が三日半、土星天王星航路は八日。
約二週間と時間がかかりますが、ソル星系外惑星鉄道の貨物鉄道を使用するより、かなり安いのです。
このチタニアステーション発着の、貨物運賃利益の一割が、チタニアステーション管理官府の収入となります。
チタニアステーションには、一攫千金の山師が居室を持っており、その山師たちのための娼館、酒場などが軒を連ねています。
とても上品とはいいがたい雰囲気が漂う、チタニアステーションです。
毎日毎晩一騒動持ち上がり、お陰で管理官府の民生部門は多忙を極めているのです。
ヴィーナスネットワークレイルロードのステーションでは珍しく、男の比率が高いというのが、問題をさらにやややこしくしています。
なんせ山師たちは、チタニアの鉱山では禁欲生活、過酷な労働を強いられ、その結果、多量の銀鉱石を掘り出し、チタニアステーションで換金し、にわか小金持ちになるわけで、たまりに溜まった欲求を発散させるに、十分な資金が手元にあるわけです。
そして目の前に酒場と娼館、しかし誰がぼろ儲けしているかと住民に聞けば……
「管理官府のお姉ちゃんたちに、決まってるだろう!」
「綺麗な姉ちゃん達がそろっているのに、わしらは尻も触れん!」
「そりゃあ、お高く留まっている管理官府の女たちよ、私たちと同じ道具だろうに、あちらはミコ様専用、こちらは荒くれ男たちの一物相手、そんなあたしたちから、税金など巻き上げるのだからね」
「大体に女が足りないわよ、ギンギラしている男ども、を一晩に何人も相手にしなければならないのよ、たまにはミコ様専用のお道具を使ったらどうなのよ!」
「なんにでも、税金をかけるのはいかがなものか、せめて低アルコールには、酒税も低くしていただきたい」
「出来れば娼館にかかる税も、下げていただきたい、こんな僻地の娼館に、勤めていただく為にはかなりの高給を払うので、こちらに回る利益があまりに低い」
管理官府は、評判が極めて悪いのですね。
でもかなりの誤解があるようです。
このチタニアステーションは、銀鉱山が発見される前は、ソル星系外惑星鉄道のローカルステーションで、通過駅みたいなもの。
このあたりの防衛の、予備戦力として置かれいてるというのが最大の理由です。
そのために、ユニバースの軍用コンピューターは置かれておらず、近傍のミリタリーヤードやシェルターステーション、その他の小型軍用ステーション群は、ガリレオステーションの執政官府が管理しているのです。
つまりチタニアステーションには、管理官府は設置されておらず、その運営はナーキッドに委託されており、メイドは一人もいないのです。
住民はナーキッドの委託管理部門を、管理官府と呼んでいるのです。
やはりナーキッドへの委託となれば、本来の許認可権限がない以上、当たり障りのない運営と成らざる得ないのです。
そんなチタニアステーションに、初めての管理官がやってきたのです。
あまりにナーキッドの、委託管理の評判が悪く、しかも治安も悪化している。
ヴィーナス・レイルロードのステーションとしては、放置するわけにもいかない。
そこで少人数ではありますが、寵妃とメイドを配置して、管理官府の委託運営を、解消することになったのです。
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