緊急通信
程なくして、140乗り場付近に降下した陸戦ロボット部隊は、高性能の人体赤外線感知装置を駆使して、生命の灯火(ともしび)の弱いところを優先して、次々と重症者を救出しています。
「緊急医療エアテントは足りるか!足りなければ往還機の居住区を使え!医療人員はいるのか!」
ハイデマリーの怒声が、通信機から流れています。
陸戦ロボット部隊を陣頭指揮しながら、ハイデマリーは自ら緊急医療エアテントが設置し、遠隔操縦の医療器械を据付ているようです。
かなりの死者も出ているようですが、
「生きているものが先だ!見込みのないものの治療もあとだ!最大の効果を発揮せよ!」
とんでもないことをいっているハイデマリー。
二時間が正念場、たしかに救った人間はかなりの数にのぼりましたが、それでもかなりの山師が死亡、無傷のものはほとんどいないという、悲惨な事故となったのです。
原因はウラヌスの四環と呼ばれる、環の中では大きい部類の塊同士が衝突、小さいほうが砕け、その残骸群がチタニアに降り注いだ。
その中の最大のものである、直径二十メートルぐらいのものが幾つか、メッシーナ谷の近くに落ち、巨大なクレーター群を作り、その余波でメッシーナ谷の崖が崩れたと判明、通信衛星はそのときの塊が衝突、破壊されたようです。
二時間後に陸戦ロボットの大部隊が到着、メッシーナ谷JPを復旧するとともに、応急のドームテントを渓谷の上に展開させることに成功、八時間後には空気が満たされました。
このとき、まだ空気がない初動のときに、助けられた山師たちは、命の危険があるというのに、自ら志願し、他のものの救出に従事しています。
「応急処置です、いつエアドームが破れるか分かりません」
軍用コンピューターD387459が、リスクを伝えています。
「何とかできないのか?」
「ナノマシンが展開できれば、問題はないのですが……」
「では申請してくれ」
「それは……管理官が直接訴えるしか……ヴィーナス様とイシス様、マレーネ様だけが展開の権限を持っているのです、直接連絡できるのは、寵妃の皆様だけなのです」
「寵妃の願いは、湯船の謁見だけと心得ているが……」
「それは私的な場合、今回は緊急の通信、オルゴール通信は受け取っていただけるはず」
「無理だ、オルゴールは壊れた」
「……」
言葉を失った軍用コンピューターD387459に、緊急通信が入ってきました。
「管理官、三軍統合司令官のイシス様からです」
「ハイデマリー、久しぶりね、貴女も私もいま忙しいので手短に伝えるわ、ナノマシンの件、ヴィーナスは了承しているわ、エールに指示したそうよ、すぐに展開されるでしょう……あぁ……アナーヒターったら……切るわよ!」
「やれやれ、後でしかられるか」
「管理官、エール様よりナノマシンを展開させると、通達がありました」
「二三分後にはメッシーナ谷に展開できるので、チョーカーが使用できるとの事です、またエアドームは、エール様が補強させるとも言われています」
二三分後には、見る見るエアドームがパネル状になり、強化されていくのがわかるようになり、気温も温暖になりはじめました。
「あったかいな……」
「谷の気温が四度になっています」
「さて、チョーカーの威力を見せるときだな」
ハイデマリーは鉱車軌道に残っていたトロッコに乗ると、自走をイメージ、かなり高速に走らせながら、軌道上の瓦礫を取り除くイメージもあわせて発動、一日で鉱山鉄道は復旧したのです。
「側女のチョーカーではこれが限度か、夫人あたりのチョーカーなら、もっと大規模に行えるのだがな」
この一日の間に、陸戦ロボット部隊はメッシーナ谷JPを復旧、さらに鉱山鉄道の約五百の乗り場を復旧するとともに、埋もれた鉱区も復旧、そして死者も掘り出したようです。
「死者の数は?」
「八十四名」
「大事故だったな……とにかく怪我人の看護は万全をきすように、山師ができなくなったものは、鉱区の権利を高額で買い戻してやれ」
「希望するなら、チタニアステーションの外殻都市に、家をあてがってやれ、マルスに帰るなら、旅費を負担してやれ」
廃業したものは案外に少なくて、七十六名ほど、かなりのものが、怪我が治ったら山師を続けることを望んだのです。
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