自然銀
負傷者救出はひと段落したが、後始末はまだ続いている。
そんな時、最初にハイデマリーが逃げ込んだ鉱区の山師が、一つの塊を持ってきた。
「管理官、とんでもないものを見つけた、見てくれ」
崩れた土砂の中に混じっていたものらしく、こぶし大で黒色をしています。
それはまごうことなきシルバー、自然銀の塊なのですが、山師のいうには、掘り出したときは銀色だったとか、空気にふれて黒くなったらしいのです。
「まざりっけのない銀の塊、どうも俺たちが掘った鉱区の奥に、谷に沿うように自然銀の大鉱脈があるようだ」
「どうしたい?」
「そりゃあ聞くだけ野暮だろう、五年限定の再入札をやめて、鉱区を払い下げしてほしいよ」
「でもよ、それは後の話、今はとにかくこれを鉱山の復興資金にしてくれ、俺のところからは簡単に掘れる」
「正直ね、隠しておけばいいものを」
「そうもいくまい、この発見は仲間の犠牲の上になりたっている、死者には遺族もいるし、再入札までまだ二年ある、残された者たちも、この山を掘れば、余生は何とか過ごせる金ができる」
「皆で金持ちになれば、それに越したことはない、俺は今の仲間で儲けたいと思っている」
「有難く使わせていただく」
チタニアステーション管理官府で復興対策など、事故後の方針を決める会議が、催されたのですが……
「山師たちから、銀塊が復興資金に提供されたのは有難いことですが、かといって鉱区の払い下げは認められません!」
財政を担当する、ナーキッドからの出向職員が断固反対しています。
「しかし税収はむしろ増えるだろう、欲の皮が突っ張った山師たちが、いまより熱心に掘るのだから」
「そんなに増えません、採掘量に対する税は、低率なのです!」
「では精錬した銀にかければよい、これなら間違いなく税収が増える、銀を買い入れる業者が怒るかも知れないが、そうなったら事業免許を返納してもらうだけだ」
「しかし払い下げは、特権階級ができるだけかと考えますが?」
SS6AE1が懸念を表明します。
「確かにそうだ、同意する、では鉱区の払い下げの対象はカンパニーとする」
「カンパニーは株式を発行することし、現在所有している山師はその五十パーセント、チタニアステーション管理官府が十パーセントとする、残りの四十パーセントを株式市場に上場、鉱区の価値は詳細に第三者に決めさす、このあたりでどうか?」
結局その通りになったのですが、鉱区の価値は膨大な額となり、山師たちはホイホイと株をうっぱらってしまったのです。
誰が買ったかって?
ミコさんが買っていました。
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