女給任官課程


「簡単にいったような、とんでもない宿題をいただいたような……技芸学校ね……どうしたものか……」

「まず技芸学校という名前はつかえません、マルスは一級市民地域、やはり既存の学校を利用するしかないのでは?」

 ディアヌさんの意見です。


「ハウス管轄の八年制高女の女専課程編入は簡単にできますが、それ以外の公立学校はハウスの管轄ではない」

「人材発掘の掘り下げが、サリー様の意図でしょうが、このマルスで、公立学校にそのような課程を併設するには……膨大な予算がいる」


「日本ホームのように、私学を利用するしかないが……これは揉める元、いまのマルスの社会風習なら、全ての私学が手を上げる、かならず公立にも併設すべし、との声が上がる」


「うっかりするとデモなど起こりかねない、そんな事、ミコ様はお好きではない、静かに誓願すれば出来る出来ないはさておき、かならず受け止められるのだが、どうもマルスはすぐ騒ぐ」


「ここは公募するしかないのではありませんか?公募して選考過程を全て開示、これなら文句は出ないでしょうし、出ても黙殺できます、公立校の生徒から抗議があれば、その時点で対策を考えましょう」

 ナスターシャがいいました。


「大変な騒動になるけど、それしかないわね」

 エカテリーナが断を下したのです。


 数日後、ナイトマネージャーの名でコロニー運用と女官補制度の導入、そして任官課程併設の為の私学公募、その選考過程の発表がありました。

 

 今回はその第一弾としてスカンジナビアメイドハウスの下にデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの四つのコロニーを復帰させる。

 併せて各コロニーの下に、いくつかの『女給任官課程』併設の私学女学校をつくる。

 『女給任官課程』においては学費は無料とする。


 選考についても公表されました。

 応募した女学校は、所属生徒を三名選抜し、教養、品格、美貌を点数化して、最高得点の学校を指定校とするわけです、もちろん処女であることは必須です。


 この時の優勝校のメンバーは、希望すれば奨学生とし、メイド(女官)任官課程生徒と同じ待遇を与え、八年制高女の女専課程編入を保証する。

 また優勝校以外の選抜生徒でも、優秀なものは希望すれば奨学生とする。


 一応、北欧ホーム内の話ということで、ナスターシャが責任者となったのです。


「状況はどうなの?」

 ナスターシャがクセーニャに聞くと、

「予測通り、大変な騒動になっています」


「公立校の生徒から差別だとの声が上がっていますが、いかがいたしますか」

「やはりね、個人としての公募を認める、この場合、奨学生選考とする、これでいきなさい」


 この発表で膨大な応募があり、事務処理に膨大な手間がかかりましたが、とにかく選考に入りました。

 私学はそれなりに決まりましたが、奨学生選考は揉めています。


 私学選抜に落ちた者もこちらにエントリーされており万単位の応募数、とにかくポイントをつけ、一コロニーあたり二十五名を目処に一次選考を実施、同点者がおり百五十六名が突破したのです。


 しかしそれからが大もめ、そもそも『優秀』というなら、突破者はきわめて優秀、そこで全員を集め、本人に自己推薦文を書かせます。

 そして自分で、顔写真と全身写真を撮らせ、提出させたのです。


「なるほど、人それぞれなのね……」

「本当ですね、全身写真なんか全裸のもありますよ」

「でも、覚悟を示すためにはいいアピールでしょう、健康診断で処女は確認しているのですから」


「この後、どうされますか?」

「北欧ホームの寵妃候補以上で投票するの、一人一票でね、票が入れば奨学生ではどう?」

「北欧ホームには、該当者は四人しかいませんが」

「そうね……ならディアヌさんに協力していただいて、ヨーロッパの寵妃候補者以上にお願いしましょう、これなら十五名ほど、三票入れば奨学生」


 こうしてスカンジナビアメイドハウスの、コロニー騒動はなんとか終結したのですが、公募による選抜奨学生制度は、毎年ハウス主催で実施する事になりました。

 またマルスの各ハウスでは、この制度を取り入れたことはいうまでもありません。


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