第六章 ナスターシャの物語 ロシアの洗濯女
北欧ハウス問題
テラ・ナイトマネージャーであり、麗人のエカテリーナ・ウラジーミロヴナ・ロマノヴァは、マルスの四人のウェイティングメイドを集めて会議を催していた。
この五人は頭の痛い問題を抱えていた……
ハウス分離問題である……
* * * * *
マルスのナイトマネージャーであり、麗人のエカテリーナ・ウラジーミロヴナ・ロマノヴァは、マルスの四人のウェイティングメイドを集めて会議を催していました。
西欧ホームのウェイティングメイドのディアヌ・ロッシチルド、アメリカホーム・ウェイティングメイドのアリシア・ディヴィドソン、北欧ホームのウェイティングメイドであり、自分の娘でもあるナスターシャ・ウラジーミロヴナ・ロマノヴァ、日本ホームのウェイティングメイドの鈴木聡子です。
この五人は、頭の痛い問題を抱えています。
日本ホームのミヤコメイドハウスについて、一国一ハウスという、一応の建前に違反している、ついては各国にも第二・第三のハウスを認めてほしい。
そういう意見が、マルス住民のなかで強くなってきたのです。
一応日本は人口も多く、致し方ないとなっているのですが、このままでは収まりそうにない。
特にマルスの北欧地域の、スカンジナビアメイドハウスの分割問題が深刻になっています。
これの対処を誤ると、イギリスメイドハウスの、スコットランド分離問題が火を噴く。
アメリカホームも、プエルトルコ住民のハウス設立要望が芽を出す。
日本は特例ともいえる、ミヤコメイドハウスの問題で色々言われている上に、事もあろうか、第三ハウスなどとの声が聞こえ始めている。
スカンジナビアメイドハウスの問題をうまく処理しなければ、ハウス設立要望は、際限なく続きそうなのです。
「まったくマルスの女ときたら、献上品要求のデモまでするのだから!」
エカテリーナの発言を、ディアヌが引き取り、
「チタニアステーションのことですね」
といっています。
「危なくフェローハウスなんて、できそうだったわよ、フェローハウス設立などとなれば、ハウスキーパーあたりのマルスへの風当たりが強くなるわ!」
「そもそもミコ様は、声大きく権利を要求する手法はお好きではない」
「そのあたりのことを、一般の女たちは知らないのだろうが、『ああ、そうですね』と目を細めて言われたら、大変なことになる」
「とにかく、寵妃が増えるのは歓迎しますが、要求に屈するのは良くないでしょう」
「といって、確かにスカンジナビアメイドハウスの分割は本来は認めるべき、北欧四カ国は全面的に国家移転しているわけですから」
鈴木聡子の言葉です。
「確かにそうね、カナダは国家移転しているので、この間まで寵妃がいないのに、メイドハウスは設立されていたし、バレアレスメイドハウスもそうだったわ」
「北欧四カ国にもあるべきなのでしょうが、今ここで認めると、イギリスメイドハウスからスコットランド分離問題が火を噴く、北欧ホームにはオストプロイセンの問題も抱えているし……なにかいい解決法はないかしら」
「その昔に、ハウスの下部にコロニーとオフィスがありましたよね」
「事務出張所のようなものでしたが、マルスへ移住したときに、設立されませんでした」
「廃止されたとは聞いていません、これをうまく使えないでしょうか?」
ディアヌの提案です。
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