お仕事は忙しい


 ミロスラーヴァ・デニーキンさんとリュドミーラ・デニーキンに抗ボルバキア薬を服用させ、二人をミハイロフスキー城内に案内すると、

「リュドミーラ!」と、声がかかったのです。


 元スモーリヌイ出身の清女さんのなかに、知っていたものがいたようです。

「エレオノーラさん!どうしてここに?」

「ナーキッド・オーナーにお仕えしているのよ、あなたも?」

「分からないわ、私は母と一緒に、ナスターシャ様にお仕えして、雑役を三年間するの」


「エレオノーラ、リュドミーラさんの相手をしていて、私はミロスラーヴァさんと一緒に、エカテリーナ様にご挨拶してくるわ」


 クセーニャさんは、ミロスラーヴァ・デニーキン男爵夫人を、エカテリーナさん付の侍女に押したのです。


「ねぇ、代価は貴女の一存だったのよね、このまま二人にはメイドになってもらいましょう」

「私がミコ様に申し上げるわ、清女にしてくださいって、だから待遇は同じといたしましょう」

 エカテリーナさんの一言で、結局二人は献上された女との扱いになったのです。


 リュドミーラ・デニーキンは、意外にもよく気のつく娘で、ごった返しているミハイロフスキー城の中、簡易医療施設で、子供たちに優しく接しています。

 子供たちが情緒不安にならぬように、癒しているようです。


 クセーニャさんたちは、子供たちの相手をリュドミーラに任せると、移住希望者たちの昼食準備、休憩所への受け入れ、体の不調な者や不安を訴える者のために、できる限りの便宜を図り、無事に三時にでる、アイスランドのナーキッドタウン行きのシャトルに乗せて行ったのです。

 

「今日体調不良で乗れなかった方の、宿泊用意はできているの?」

「一応テント村ができています、緊急用のエアーテントを、ロシア帝国の婦人兵部隊に設営していただきました」

「シャワーの用意も完了しました、軽症の方はこちらで過ごしていただきます」


「食事は?」

「宮殿ロビーに、バイキング形式で用意してあります」

「一般人用のエリアから、でないようによくいっておいてね、十二時をすぎたら特にね」

 

「ブラッドメアリーのカーリー様とガートルード様、深夜業務はお願いできますか?」

「私たちはその為にきている、一族から事務処理の女も連れてきている、まぁ昼間のような、数をこなすわけではない、何があっても大丈夫だ」


 結構深夜業務は、激しいものがあったようです。

 でも、なんといってもバンパイア、手荒ですから……


 翌日も、朝からクセーニャさんたちはてんてこ舞い、そして事件が起こったのです。


 その日はロシア南部の住人が、大挙してやってきました。

 サービア教徒もかなりいます、そして問題はやはり抗ボルバキア薬なのです。


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