女神さまにお仕えします
「先ほど、貴女の目を治して下さった方は、女神様なのよ
「その女神様が云われるには、貴女の目はこのままでは、再び見えなくなるそうなの」
「ディアヌが必死に治せないかと頼んでくれたの、するとディアヌとともに、女神さまにお仕えするなら,何とか女神様のご加護が戴ける」
「ただね、その場合、結婚は出来なくなるのよ、女神様にお仕えするのですからね」
「貴女も知っているでしょうが、ディアヌも病気だったのよ、それも明日には神に召されるかもしれないほど、悪かったの」
「でね、女神さまに全てを捧げることを誓い、治して頂いたのよ」
「はっきり言えば、女神様の公妾になったの、もう貴女も十二歳、この意味は分かるはずよ」
頷いたティアさんです。
「お父様も私もディアヌも、貴女には女神さまにお仕えすることを選んで欲しい」
「ただ女神様が云われるには、家族全員で納得することが条件なの、無理強いはしたくない、との仰せなの」
「……」
「ティア、女神様は、とにかく二十歳までは待って下さるそうよ、その時に決断すればいいわ」
「それまでは身を清らかにし、男の子を近付けない、恋をしないように気をつければいいだけよ」
ディアヌさんも説得しています。
「お母様、女神様って何処にいらっしゃるの、お仕えするにも、どのような方か知らなければ、返事は出来ないわ」
「そうね……あそこに女の方たちがいらっしゃるでしょう、黒髪の方が二人おられるのは分かるわね」
「その中の背の低い方の方、あの方が女神様なの」
ティアが示された方を見ると、見たこともないほど美しい女の方たちの集団が……
その中の黒髪の二人の方は、信じられないほど美しく、さらに女神と云われた方は、その言葉の通り、幼いティアといえど、一目見て女神と理解出来ました。
「ディアヌお姉さまと、一緒にお仕えしたい……」
瞳を輝かせてティアは言ったのです。
両親と姉と一緒に、女神様の前に進みました。
「ティア、いくつになりました」
と、流暢なフランス語で、言葉をかけてくださる女神様。
さらに、
「心配しなくてもいいのよ、自由にしていいのよ、でもね、この指輪は肌身離さず持っていなさい、でないと怖い物が一杯来ますからね」
そう云って、一つの指輪にチェーンを通して、首にかけてくれました。
なにかお礼の言葉を云おうとしたティアでしたが、女神様に、
「さあ、お母様と帰りなさい」
と云われ、空気が動いた気がして、二人は大広間に戻ったのです。
「お母様、ティアはもう女神様に会えないのでしょうか?」
「会えますよ、ディアヌのようにね」
「お仕えするのには、何をすればいいのでしょうか?」
「それはディアヌに聞いてね、私にはわからないの」
「でも花嫁になれるぐらいの事は出来ないと、恥ずかしいかもしれないわね」
そんな事をしゃべっていると、ディアヌさんが父親と帰ってきました。
「お仕えする方法?今のところは、コレージュ――フランスの中等教育の前期四年の学校、概ね日本の中学校に該当する――へ行って世間を知ることね」
「勿論お料理などは出来た方がいいわよ、とにかく秘書が出来るぐらいにはならなければね」
「それからね、女の色気は必要なのよ、ティアも見たでしょう、周りを取り巻いていた方々、とんでもないほどお綺麗でしょう?」
「皆さんお優しいけど、全て女神様の公妾様ですからね」
「女神様って、どんな方なの?」
ティアの質問はその日一日続きました。
そして、意外に女神様はお茶目なのを知ったティアさんでした。
ただディアヌさんが、
「とにかく、愚か者はお好きではないようなの、それと嫉妬や告げ口なども、お嫌いなのよ」
この言葉を密かに胸に刻んだティアは、やはり聡明なのでしょうね。
それから女神様は取りあえずは、日本人という事で、名前は吉川美子といわれるとも、教えてもらったのです。
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