辺鄙なチタニアはいかがでしょうか


 ハイデマリーは、まずナーキッド審議会の説得にあたった。

「マルス移住は無理というもの、たしかにデンマークの範囲で、マルス移住の資格はあるが、実際移住しなかったのだから、百歩譲って一級市民として、カムチャッカ移住は認めてもよいが……」

「いまから北欧地域への移住は認められない、オーナーは南米への移住をお考えと聞いているが」 


「私はチタニアステーションを預かる身、ご存知のようにチタニアには豊富な銀が産出する」

「このたび自然銀の大鉱脈が見つかったが人手不足、そしていつまでも、鉱山だけに頼るわけにも行かない」


「人々を定住させ、銀を中核に各種の事業を起こし、ステーションの繁栄を図ろうと考えている」

「辺鄙なチタニアへの移住ということなら、マルスの住民の理解も得られると考えるが?」


「しかし、ナーキッドとしては、得るところはないのではないか?」

「銀の取引税の1パーセントとかでは?」

「フェロー諸島自治政府の、チタニアステーション移住を認めても良い」


 つづいてマン島で、フェロー諸島自治政府の代表と会談をしています。

 素早いですね。


「二級市民地域に移住を勧める?」

「オーナーはそのようにおっしゃっています、空気浄化装置などを残置していたが、もうすぐメス化バルボキア菌と突然変異のエボラ出血熱がたどり着く、この地は維持が不可能との見解です」


「それはお聞きしている、しかし、なんとかマルスへの移住はできないものなのですか?」


「ナーキッド内では、フェロー諸島自治政府の判断、ひいては、住民がそのような政府を選んだのだから自己責任、最後の最後に時間切れということは、それだけ判断が遅い、ほっとけばいい、との意見が大勢なのです」


「ただ、オーナーがなんとかしたいとお考えたので、表立っての反対はないだけです」


「ではせめて、テラの一級市民地域への移住では?」

「カムチャッカなら、認められるかも知れません」


「ロシアの土地か……」


「一つ提案があります、損な話ではないですよ」


 ?


「私はチタニアステーション管理官府を預かっています、いまチタニアステーションは定住者をさがしています」

「この話を聞き及んだので、内々にナーキッドの審議会幹部と話したのです」

「チタニアステーションへの移住なら、仕方ないとのニュアンスでした、オーナーが許可すれば可能と考えます」


「チタニアステーションって、どこにあるのですか?」

「チタニアとは天王星の衛星です、レイルロードの小さい駅ですが、外殻都市と天井都市、それに内殻都市が、いま無人で空いているのです」


「全住民が住めるのですか?」

「天井都市だけでも、全住民五万名は居住できます、主要産業の一つである牧畜も、内殻都市地域を開放すれば可能と思われます」

「また、チタニアには大規模な銀山があり、銀の取引所など、人手不足が常態化していますので、あまり職業を選ばなければ仕事はあると考えます」


「漁業は無理ですか?」

「さすがにステーションで、鯨などは無理でしょうが、ささやかな養殖程度はできるかと考えます、近頃は海の魚の陸上養殖が盛んですから」


 代表団はなにか相談していますが、別室でしばらく協議したいと退室していきました。


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