選別の門
ミハイロフスキー城……
ロシア皇帝パーヴェル一世の宮殿として建設され、運河と川に囲まれた城塞です。
ナーキッドに移譲され、治外法権の地となっています。
責任者としてエカテリーナさんが指名され、宮殿にエカテリーナさんの紋章が掲げられています。
そして移住事務が開始されました。
とにかく膨大な人間が、ミハイロフスキー城の門の前に群がっています。
ロシア帝国陸軍が派遣してきた、一個大隊が門の前で警戒に当たってくれていますが、トラブルが続出、なぜなら時々、暴れる人が出てくるのです。
門はいつも開け放されていますが、チェックゲートにも成っています。
ロシア帝国政府が発行した、移住許可願を持って、このミハイロフスキー城の門をくぐろうとすると、資格のある者は門を通れますが、資格の無い者ははねられます。
このはねられた人が、暴れるのです。
男が暴れていました。
麻薬中毒が指摘され、門を通れなかったのです。
この男は、過去の婦女暴行が指摘された男とともに、ウラルの向こうへ追放されてしまいました。
もっとも建前でそういわれていますが、たぶんどこかの場所で、処分されているはずです。
ミコ様が許すわけはないのです。
詐欺の集団も、暴力組織の構成員も、はねられています。
こちらもウラルの向こうへ追放、身一つで放り出されたのですから、まず生きられないでしょうね。
門を通り抜けた人々を、中庭が待っています。
中庭では毎日十時から火星についての説明があり、三時にアイスランドのナーキッドタウンに移動し、そのままフォボスステーション経由で、火星の首都グラブダブドリッブに移動、そこで一泊して、次の日にロシアの都市、ニコライ四世シティに移住します。
農民さんは、この都市より放射状にでている、テラのナーキッドタウンで使用している、バッテリーコロという二十五トンバッテリー式車両牽引車程度のものに乗り、貸し与えられた農地へ向かいます。
満員の客車を三両程度は、引ける簡単な鉄道です。
「さて、移住する方々がやってきましたよ、私たちも働きましょう!」
クセーニャと妹分たちは、移住希望者たちの昼食準備、休憩所や簡易医療施設の運営、子供たちの相手など、事務手続以外の雑用を仕切ることになっています。
勿論、ロシア帝国から派遣されてきた女性たちも、クセーニャが指導しなければなりません。
さらには門の外にいる、ロシア帝国陸軍とも連絡調整をするわけです、これが大変なのです。
今また連絡将校がやってきて、クセーニャに門の外の大隊本部まで、出てきてほしいといってきたのです。
大隊本部のテントの中では、元役人の妻という女が、娘とともにいました。
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